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第一章
ミラさんには優しくしてくれる事情があるようです
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私は風呂へ連れていかれたあと、どこかの部屋に通されて、ベッドに腰掛けていた。
いやぁ…ほんとに焦った。自分でもこの体をちゃんと見ていないのに、こういう貴族のお風呂にはお使いの人がいるんだな…。何かを失った気分だよ…。
そんなことを考えていると扉が開いて、ミラさんが入ってきた。
「すっきりしたかな?」
「はい、とても。こんなことまでありがとうございました」
私がお礼を言うところでミラさんは私の隣に座った。
「いや、そんなことは気にしなくてもいい。それより服を決めなくてはいけないね」
ミラさんがせっかく座ったのに、すぐに立ち上がって奥のカーテンを開けた。
カーテンの先には所狭しとたくさんの高そうな服があった。
「いつまでもそんな服じゃダメだろう?」
今の私の服は白いだけのワンピースのような服。
シンプルで私はこれでも別にいいと思うんだけど…。
「別に私はこれでも…」
「ダメだろう?」
さっきのように顔を近づけて同意を求めるミラさん。
割と強引だ…。
「そ、そうですね…」
「ふむ、ではこれなどはどうだろう」
私に赤いドレスをとって見せる。
可愛いとは思う。でもこれだと…。
「素敵だとは思いますけど…これだとパーティへ行くみたいです」
「たしかにそうだな。では…」
ここからが長かった。
ミラさんはとりあえず私に合いそうと服をどんどん着せ替えていったのだ。
そして、気がつくと日が傾き、外はオレンジ色になり…。
「ふむ、やはりこれが1番だな」
「は、はい…」
流石にもう疲れた。途中から服の枚数を数えるのをやめたし…。
最終的に選ばれたのは白いドレスに黒のリボンが背中に付いている服だった。
「シンプルかつ、リボンがアクセントになっていてとても可愛いな」
「あ、ありがとうございます」
まじまじと見られて少し照れくさかった。
そこでやっと外をみたミラさんは「おや」といって不思議そうな顔をした。
「いつのまにかこんな時間になっていたのか。スノウといると楽しくてすぐに時間がすぎていくな。スノウ、お腹は空いているかい?」
そう言われると、急に空腹感が私を襲った。そう言えばこの世界に来てから何も食べていなかった。
空いていると言おうとすると、代わりにお腹がなって、かぁっと顔が熱くなった。
ふふふとミラさんは笑って机の上にあるベルを鳴らした。
すると、扉から先ほどの執事さんが入ってくる。
「お呼びでしょうか、姫様」
「じぃ、私とスノウの食事の用意を」
「かしこまりました」
「え?でも服だけじゃなくて食事もなんて悪いです…」
「いや、いいんだ。私がしたいことをしているだけだし、スノウをこのまま城の外へ出すとまた誰かに襲われるかもしれないだろう?」
た、たしかに…もう少しこの世界に慣れてから出歩いた方がいいかもしれない。
「では、準備をして参りますので、整い次第またお呼び致します」
執事さんはそのまま部屋を出ていった。
この世界の料理がどんなものか、前の世界で料理に興味があった分、楽しみだ。
「さて、時間が空いてしまったね。それまでは明日からの予定でも考えよう」
ミラさんはベッドに座り、横をポンポンと軽く叩いていたので、私はそこへ座る。
「あの、ミラさん。1つお聞きしてもいいですか?」
「なんだい?」
「どうしてここまでよくしてくださるんですか?私は今日会ったばかりで、しかもこの国の人でもありません…なのにどうして…」
私の質問にミラさんは少し顔を横に向けて、なんだか気恥しそうに言った。
「その…私の兄弟は兄上が1人、弟が2人でね…。私は姉妹がほしかったんだ。特に可愛い妹がね。森でスノウを見つけて、端的に言えば一目惚れだよ。スノウは私の妹像にぴったりだった。だから、その…仲良くなりたくて…だな」
「……ぷっ、ふふふ…」
私は理由を聞いてつい笑い出してしまった。
1国のお姫様がただ女の子と仲良くなりたいがために服をプレゼントし、食事を振る舞うなんて、なんだかおかしくなってしまった。
私が笑うのを見て、ミラさんも顔を少し赤くしながら笑っていた。
「そうだ、明日は教会にいこうか。スノウが刻印を刻めないか教祖に聞いてみようか」
刻印を刻めば私でも魔法のような力が使えるのかと思うとちょっとワクワクした。
「はい!」
元気よく返事をした所でまた私のお腹が鳴った。
