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第四章
ビースの王
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「それじゃあ、ミラさんの異能はエアと相性がよかったってことですね」
「まぁ、そう言うことになるのかな」
ミラさんはちょっと歯切れの悪い返事をする。
「お嬢様、ミラ姫様の異能は私やリーシャと違って特色の異能でございます。相性、という言葉では説明が難しいんですよ」
「……うん?」
ミラさんの刻印は黒色の剣。でも異能の内容までは知らない私はすっとんきょうな返事をする。
そんな私にミラさんは苦笑いしながら私に説明してくれた。
「私の異能は断絶。私が斬るに必要と思う斬撃を出すことができる。つまり、私がこうすれば斬れると思えばその通りの剣にすることができるんだ。さっきは、風になるというのなら、その空間ごと切ればいいと思っていたからね。案の定風になっても奴を切ることができたわけだ」
な、何それ!? つまり、ミラさんの想像力次第ではあるけど、絶対切断の異能ということだ。
「すごいですね!」
「いや、こんな斬ることしかできない異能なんかより、スノウのような誰かを笑顔にできるような異能が羨ましいよ」
私の頭を撫でながらミラさんは寂しそうに笑った。
ミラさんの言い振りから、昔この異能のせいで苦労があったのかもしれない。
私、ちょっと考えなしだったかな……。
「そんなことないと思います。だってミラさんが守ってくれたから、こうして私とライラは笑えていますよ」
「スノウ……そうだな」
「うぅ……」
「パパ!」
そういって二人で笑い合うと、どうやらガルル王が目を覚ましたようだ。
私たちもウルルやリーシャのところに向かうと、ガルル王はまだ辛そうではあるが、なんとか話ができるようだ。
ボロボロではあるが、ガルル王は見るだけで迫力で少しだけ肌がピリつくような雰囲気を纏っていて、私の心臓が自然と早くなる。
「ウルルに……お前はエルドリックのとこの……」
エルドリック? と聞きなれない名前を聞いたとき、ライラが私の様子を察してかこっそりと王様の名前ですよと耳打ちしてくれた。
「お久しぶりです。ガルル王」
「そうか……あいつに借りを作っちまったな。まさか国の最高戦力を出してくれるとは」
「そんなことは後でもいいからここを出るためにこれ食べて」
ミラさんの説明の後にウルルが私の金平糖を一粒取り出した。
「なんだこれは?」
「傷がすぐに治るものよ。お菓子っていうらしいんだけど、このスノウが作ったのよ」
ウルルがそういうとガルル王が私に視線を向ける。
「は、初めまして! スノウ・ウィンターウッドと言います! この度は王様からビースへの使者として派遣されました!」
私は緊張でちょっと声が裏返ったけど、慌ててガルル王に頭を下げた。
「頭を上げろ。あいつが意味もなくただの小娘をよこすわけがねぇ。お前さん、おそらくこのウルルのわがままにかなり頑張ってくれたんだろう。それに、体から出てるリーフェを見りゃ、ただもんじゃねぇのはわかる」
頭を上げると、ガルル王はあちこち大怪我をしているのに体を起こし私の頭に手を置いた。
「ありがとよ。助けてくれたこと、ウルルを連れ帰ってくれたこと、王として父親として感謝する」
ガルル王はさっきまでの迫力よりも、凛々しくも優しい雰囲気で私を褒めてくれた。
きっと、これがこの国の人たちに好かれる王様なのだろうと実感できた。
「……はい」
私が返事すると、ガルル王は再び壁にもたれかかり、ウルルから金平糖を受け取り口に入れた。
「まぁ、そう言うことになるのかな」
ミラさんはちょっと歯切れの悪い返事をする。
「お嬢様、ミラ姫様の異能は私やリーシャと違って特色の異能でございます。相性、という言葉では説明が難しいんですよ」
「……うん?」
ミラさんの刻印は黒色の剣。でも異能の内容までは知らない私はすっとんきょうな返事をする。
そんな私にミラさんは苦笑いしながら私に説明してくれた。
「私の異能は断絶。私が斬るに必要と思う斬撃を出すことができる。つまり、私がこうすれば斬れると思えばその通りの剣にすることができるんだ。さっきは、風になるというのなら、その空間ごと切ればいいと思っていたからね。案の定風になっても奴を切ることができたわけだ」
な、何それ!? つまり、ミラさんの想像力次第ではあるけど、絶対切断の異能ということだ。
「すごいですね!」
「いや、こんな斬ることしかできない異能なんかより、スノウのような誰かを笑顔にできるような異能が羨ましいよ」
私の頭を撫でながらミラさんは寂しそうに笑った。
ミラさんの言い振りから、昔この異能のせいで苦労があったのかもしれない。
私、ちょっと考えなしだったかな……。
「そんなことないと思います。だってミラさんが守ってくれたから、こうして私とライラは笑えていますよ」
「スノウ……そうだな」
「うぅ……」
「パパ!」
そういって二人で笑い合うと、どうやらガルル王が目を覚ましたようだ。
私たちもウルルやリーシャのところに向かうと、ガルル王はまだ辛そうではあるが、なんとか話ができるようだ。
ボロボロではあるが、ガルル王は見るだけで迫力で少しだけ肌がピリつくような雰囲気を纏っていて、私の心臓が自然と早くなる。
「ウルルに……お前はエルドリックのとこの……」
エルドリック? と聞きなれない名前を聞いたとき、ライラが私の様子を察してかこっそりと王様の名前ですよと耳打ちしてくれた。
「お久しぶりです。ガルル王」
「そうか……あいつに借りを作っちまったな。まさか国の最高戦力を出してくれるとは」
「そんなことは後でもいいからここを出るためにこれ食べて」
ミラさんの説明の後にウルルが私の金平糖を一粒取り出した。
「なんだこれは?」
「傷がすぐに治るものよ。お菓子っていうらしいんだけど、このスノウが作ったのよ」
ウルルがそういうとガルル王が私に視線を向ける。
「は、初めまして! スノウ・ウィンターウッドと言います! この度は王様からビースへの使者として派遣されました!」
私は緊張でちょっと声が裏返ったけど、慌ててガルル王に頭を下げた。
「頭を上げろ。あいつが意味もなくただの小娘をよこすわけがねぇ。お前さん、おそらくこのウルルのわがままにかなり頑張ってくれたんだろう。それに、体から出てるリーフェを見りゃ、ただもんじゃねぇのはわかる」
頭を上げると、ガルル王はあちこち大怪我をしているのに体を起こし私の頭に手を置いた。
「ありがとよ。助けてくれたこと、ウルルを連れ帰ってくれたこと、王として父親として感謝する」
ガルル王はさっきまでの迫力よりも、凛々しくも優しい雰囲気で私を褒めてくれた。
きっと、これがこの国の人たちに好かれる王様なのだろうと実感できた。
「……はい」
私が返事すると、ガルル王は再び壁にもたれかかり、ウルルから金平糖を受け取り口に入れた。
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