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第一章

対決は予想外の方向へいきました

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料理対決の時間。
私とコック長は王族が食事をする部屋の前にきていた。

「出ていく準備は済ませたのかい?お嬢ちゃん」

あきらかにバカにするような口調で言われて、私もさすがにムッとする。

「ま、10歳やそこらで9人分の食事を用意できるだけでも大した…」

「14歳です!」

「え?」

この世界の人たちは!悪いか!?小さい14歳がいちゃ悪いのか!?

「ま、まぁ何歳でもいい。俺は実力で今の地位まで上り詰めたんだ。そこら辺のママのお手伝い程度の嬢ちゃんに負けるわけがねぇ」

「……じゃあ負けたら?」

「はぁ?」

「負けたらどうするんですか?」

「万が一にでもそんなことが起きたら、嬢ちゃんの言うことなんでも聞いてやるよ。茹でるなり焼くなり好きにしな」

「言いましたね…」

私達がすでに火花を散らすなか、部屋の扉が開いた。

「お待たせいたしました。王様並びに王族の皆様がお揃いになりました」

メイドのような人に言われ、私とコック長は中へ入り、一礼する。
1番奥の椅子には王様、その右に王妃様、ミラさん、それから第一側室、第一王子と順に座っていた。

「王様、皆様。ご無沙汰しております。本日は最高の料理を召し上がっていただきたく…」

「そういう話はいいからさー早くしてくんね?腹減ってんだから」

1人の王子がコック長の話を遮って言う。
あれは…第二王子のクロード様ですね。

「クロード、そう言うでない。すまないなコック長」

「いえ、滅相もございません。ではすぐにお食事にいたしましょう」

「うむ、では今回もフルコースを最初から食べていき、最終的にどちらが美味であったか、決めるとしよう」

料理対決のルールは量を少なめにしたフルコースを互いに作り、まず1人目のフルコースを食べた後、次の人のフルコースを食べ、最終的に美味しいと思った人の数が多い方の勝ちだ。
そして、このルールだと先攻があきらかに有利なことは明白。どんな料理も出来たてに近いものが美味しいのだから。
でも…。

「では、先にどちらが…」

「王様」

「ん?なんだね、スノウ嬢」

「私が後でもいいです」

私の発言に場の全員が驚く。
それはそうだ。出来たてが美味しいというのはいくら料理に疎い国といってもわかるだろう。実際、ミラさんは焼きたてをくれるからとお昼に私をあの店に連れていったのだから。

「ほう…スノウ嬢、それはなぜかね?」

「おそらくですが…私の料理を先に食べると、コック長の料理から味を感じなくなります」

王様も王妃様も、その他の人たちもよくわからないと言った感じだった。
あんまり言いたくなかったけど…要するにこういうことだ。

「要するに…私のほうが美味しいので、コック長の料理から先に食べて上げてください」

「な…なんだと!?」

私の言葉にコック長が私を睨む。
こうなるからあんまり言いたくなかったのに…。

「わかった、ではコック長の料理からいただくとしよう。コック長、用意を」

「え、あ…はい」

王様に言われて、さすがにコック長も素直に準備をする。
王様、感謝します。

コック長が皆様の前に出したのはいろんな種類の野菜が入ったサラダだった。

「5種の野菜のサラダです」

さすが前菜はサラダか…。
予想通りだ。
しかし、ドレッシングも何も無い。
当然といえば当然だけど。

「少量の塩をまぶしてあります、お召し上がりください」

「あー俺はパス、野菜の臭みがだめだ」

「私も結構ですわ」

クロード様と第二側室のエオイス様はフォークに手すらつけなかった。

「新鮮な野菜でとても美味しいよ」

「たしかに、よくここまで新鮮なものを用意できましたね」

「はい、料理対決が決まりしだい、市場で私が見つけてきました。目利きには自信がありますんで」

王妃様が野菜を褒めると、コック長は自慢げに答えた。
クロード様とエオイス様以外は完食され、次の料理へ。

「じゃがいものスープです」

じゃがいものスープと言ってもビシソワーズのようなポタージュではなくて、お湯にカットされたじゃがいもが浮いてるだけ…みたいなものだった。

「じゃがいもの柔らかさがちょうど良いな。さすがコック長だ」

「ありがとうございます、ガルディア様」

あの方は第三王子のガルディア様ですね。
まだ13歳だと言うのにとても大人びて見えます。ちょっとへこみそうです…。

これはさすがにクロード様とエオイス様も完食し、次は魚料理。

「サーモンの塩焼きです」

見た目は、サーモンのお刺身の大きいものを焼いたような感じ。
対決と言うだけあってさすがに塩を出してきたか…でもあの厨房にあった量では到底足りないだろう。

「塩焼きの割には味があまりしないな」

「もうしわけございません、ガルディア様…塩は貴重でして、1人に使える量も限られておりまして…」

「まぁ、そうであろうな。魚はとても新鮮ゆえ、美味であることに変わりはない」

「ありがとうございます」

王子様らしい対応でちょっと感動した。
クロード様を見たから、王子様は皆、わがままなのかと思っていた…。

そして次は肉料理。

「バルト牛のステーキです」

出てきたのはよくファミレスとかに出てくるステーキ。
これは…さすがに美味しそう。

「うむ、やはりコック長の作るステーキは上手い」

「えぇ、他の料理人ではこんなに上手く火を通せないでしょう」

「ありがとうございます、そう言っていただけて、これからも精進いたします」

普通に高評価だった。
うん、だって普通に美味しそうだったもん…。

そして最後はデザート。

「2種の果実のカクテルです」

カクテルと言ってもお酒ではなく、皿には細かく切られたフルーツが混ざって入っており、それをスプーンで食べるようだった。

これでコック長のフルコースは終了。

「どの料理もとても美味しかったわ」

「王妃様、ありがたきお言葉です」

「さすがはわが国でも1の腕をもつコック長だ。これからも精進してくれ」

「肝に銘じます、王様」

コック長はそう言って皿を片付けていると、私とすれ違う時にものすごくムカつく顔でドヤ顔を決められて、私の苛立ちはMAXだ。

「さて、次はスノウ嬢の料理をいただくとしよう」

「はい、王様」

さぁ、次は私の番です!
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