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ユルゲン・クリーガー
マイヤーの到着
しおりを挟む クリーガーが退却を決めて、その命令を部隊に伝えようとした時、見張りに就いていた隊員の一人がクリーガーの許へとやって来て報告をした。
「隊長、軍の駐屯地へ報告に行った者と一緒に、マイヤー副隊長の部隊が到着しました」
「マイヤーの部隊が?」
クリーガーは、予想外のことで少々驚いた。
元々、マイヤーの部隊はクリーガー達とは別の地域を捜索していた。
コバルスキーの部隊が怪物の襲撃を受け全滅した後、その生き残りがマイヤーの部隊にもそのことを伝えているはずだ。その後、マイヤーがどういう判断をしたかは不明だった。場合によっては、怪物の襲撃を受けていることも考えられたが、どうやら無事だったようだ。
クリーガーは早速、マイヤーの部隊の方へと向かった。
部隊の先頭にいたマイヤーが笑顔で近づいてきた。
「隊長殿、ご無事でしたか」
「ああ、君も無事で何より。コバルスキーの話は聞いているな?」
「もちろん。我々のところにも彼の部隊の者が全滅の旨を伝えに来たからね。我々は、そこで、一旦撤退をして最初の駐屯地まで戻ったんだよ」
「それは良かったよ。君らも怪物の襲撃を受けたのではと、危惧していた」
「こっちも隊長殿の事を心配していたよ。他の部隊も全て一旦駐屯地に戻って来ていたが、隊長殿たちだけが戻ってこなかったからね。隊長殿からの伝令が来るまで、怪物にやられてしまったものだと思っていたよ」
「そうか。そうなると、やられたのはコバルスキーの部隊だけのようだな。我々はコバルスキーの部隊が襲撃を受けた現場に向かい、その後、怪物に遭遇して戦闘になった」
「本当かい? 大丈夫だったのか?」
マイヤーは驚いて目を見開いた。
「二名死亡だ。やつは姿が見えない怪物で、炎を吐く。体の表面は固いようだ、弓の攻撃がほとんど効かなかった。強敵だ。ただ動きが鈍い」
「そうか。今はどこにいるのかわかっているのかい?」
「北東方向、ボールック山脈の方へと向かっていた。今から追跡すれば夕方までに追い付けると思うのだが…」
「では、追跡を」
「しかし、我々の部隊は疲労が激しい。一旦、駐屯地まで撤退しようと思ったところなのだ。さらに食料も残り少ない」
「食料なら、命令でそちらの分も運んできた。十日分の余分を皆に持たせてあるだ。おかげで荷物が重かったよ」
マイヤーはそう言って、いたずらっぽく笑って見せた。
「そうか…」
隊員たちの疲れも溜まっているようだから、駐屯地に戻って少し休ませたいと思っていたが、そうもいかないようだ。いや待てよ…。
クリーガーは少し考えてから、マイヤーに再び話しかけた。
「それで、帝国軍は?」
「いや、ここまで来たのは我々だけだ。面倒な仕事は我々にやらせたいみたいだな」
「なるほどな」
クリーガーは自分の胸のポケットから地図を取り出した。しばらく、それを眺めてから口を開いた。
「近くに村があるな。ここに一旦行き、そこを拠点にして追跡をしたいと思う」
現在地から半日ほど移動したところに小さな村がある。
自分の部隊をやはり、少し休ませたいという意図があった。
「怪物を見失わないかい?」
マイヤーが尋ねた。
「雪に足跡が残っているから、追跡は容易だろう。季節的にもう新たに雪が降ることはないだろうから、当面は足跡は残っているだろう。一日程度の遅れであればなんとか追いつけると思う」
クリーガーは村へ移動すると決めると全員に指示を出し、その場を後にし移動を開始した。
クリーガーは移動中、マイヤーの部隊に所属している自分の弟子であるクラクスとタウゼントシュタインに声を掛けた。
二人とも雪が残る足元の悪い荒れ地を移動する過酷な任務に疲れを感じているようだった。
