女子力の高い僕は異世界でお菓子屋さんになりました

初昔 茶ノ介

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第三章

私って意外と…

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城に戻ってから夕食を終えた私は、そのまま自分の部屋に戻った。
部屋についてからは、椅子に座ってお店でのことを考えてぼーとしているだけだった。

「お嬢様、何か考え事ですか?」

「あ、うん…私ね、今日ミラさんの前で泣いたの」

「泣いた…ですか?」

リーシャが私に紅茶をだしてくれたので、ありがととお礼を言ってから1口飲んだ。

「うん…ミラさんがね、私のお母さんに褒められたお菓子が好きって言われて…たぶん嬉しかったんだと思うの。でも、今までこんな経験なくて…嬉しくて泣くなんて。たぶん、ちょっと混乱してるのかも」

「そうですか…そのことでしたらライラのほうが参考になるようなことを言えるかも知れません」

「え?どうして?」

「ライラは昔はすごく表情豊かな子だったのです。嬉しい時は飛び跳ねて喜んで、悲しい時は大泣きして…」

「へぇ…昔はってライラは今も充分表情豊かだよ?」

「前まではすごく暗かったのです。お嬢様に仕えるようになって、ちょっとずつ昔に戻った感じですよ」

「そうなんだ…じゃあ今度聞いてみようかな」

「はい、恥ずかしがって教えてくれないかも知れませんけどね」

「『恥ずかしくてそんなこと言えません』とか言いそうだよね」

「ふふふ…よく似ていますよ」

私のライラの真似に二人して笑った。

そんな時、扉がノックされた。

「はい」

「私だ、開けてもいいか?」

リーシャが扉の前に行き、返事をするとミラさんの声が聞こえた。
ちらっとリーシャは私を見たので、私はうなづいて、通すようにアイコンタクトを送った。

「夜にすまない、スノウ」

「いえ、そんな。ミラさんならいつでも大歓迎です」

「そう言ってもらえると嬉しいよ」

ミラさんは私の向かいにある椅子に座ったので、私も椅子に座る。
リーシャにミラさんにも紅茶を出すように言う。

「今日はすまなかった、スノウ」

「え?何がですか?」

「いや、母上のことを思い出させてしまったようで…」

「あ、いいんです。ほんとに。むしろあのお菓子を気に入っていただけたのが嬉しいです」

「そうか…」

そして、しばらくの沈黙。

「スノウは家族に会いたいかい?」

「え?うーん…」

会いたい気もするけど、今はこんな姿だしなぁ…。

「もう少し…やることがすんだら会いたい…ですね」

「なるほど…もう少し成長してから会いたいということだね」

「え?あぁ…そんなところです」

ものすごく美化されてるけど…。

「それはよかった。実はちょっとスノウに遠慮というか、気を使っていたんだ」

「遠慮ですか?」

はて、一体どういう意味だろうか。

「私に気を使ってこの国にいるのではと。スノウの目的である食文化発展は他でも成し得ることだし、もしかしたら家族に会いに行きたいのに、私のせいでいけないのでは…と」

「へ!?そんな!私そんなこと全然思ってないですよ!?」

だって、ミラさんには盗賊から助けてもらって、その結果こうして店まで開いたのだ。そんなこと微塵も思ってなかった。

「そうか…それなら…いいんだ」

むー…なんだかミラさんは納得してない表情をしてます。

「ミラさん、ちょっといいですか」

「なんだい?」

「よいしょ…」

私はミラさんの膝の上に座って、寄りかかる。

「ス、スノウ?」

「…私がミラさんにどうして助けてくれるのかって聞いた時のこと覚えてますか?」

「え?」

「私みたいな妹がほしかった…そういう風に言ってたんですよ…。あと、王妃様にはこの国にいる間は王妃様が母親と言われました。だから、ミラさんは私のお姉ちゃんなんです。お姉ちゃんがそんな風に気を使ってたら…妹は甘えられないじゃないですか…」

「スノウ…すまない」

「いいんです…今日は疲れました。頑張りました。私、偉いですか?」

「あぁ…偉い偉い。お菓子も作れて、可愛い。自慢の妹だよ」

「えへへ…」

ミラさんは私の頭を撫でながら、反対の手で私を軽く抱きしめた。

あったかい…。久しぶりのミラさんのなでなではすごく嬉しい。
こっちにきてからすっかり私は甘えん坊になった。
前の世界ではそんなことなかったと思ったんだけどなぁ…やっぱり女の子になったからかな。

甘えん坊になってしまった理由はよくわからなかったけど、この心地いい温もりに身を任せていたら、夢の世界に落ちていった。
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