うぅ…こういう時くらい空気読んで…。
そこで、タイミングよく食事の準備ができたことを執事さんが伝えにきたのだった。
いやぁ…ほんとに焦った。自分でもこの体をちゃんと見ていないのに、こういう貴族のお風呂にはお使いの人がいるんだな…。何かを失った気分だよ…。
そんなことを考えていると扉が開いて、ミラさんが入ってきた。
「すっきりしたかな?」
「はい、とても。こんなことまでありがとうございました」
私がお礼を言うところでミラさんは私の隣に座った。
「いや、そんなことは気にしなくてもいい。それより服を決めなくてはいけないね」
ミラさんがせっかく座ったのに、すぐに立ち上がって奥のカーテンを開けた。
カーテンの先には所狭しとたくさんの高そうな服があった。
「いつまでもそんな服じゃダメだろう?」
今の私の服は白いだけのワンピースのような服。
シンプルで私はこれでも別にいいと思うんだけど…。
「別に私はこれでも…」
「ダメだろう?」
さっきのように顔を近づけて同意を求めるミラさん。
割と強引だ…。
「そ、そうですね…」
「ふむ、ではこれなどはどうだろう」
私に赤いドレスをとって見せる。
可愛いとは思う。でもこれだと…。
「素敵だとは思いますけど…これだとパーティへ行くみたいです」
「たしかにそうだな。では…」
ここからが長かった。
ミラさんはとりあえず私に合いそうと服をどんどん着せ替えていったのだ。
そして、気がつくと日が傾き、外はオレンジ色になり…。
「ふむ、やはりこれが1番だな」
「は、はい…」
流石にもう疲れた。途中から服の枚数を数えるのをやめたし…。
最終的に選ばれたのは白いドレスに黒のリボンが背中に付いている服だった。
「シンプルかつ、リボンがアクセントになっていてとても可愛いな」
「あ、ありがとうございます」
まじまじと見られて少し照れくさかった。
そこでやっと外をみたミラさんは「おや」といって不思議そうな顔をした。
「いつのまにかこんな時間になっていたのか。スノウといると楽しくてすぐに時間がすぎていくな。スノウ、お腹は空いているかい?」
そう言われると、急に空腹感が私を襲った。そう言えばこの世界に来てから何も食べていなかった。
空いていると言おうとすると、代わりにお腹がなって、かぁっと顔が熱くなった。
ふふふとミラさんは笑って机の上にあるベルを鳴らした。
すると、扉から先ほどの執事さんが入ってくる。
「お呼びでしょうか、姫様」
「じぃ、私とスノウの食事の用意を」
「かしこまりました」
「え?でも服だけじゃなくて食事もなんて悪いです…」
「いや、いいんだ。私がしたいことをしているだけだし、スノウをこのまま城の外へ出すとまた誰かに襲われるかもしれないだろう?」
た、たしかに…もう少しこの世界に慣れてから出歩いた方がいいかもしれない。
「では、準備をして参りますので、整い次第またお呼び致します」
執事さんはそのまま部屋を出ていった。
この世界の料理がどんなものか、前の世界で料理に興味があった分、楽しみだ。
「さて、時間が空いてしまったね。それまでは明日からの予定でも考えよう」
ミラさんはベッドに座り、横をポンポンと軽く叩いていたので、私はそこへ座る。
「あの、ミラさん。1つお聞きしてもいいですか?」
「なんだい?」
「どうしてここまでよくしてくださるんですか?私は今日会ったばかりで、しかもこの国の人でもありません…なのにどうして…」
私の質問にミラさんは少し顔を横に向けて、なんだか気恥しそうに言った。
「その…私の兄弟は兄上が1人、弟が2人でね…。私は姉妹がほしかったんだ。特に可愛い妹がね。森でスノウを見つけて、端的に言えば一目惚れだよ。スノウは私の妹像にぴったりだった。だから、その…仲良くなりたくて…だな」
「……ぷっ、ふふふ…」
私は理由を聞いてつい笑い出してしまった。
1国のお姫様がただ女の子と仲良くなりたいがために服をプレゼントし、食事を振る舞うなんて、なんだかおかしくなってしまった。
私が笑うのを見て、ミラさんも顔を少し赤くしながら笑っていた。
「そうだ、明日は教会にいこうか。スノウが刻印を刻めないか教祖に聞いてみようか」
刻印を刻めば私でも魔法のような力が使えるのかと思うとちょっとワクワクした。
「はい!」
元気よく返事をした所でまた私のお腹が鳴った。
うぅ…こういう時くらい空気読んで…。
そこで、タイミングよく食事の準備ができたことを執事さんが伝えにきたのだった。
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