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第四章

ライラの攻防

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「いけないネズミさんだ。大人しく厨房でコック帽をかぶっていればいいものを、こんなところまで忍び込んで」

 翼の男はニタリと笑いながらライラの前で足を止めた。

「この三獣士さんじゅうし、風のエア様にかかれば貴様らの浅はかな策などお見通しなわけだが」

 三獣士……ブルダを護衛している強者の三人……。
 エアは風系の刻印で、速さと広範囲の攻撃にかなり定評があるらしく、もう一人のフレアと一緒にいるともう手がつけられないんだとか……。
 エアはライラのところから私の方へ歩いてきて、口元に手を当てさらにニタァっと笑みを浮かべた。

「貴様、人族にしてはいい見た目をしているな。ここの一件が終わったら私のコレクションに……」

 その顔は、この世界に来た時の盗賊のような顔をしていた。
 嫌悪を抱く、舐め回すような視線。無意識に私の体は後ろへ下がる。
 私のその様子を見て、さらに嬉しそうにする姿に恐怖し目を閉じた。

「い、いや……」

「お嬢様から……離れろ変態っ!」

 エアの後ろからライラは特大ハンマーを振るうが、エアは軽やかに避け距離をとった。

「ライラ……」

「くくく……随分と野蛮なことだ。私たち獣人よりもよほど獣に近いな」

「私はお嬢様を守る盾、そしてお嬢様に害をなす者を屠る剣。魔獣殺しを舐めないでください」

 そう言って二人はしばらく睨み合い、先にライラが動き出した。

破衝スタンプ!」

 ライラがハンマーを振り翳し、エアの上から叩くがまた避けられる。
 勢いのまま地面に叩きつけられたところが爆発したみたいに衝撃が走った。

「ほう、威力はなかなかだが、当たらなければどうということは……」

「ただ振り回すだけなわけ、ないでしょっ!」

 ライラは地面に叩きつけたハンマーを軸に回し蹴りをエアに繰り出した。
 しかし、それも間一髪で避けられる。

「器用なものだ」

「メイドですから」

 そこからはライラがハンマーと自分の軸を入れ替えての猛攻が始まった。
 戦いのことを知らない私はライラが押しているように見えるけど、どこか相手は余裕そうに見える。
 何度も攻撃を仕掛けるライラのハンマーがとうとうエアの体を捉えた。
 
「破衝!」

 ハンマーがエアの体に当たった瞬間、私はやった! っと内心思った。
 しかし、エアに当たるはずのハンマーはエアの体をすり抜け、ライラは面食らったような表情を浮かべた。
 そして隙ができたライラにエアが蹴りを入れ、ライラは吹っ飛ばされて壁にぶつかり倒れた。
 ライラはなんとか立ち上がろうとお腹を押さえながら立ちあがろうとするが、かなりのダメージを負ったのか咳き込みながら血を吐いた。

「ライラ!」

「くくく……あっはははは! この瞬間がたまらんな! 自らの攻撃が当たったはずなのになぜと思う表情!」

「くっ……ゲホっ!」

「ライラ! 無理しちゃだめ!」

 フラフラになりながらもライラは立ち上がりハンマーを構えた。

「私は……お嬢様の護衛……ここで立たずして……何が護衛と言えましょうか! はぁ!」

 ライラは再びハンマーを振るうが、攻撃はどれもエアの体をすり抜ける。

「無駄無駄! 貴様らの物理攻撃は効かない! なぜなら私の刻印『風の権能エアリアル』は私を風そのものへと変質させる! 貴様らは空気を殴り続けるようなものだ!」

 そんな! それじゃあライラの攻撃が当たっても意味がないってことじゃない!
 それなのに、あんな避けるフリまでして嘲笑うなんて、なんて性格の悪い奴!

「それでも! 私は……」

「いいかげん、鬱陶しい」

「かはっ!」

 エアがライラにカウンターで蹴りを放ち、ライラはまた壁にぶつかる。

「お嬢……様……。に……げ……」

「ライラー!」

「さてと、お楽しみの時間だ」

 エアはそう言って私の方へ向かってきた。
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