女子力の高い僕は異世界でお菓子屋さんになりました

第三章

始まりの予感

私が授業とお料理教室の活動を始めて三ヶ月。
あれから10品ほど調理法や調味料、調理道具などを広めていき、今では家庭でも味付きの料理が増えてきている。
国管轄の調味料を売っているお店の売り上げを見たら飛ぶように売れているのだ。
私のお店にも未だにお客さんはいっぱいきてくれているし、なんだか調子がいいように感じる。

今日もお店での地獄タイム（お昼&おやつどき）を抜けて、三人で一息付いているところだった。

「…ん？なにか聞こえない？」

「え？なにがですか？」

「なんていうか、犬の鳴き声…みたいな？」

改めて耳をすまして聞いてみると、やっぱりちょうどお店の前あたりで数匹の犬の鳴き声や、うーとうなるような声が聞こえた。

「野良犬でしょうか？」

「ちょっと見てくるわ」

私は立ち上がって、入り口の扉を開けると、お店の前で3匹の犬が1匹の犬を襲っていた。

「あ、あなた達やめなさい！」

私が襲われている犬を助けようとすると、3匹は標的を私に変えたのか私の方を向いてグルルルと威嚇した。

「え？ちょ、そんな急に標的変えなくてもいいんじゃないかな…？」

助けようとしたものの、私はそうつぶやきながら後ずさりすると、逃すまいと犬が私に飛びかかってきた。
襲われると思ってギュッと目を瞑って身構えたが、痛みはなく、恐る恐る目を開けると、スプーンを持ったライラが私の前に立っていた。
どうやらスプーンで飛びかかってきた犬を弾き飛ばしたようだった。

「お嬢様に何をしてるんですか…犬っころ」

ライラの凄みに押されてか、犬達はどこかへ走り去った。
私は慌てて襲われていた犬のところへ駆け寄る。
見てすぐにわかるほど、その犬はボロボロだったので、すぐにお店の中へ入れた。
飲食店なので動物を入れるのはどうかなとも思ったけど、非常事態なのでノーカウント。
その犬はまだ子犬みたいで、傷のせいか息がなんだか薄く見えるし、私の『おまじないチャーム』を使うにしても食べ物を食べる余裕なんてなさそうだし…。

「ど、どうしよ…こんなに傷だらけで…この世界に獣医さんているのかな」

「お嬢様、落ち着いてください。私でよければ応急処置に多少の心得があります」

「リーシャぁ…」

こんな時こそ頼れるリーシャ！なんとか食べ物…ううん、飲み物とかでもいいから口にできるくらい回復してくれれば…。
リーシャが薬箱を取り出して、治療にとりかかった。