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第一章

王妃様はいい意味で予想と違いました

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王妃様の部屋に来た私とミラさん。

「あなた達は下がりなさい」

「かしこまりました」

王妃様がお付の二人に外すよう言うと、二人は部屋を出ていった。
ミラさんはともかく、私がいるのにいいのだろうか…。
王妃様は出ていく二人を見届けると、にっこりと笑って、私を見る。

「はじめましてスノウ。ミラちゃんの母でこの国の王妃、ミネルバ・ヴァン・レインバルトです」

「母上、ミラちゃんは…」

「あら、ミラちゃんはミラちゃんよ?」

あれ?さっきまでの威厳が…。

「それよりも、そんな所に立っていないでこっちにきなさい。やることがなくて退屈だったの。お話をしましょう」

王妃様に言われるままに王妃様の近くの椅子に座る私とミラさん。

「スノウちゃんは異国から転移させられたのよね?」

「は、はい…」

私は急に話を振られて、緊張しながら答える。
ここで下手なことをすれば処刑なんて…。

「もぅ、そんなに緊張しないでよ。ほーら」

王妃様が私の手を引っ張って私を自分の膝の上に乗せ、軽く抱き寄せる。

「はぁ…可愛いわぁ…ミラちゃんの小さな頃を思い出すわ」

「あ、あの…」

私は突然のことで混乱し、ミラさん方に助けを求める視線を向ける。

「すまない、スノウ。母上は普段の堅苦しいのが嫌いでね、いつも私の前ではこんな感じだから安心してくれ」

「そうそう!だからスノウちゃんも、普段通りにしていいのよ?」

「は、はい…」

「それで、私はあなたの話を聞いて興味があったのよ。ミラちゃんがすごく気に入ってる女の子がいるって!昨日と今日あったこと、私にも教えて?」

王妃様が私を軽く浮かせて、向きを180°変えてもう一度膝の上に乗せる。
うぅ…王妃様の顔が近い…。
よくよく見るとすごく美人さんだよ…。
整った顔立ちはミラさんにそっくり。いえ、王妃様がお母さんだからミラさんが似てるのか。

戸惑いつつも私はミラさんと出会うところやさっきの刻印の儀をのことを話した。
でも、女神様のことはミラさんにさっき隠されたので、割愛させてもらった。

「そう…それは転移のすぐに大変だったのね…でも大丈夫よ!この城はとっても安全だから!私とミラちゃんがいるからね!」

「は、はぁ…」

ミラさんは強いのは知ってるけど…王妃様は強いのかな…?
権力的な意味かな…。

「それはそうとミラちゃん、まだスノウちゃんの刻印は確認してないのよね?」

「そう言えばそうですね」

「見てみましょ!」

そう言って王妃様は私の服の胸ボタンに手をかける。
私は慌てて胸元を隠す。

「じ、自分でしますから…」

「えぇー?いいじゃなーい、同じ女なんだから」

「そ、そういう意味じゃ…」

私が困っているとミラさんが後ろから私を持ち上げる。

「越権行為ですよ、母上」

ミラさん、顔は笑ってるけど目が笑ってないよ…。
でも、着替えの時にミラさんも同じようなことしてたけどね…。

「あらぁ~?ミラちゃん、スノウちゃんはあなたのものじゃないのよぉ~?ということは当然、私にもスノウちゃんを愛でる権利があるのよ?」

「いえいえ、母上。スノウは私が助けてここへ連れてきたのです。ということは私の客人ですので、王妃の母上がわざわざ迎える必要性もないでしょう?」

親子でバチバチと火花を散らす二人を私はあわあわと慌てて見ていた。
なんとか話題をそらさないと…。
そうだ!刻印!

「み、見てください!私の刻印、白色ですよ!」

私はボタンを外し、服を少し引っ張って、自分の刻印を見せる。
私の刻印を見て、先ほどまでの二人とは一転して、静かになった。

「え、えっと…お二人とも…?」

「白に…星?」

「まさか…」

私の刻印は白色の星で、ミラさんに前に聞いていた話から普通ではないとは思っていたけど、そんな黙るほどではないと思っていた。

「スノウちゃん。今後、簡単にその刻印を人に見せちゃダメよ」

「え?」

「白色の星の刻印はこの世界を作った女神様の象徴なんだ。それを刻むというのは女神様に愛される人ということになる。そして、過去に白色の刻印のある者がいる国は資源に困らず、長く繁栄するとまで言われているんだ」

まさかそんな凄いものだとは…でもどうして見せちゃいけないのだろう。

「つまり、スノウちゃんが白の刻印を持っていると他国に知れると、スノウちゃんが狙われるだけでなく、最悪、戦争にまで発展するわ」

「え?えぇ!?」

女神様…なんてものを私に…。
心の中で女神様を恨みながら、私はボタンを閉じた。
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