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第四章
ライラの過去2
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「ジャギーの次の雇い主はセルファム・クラロースというお方です」
「クラロース家も聞き覚えがあるわ。たしか、お医者さんの家よね?」
「はい、その通りでございます。セルファム様はクラロース家のご長男で、ゆくゆくはクラロース家を継がれていくお方だったのです」
「だった…ってことは今は違うの?」
「はい…順を追ってお話ししますね。ライラはしばらく療養を取っていたのですが、さすがにずっと職がないというのはいけないと、私が雇い先を探したのです。まぁ、『魔獣を一人で10匹討伐できるメイド』と巷では噂になっていましたので、すぐに職場は見つかりましたけど」
「噂にもなるよねぇ…」
「そこで、私が選んだのがクラロース家でした。理由はクラロース家のお方はお優しい方が多いと言われていましたので、ジャギーのようなことはないだろうと思っていたのです」
「なるほどね」
「そこで、私とライラで雇われて、ライラはご長男の護衛兼メイドとしてお世話をすることになったのです。ライラは身の回りのお世話をしっかりこなして、お優しいセルファム様にどんどん懐いていきました。薬草を探したりする時には怪我ひとつさせずに帰ってきたりと…」
「ちょ、ちょっとまって」
「なんでしょう?」
「身の回りのお世話…できたの?」
「あぁ…そのことについては後でお教えします。そしてある時、セルファム様はライラを連れて町外れまで往診に行かれたのです。しかし、その時は大きな台風があり、怪我人が続出していたのです」
町外れはいわゆる『貧民街』というやつで、貧しい人たちはだいたいが町外れに住むようになる。
私もたまに支援としてご飯を渡しに行ったりしたことがあった。
「セルファム様の異能は『癒しの炎』というものでした。手に火が灯って、触れたものの傷を癒すという異能です。その時はライラしか連れずにきていたので、明らかにオーバーワークでした。しかし、お優しいセルファム様は一人でほとんどの怪我人を治したのです」
「まさか…」
「はい…その後、セルファム様はリーフェの使用過多で、倒れられました」
「そんな…」
「ライラの話では止めようとしたが、セルファム様に逆に叱られたようです。『助けを求めている患者がいるんだ。お前は黙っていろ』と。普段は穏やかでお優しいセルファム様にそんなことを言われてはライラも何も言えなかったのでしょう。そして、倒れたセルファム様をライラは連れて帰ると、周りからは責められなかったのです。クラロース家の当主様にはよく見守ってくれたと言われて、罪悪感がより増したのでしょう。しばらくは寝たきりのセルファム様のお世話をしていたのですが、だんだんライラも窶れていったのです。見かねた私はライラに話をして、ライラがいかに自分を責めているか、考えていることを全て聞きました。それを聞いて私はクラロース家をライラと離れさせてほしいと、当主様に懇願したのです」
「そう…なんだ…」
そういえば、ライシン村でもずっと私のそばにいたんだよね…。
「先ほどの身の回りのお世話をできるのか…というのはその時のショックでそういう作業をしようとすると、セルファム様が倒れたことをフラッシュバックするそうです。ベッドで寝ているセルファム様が脳裏に焼き付いてしまったのでしょうね」
「……その、セルファム様はまだお目覚めにならないの?」
「はい…これでそろそろ1年と少し経つでしょうか…このまま目が覚められないといけないと、当主の候補からも外れてしまわれたのです」
「……」
そんな気持ちでも、私のために明るく振る舞ってくれたんだ…。
ほんとは優秀なメイドさんだったんだ…。
「お嬢様。どうか今回のことでライラにお気を悪くされないでください。ライラはお嬢様のことを…」
「わかってるわ…昔の話を聞かなくても、ライラは私のために言ってくれたってことくらい」
でも…だからってあの子をそのままにはできないわ…どうすれば……あ。
「そうだわ…これならライラも…」
「お嬢様?」
「リーシャ、ライラはどこにいるの?」
「え?おそらくメイドの宿舎に…」
「わかったわ!」