クリーガーや彼の部隊も体力的、精神的にも疲れはピークに達していた。
「隊長、軍の駐屯地へ報告に行った者と一緒に、マイヤー副隊長の部隊が到着しました」
「マイヤーの部隊が?」
クリーガーは、予想外のことで少々驚いた。
元々、マイヤーの部隊はクリーガー達とは別の地域を捜索していた。
コバルスキーの部隊が怪物の襲撃を受け全滅した後、その生き残りがマイヤーの部隊にもそのことを伝えているはずだ。その後、マイヤーがどういう判断をしたかは不明だった。場合によっては、怪物の襲撃を受けていることも考えられたが、どうやら無事だったようだ。
クリーガーは早速、マイヤーの部隊の方へと向かった。
部隊の先頭にいたマイヤーが笑顔で近づいてきた。
「隊長殿、ご無事でしたか」
「ああ、君も無事で何より。コバルスキーの話は聞いているな?」
「もちろん。我々のところにも彼の部隊の者が全滅の旨を伝えに来たからね。我々は、そこで、一旦撤退をして最初の駐屯地まで戻ったんだよ」
「それは良かったよ。君らも怪物の襲撃を受けたのではと、危惧していた」
「こっちも隊長殿の事を心配していたよ。他の部隊も全て一旦駐屯地に戻って来ていたが、隊長殿たちだけが戻ってこなかったからね。隊長殿からの伝令が来るまで、怪物にやられてしまったものだと思っていたよ」
「そうか。そうなると、やられたのはコバルスキーの部隊だけのようだな。我々はコバルスキーの部隊が襲撃を受けた現場に向かい、その後、怪物に遭遇して戦闘になった」
「本当かい? 大丈夫だったのか?」
マイヤーは驚いて目を見開いた。
「二名死亡だ。やつは姿が見えない怪物で、炎を吐く。体の表面は固いようだ、弓の攻撃がほとんど効かなかった。強敵だ。ただ動きが鈍い」
「そうか。今はどこにいるのかわかっているのかい?」
「北東方向、ボールック山脈の方へと向かっていた。今から追跡すれば夕方までに追い付けると思うのだが…」
「では、追跡を」
「しかし、我々の部隊は疲労が激しい。一旦、駐屯地まで撤退しようと思ったところなのだ。さらに食料も残り少ない」
「食料なら、命令でそちらの分も運んできた。十日分の余分を皆に持たせてあるだ。おかげで荷物が重かったよ」
マイヤーはそう言って、いたずらっぽく笑って見せた。
「そうか…」
隊員たちの疲れも溜まっているようだから、駐屯地に戻って少し休ませたいと思っていたが、そうもいかないようだ。いや待てよ…。
クリーガーは少し考えてから、マイヤーに再び話しかけた。
「それで、帝国軍は?」
「いや、ここまで来たのは我々だけだ。面倒な仕事は我々にやらせたいみたいだな」
「なるほどな」
クリーガーは自分の胸のポケットから地図を取り出した。しばらく、それを眺めてから口を開いた。
「近くに村があるな。ここに一旦行き、そこを拠点にして追跡をしたいと思う」
現在地から半日ほど移動したところに小さな村がある。
自分の部隊をやはり、少し休ませたいという意図があった。
「怪物を見失わないかい?」
マイヤーが尋ねた。
「雪に足跡が残っているから、追跡は容易だろう。季節的にもう新たに雪が降ることはないだろうから、当面は足跡は残っているだろう。一日程度の遅れであればなんとか追いつけると思う」
クリーガーは村へ移動すると決めると全員に指示を出し、その場を後にし移動を開始した。
クリーガーは移動中、マイヤーの部隊に所属している自分の弟子であるクラクスとタウゼントシュタインに声を掛けた。
二人とも雪が残る足元の悪い荒れ地を移動する過酷な任務に疲れを感じているようだった。
クリーガーや彼の部隊も体力的、精神的にも疲れはピークに達していた。
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