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第四章

ビースでの事情

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王様の前にきた私たち。
ウルルは王様に一礼した。

「レインバルト国王様、お久しぶりでございます。此度の急な訪問、無礼をお許しください」

「ウルル姫、顔を上げてくれ」

ウルルは顔を上げて王様を見つめた。
今のウルルには朝の甘えた雰囲気は一切なく、どことなくミラさんに似た凛とした態度だった。

「急な訪問には何か理由があるのかね?」

「はい。実は現在ビースでは少々面倒なことになっているのです」

「面倒なこととは?」

「簡潔に言うなら、謀反です」

ウルルの言葉を聞いてこの場にいる全員が一瞬凍りついた。

「謀反…それでガルル王はどうなされた?」

「話を急ぎました。謀反といっても実行にはまだ移されていないのです。父上もおそらくまだ国務をしているはずです」

それをきいて王様は安心したようだった。
前に学校の歴史の授業で習ったが、レインバルトは獣人国ビースと妖精国フェリーと同盟を組んでいて、国王同士は大変仲が良いとか。

「私たちの調べにより謀反の企てを見破ったのですが、確たる証拠をつかめずにいるのです」

「ほう…それでガルル国王がレインバルトへ秘密裏にウルル姫を送ったと?」

「いえ、父上は何も言っておりません」

ウルルが放った言葉は再び周りを凍らせた。
つまり、一国の姫が勝手に他国へ来たと?

「私の判断でここに来ました。レインバルト国王、どうかビースに御助力を…」

ウルルはそう言って再び頭を下げた。本人は至って本気の様子だが、それが余計に王様を悩ませた。

「…少々考えるゆえ、時間が欲しい。スノウ嬢、ウルル姫のお相手を頼めるかね?あと、コック長に頼んでホットコーヒーを一杯もってくるように伝言を頼む」

「は、はい。わかりました」

私はウルルを連れて王様の前を後にした。











ウルル姫とスノウ嬢が部屋を出て行くのを見送り、ため息をつきながら背もたれに寄りかかった。

いくら子供とはいえ、1人で独断で国外へ赴くなど、一国の姫がしていいことではない。
身の危険があること、その国との関係を保つこと、様々な要因であってはならないことだ。
あのガルルの娘ということもあり、これはどう対処すべきか…。

色々考えているうちにため息をついた。

「父上、私がビースへ行き様子を見てきましょうか?それならば姫が姫を連れて遊びにきたといえばガルル国王も小言程度で済むのでは?」

「いや、謀反の話が事実ならば今ミラを送るのは少々危険だ。ミラよ、お前も姫なのだからな」

『姫』という言葉にミラは若干眉をひそめた。
昔から姫のように扱われるのが嫌いだったこともあるだろう。
そういう点ではウルル姫を見習ってほしいものだ。

しかし…ミラを送るのは謀反を企てている輩を刺激しかねない。
ミラは剣士の中でおそらく世界で一二を争う腕を持っている以上、今ガルルに接触すれば謀反に備えていると思われるだろう。

そんなことを考えていると部屋の扉がノックされた。

「国王様、ホットコーヒーをお持ちしました」

コック長が部屋へ入ってきて、コーヒーを目の前に置いた。

「ありがとう、コック長」

「もったいないお言葉です」

お礼を言ってコーヒーを一口飲む。

「ん?いつもと味が違うな。何か変えたのかね?」

「いえ、スノウ嬢が来た時に淹れていったんです。そのあとすぐにウルル姫に連れていかれましたので私がお持ちしました。フラットホワイトという淹れ方だそうです」

「ほぉ…ほんとうに料理に関しては右に出るものはおらんな。普段ののんびりした様子からは想像もつかんよ」

もう一口コーヒーを飲む。

「うむ…いつもより味わい深く、美味しい……そうだ。その手があった」

コーヒーを飲んで思いついた。
これならば謀反の犯人を刺激せずにウルル姫をビースへ返し、様子も探れる。

「父上?」

「ミラよ。いい方法が思いついた。これならば敵を刺激することなく様子を探れる」

「本当ですか?その方法とは…」

「スノウ嬢をビースへ派遣する」

ミラがさっきよりも眉をひそめて、今までで一番嫌そうな顔をしていた。
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