「あ!お嬢様!」
私は思いついたことと思っていたことを伝えるためにライラのところへ向かった。
「クラロース家も聞き覚えがあるわ。たしか、お医者さんの家よね?」
「はい、その通りでございます。セルファム様はクラロース家のご長男で、ゆくゆくはクラロース家を継がれていくお方だったのです」
「だった…ってことは今は違うの?」
「はい…順を追ってお話ししますね。ライラはしばらく療養を取っていたのですが、さすがにずっと職がないというのはいけないと、私が雇い先を探したのです。まぁ、『魔獣を一人で10匹討伐できるメイド』と巷では噂になっていましたので、すぐに職場は見つかりましたけど」
「噂にもなるよねぇ…」
「そこで、私が選んだのがクラロース家でした。理由はクラロース家のお方はお優しい方が多いと言われていましたので、ジャギーのようなことはないだろうと思っていたのです」
「なるほどね」
「そこで、私とライラで雇われて、ライラはご長男の護衛兼メイドとしてお世話をすることになったのです。ライラは身の回りのお世話をしっかりこなして、お優しいセルファム様にどんどん懐いていきました。薬草を探したりする時には怪我ひとつさせずに帰ってきたりと…」
「ちょ、ちょっとまって」
「なんでしょう?」
「身の回りのお世話…できたの?」
「あぁ…そのことについては後でお教えします。そしてある時、セルファム様はライラを連れて町外れまで往診に行かれたのです。しかし、その時は大きな台風があり、怪我人が続出していたのです」
町外れはいわゆる『貧民街』というやつで、貧しい人たちはだいたいが町外れに住むようになる。
私もたまに支援としてご飯を渡しに行ったりしたことがあった。
「セルファム様の異能は『癒しの炎』というものでした。手に火が灯って、触れたものの傷を癒すという異能です。その時はライラしか連れずにきていたので、明らかにオーバーワークでした。しかし、お優しいセルファム様は一人でほとんどの怪我人を治したのです」
「まさか…」
「はい…その後、セルファム様はリーフェの使用過多で、倒れられました」
「そんな…」
「ライラの話では止めようとしたが、セルファム様に逆に叱られたようです。『助けを求めている患者がいるんだ。お前は黙っていろ』と。普段は穏やかでお優しいセルファム様にそんなことを言われてはライラも何も言えなかったのでしょう。そして、倒れたセルファム様をライラは連れて帰ると、周りからは責められなかったのです。クラロース家の当主様にはよく見守ってくれたと言われて、罪悪感がより増したのでしょう。しばらくは寝たきりのセルファム様のお世話をしていたのですが、だんだんライラも窶れていったのです。見かねた私はライラに話をして、ライラがいかに自分を責めているか、考えていることを全て聞きました。それを聞いて私はクラロース家をライラと離れさせてほしいと、当主様に懇願したのです」
「そう…なんだ…」
そういえば、ライシン村でもずっと私のそばにいたんだよね…。
「先ほどの身の回りのお世話をできるのか…というのはその時のショックでそういう作業をしようとすると、セルファム様が倒れたことをフラッシュバックするそうです。ベッドで寝ているセルファム様が脳裏に焼き付いてしまったのでしょうね」
「……その、セルファム様はまだお目覚めにならないの?」
「はい…これでそろそろ1年と少し経つでしょうか…このまま目が覚められないといけないと、当主の候補からも外れてしまわれたのです」
「……」
そんな気持ちでも、私のために明るく振る舞ってくれたんだ…。
ほんとは優秀なメイドさんだったんだ…。
「お嬢様。どうか今回のことでライラにお気を悪くされないでください。ライラはお嬢様のことを…」
「わかってるわ…昔の話を聞かなくても、ライラは私のために言ってくれたってことくらい」
でも…だからってあの子をそのままにはできないわ…どうすれば……あ。
「そうだわ…これならライラも…」
「お嬢様?」
「リーシャ、ライラはどこにいるの?」
「え?おそらくメイドの宿舎に…」
「わかったわ!」
「あ!お嬢様!」
私は思いついたことと思っていたことを伝えるためにライラのところへ向かった。
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