女子力の高い僕は異世界でお菓子屋さんになりました

初昔 茶ノ介

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第一章

どうやらこの世界の食文化問題は深刻なようです。

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街について、どこかでお昼ご飯を食べることになりました。
ノイシュは街の馬を預ける小屋に置いて、ミラさんと二人で街を歩きます。

「さて、スノウは何が食べたい?私にかまわずに言ってごらん?」

「あ…えっと…まだこの街とか国のことわかっていなくて…ミラさんのおいしいものと思うものを食べたいです」

「そうか…では、あそこはどうだろうか」

ミラさんが指差す店は屋台のような形で、網の前には串に刺さったお肉が並んでいた。
いわゆる串焼きというものだろうか…。

「あの店ではその場で焼いて、焼きたてを出してくれるから美味しいんだ」

「へぇ…」

確かにすぐに焼いたものを出してくれるなら温かいし、美味しいかも。
女神様ったら、こんな美味しそうなものがあるのに、食文化が遅れてるなんて大袈裟ですよ。

「はい、スノウの分」

「ありがとうございます!」

ミラさんが串焼きを2本買って、1本を私にくれた。
串焼きは焼きたてで、今にも垂れてきそうなほどの肉汁が表面を光らせてとても美味しそうだった。

「いただきます!」

串焼きを食べ、数回噛むんでいると違和感を感じた。いや、違和感というよりも…。

(あ、味付けが…ない!?)

噛めば噛むだけ出てくるのは肉と油の味のみで、肉自体はすごく美味しいのだけど、さすがにこれでは飽きてしまう。
あと、油の味のせいで私は少し気持ち悪くなってきた…。

「美味しいかい?スノウ」

そんな時にミラさんからの美味しいかという質問は非常に困る…。
作ったのはミラさんじゃないけど、ここが美味しいと教えてくれたのはミラさんなのだから。

「お、おいしい…です…」

「本当かい?何やら顔色が良くない気がするが…」

「え、えっと…その…味付けは…」

私が焼いていたおじさんに聞くと、おじさんが驚いていた。

「調味料なんて高くてとてもじゃないが買えないよ。それに、城でだってほとんど使わないだろう?」

「え!?」

おじさんの発言に私は雷にでも撃たれたかのような衝撃を覚えた。

(ちょ、調味料が…ない!?じゃあこの世界の料理って…ただ切って、焼いたり、茹でたりするだけ?だからステーキとかサラダがそのまま出たり、スープもほぼほぼお湯みたいなものだったのか…)

「あ、あの…ミラさん」

「なんだい?スノウ」

「この国は海が近くにありますか?」

「ん?あぁ、あるよ。馬でいって…往復3刻といったところか」

1刻が2時間だから…片道3時間!?
それは確かに海水も手に入りにくいよね…そもそもこの世界の人達は海に塩分があることを知っているのかも怪しいよ…。

「み、ミラさん…ちょっとこちらへ」

「あ、あぁ。ご主人、美味しかった。ありがとう」

「いえいえ、またきてください」

私は一刻も早くこのお肉に味をつけたくてしょうがなかった。
せめて塩、胡椒くらいはあると高を括っていた私がうらめしい…。
とりあえずミラさんを連れて、人目のない裏路地へ入る。

「創造、塩胡椒!」

私の手元にスーパーに売ってそうな塩胡椒が出てきた。
それをパラパラとかけて、ミラさんに渡す。

「ミラさん、食べてみてください」

「え?いや、でもこれはスノウの…」

「い・い・か・ら!食べてください」

「う、うむ…」

私の勢いが勝ったのか、ミラさんは私から受け取った串焼きを食べる。

「な、なんだこれは…しょっぱい…こんなに塩が贅沢に使われている物は初めてだ。それに、この刺激的な味は…」

「ミラさん…実は私、女神様にここへ転移させられたんです…」

「え?」

「ミラさんが食べているそのお肉の味が私の国では普通でした。女神様は私にこの国でも食文化を発展させるために私を呼んだと、刻印の儀で言われました」

「それは…本当かい?」

「はい」

私の話を聞いてミラさんが何やら難しい顔をしている。

「だからミラさん…私に協力してくれませんか…?私はこの国の人達にもっともっと美味しいものを食べて欲しいです…もちろんミラさんにも…」

「スノウ…わかった。私に何ができるのかわからないが、できる限りのことはしよう」

私はミラさんの返事を聞いて安心した。
何から始めればいいかは分からないけど、でも、やることは一つ。
この世界に食文化革命を起こしてみせます!
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