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アグネッタ・ヴィクストレーム
任務
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傭兵部隊の隊長ユルゲン・クリーガーは部隊から数名を率い、帝国軍の兵士たちと共に数カ月ぶりに旧共和国の過激派のアジトを襲撃の為に出動していた。
任務は過激派を捕らえ、こちら側には死者は出ず、比較的短時間で終了した。その後、部隊は城に戻り解散した。
そして、クリーガーは帝国軍第五旅団の司令官でズーデハーフェンシュタットの統治責任者のボリス・ルツコイ旅団長に呼び出されていたので、彼の執務室に向かった。
クリーガーは扉をノックし、中には入るように促された。扉を開け敬礼をする。
「ユルゲン・クリーガー、参上しました」
クリーガーは部屋の中に入ると扉を閉める。
「まあ座ってくれ」
「失礼します」
ルツコイに椅子に座るように手で促されたので、執務机の前の椅子に座った。
それを確認するとルツコイは、ゆっくり話し出した。
「任務ご苦労だった。今日は、どんな塩梅だったのかね?」
「いつものように難しい任務ではありませんでした。テログループのアジトを急襲そ、中にメンバーが九名おりましたが、戦闘の末、四名を捕えました。五名は死亡です。正式な報告書は後日、提出いたします」
「そうか、わかった。ご苦労だった」
ルツコイはそれを聞いて満足そうにして、椅子の背もたれに体重を掛けた。
そして、彼は話題を変える。
「それで、急に呼びつけてしまったのは、別件で新しい任務だ。元々の帝国の領内で、ある事件があった。場所は、ズードヴァイフェル川の下流の北側にあるナザッド・ボールック高原だ。ダーガリンダ王国の国境からも近い」
ルツコイは部屋の左側の壁に掲げてある地図を指さして説明をする。
「少し前に、この高地で羊飼いが犠牲になる事件があった」
「羊飼いですか?」
「そうだ、帝国では数は少ないが羊を牧畜して生計を立てている人々がいる。それで、つい先日、ある羊飼いが何かに殺害されて遺体が発見された。これまでも羊が犠牲になることが数回あったのだが、人の犠牲が出たことで本格的に捜索をすることになった」
「何かに殺害されたと言われましたが、何かというのは、熊か狼のような野生動物で、その駆除という事ですか?」
「いや、どうやら羊飼いを殺害したのは、そう言った良く知られている動物ではないようなのだ。犠牲者や、これまで殺害された羊が居た周りには見たことのない足跡が残っていたそうだ。それはかなり大きな足跡で、熊や狼の物ではないのは間違いないという。その足跡から推測して、熊の十倍以上の大きさがあるようだ」
「十倍?!」
クリーガーは驚いて声を上げた。
「まさか地竜ですか?!」
「それはわからない。知っての通り、この大陸には地竜は居ないとされている。なので我々の知らない生物が生息しているのかもしれないということになった」
「そんな巨大な生物がこれまで発見されていないとは思えません」
「そうなのだが、その生物の由来も含めて調査をすることになった」
「なるほど。わかりました」
「現場から一番近い都市はオストハーフェンシュタット。そこから一週間もあれば現場に到着できる。しかし、捜索範囲が大きくなりそうなのだ。まず、オストハーフェンシュタットの第一旅団から兵が出動するのだが、街の治安維持のために三百名ばかりしか数を裂けない。そこで、我々第五旅団にも人員を出せと首都から命令が来た。そこで、こちらの旅団から百名。傭兵部隊は全員の二百名の合わせて三百名を出動させることにした。急になるが、明日、午前中に出発だ。その準備を頼む。指揮は副司令官のコバルスキーに任せることにしてある。彼の指示に従ってくれ」
「了解いたしました」
「今回は、相手の正体が不明なこともあって、少々危険な任務かもしれん、心してかかれ。君ならやれるだろう」
「わかりました」
クリーガーは立ち上がり敬礼をし、明日の準備のため早々に部屋を後にした。
任務は過激派を捕らえ、こちら側には死者は出ず、比較的短時間で終了した。その後、部隊は城に戻り解散した。
そして、クリーガーは帝国軍第五旅団の司令官でズーデハーフェンシュタットの統治責任者のボリス・ルツコイ旅団長に呼び出されていたので、彼の執務室に向かった。
クリーガーは扉をノックし、中には入るように促された。扉を開け敬礼をする。
「ユルゲン・クリーガー、参上しました」
クリーガーは部屋の中に入ると扉を閉める。
「まあ座ってくれ」
「失礼します」
ルツコイに椅子に座るように手で促されたので、執務机の前の椅子に座った。
それを確認するとルツコイは、ゆっくり話し出した。
「任務ご苦労だった。今日は、どんな塩梅だったのかね?」
「いつものように難しい任務ではありませんでした。テログループのアジトを急襲そ、中にメンバーが九名おりましたが、戦闘の末、四名を捕えました。五名は死亡です。正式な報告書は後日、提出いたします」
「そうか、わかった。ご苦労だった」
ルツコイはそれを聞いて満足そうにして、椅子の背もたれに体重を掛けた。
そして、彼は話題を変える。
「それで、急に呼びつけてしまったのは、別件で新しい任務だ。元々の帝国の領内で、ある事件があった。場所は、ズードヴァイフェル川の下流の北側にあるナザッド・ボールック高原だ。ダーガリンダ王国の国境からも近い」
ルツコイは部屋の左側の壁に掲げてある地図を指さして説明をする。
「少し前に、この高地で羊飼いが犠牲になる事件があった」
「羊飼いですか?」
「そうだ、帝国では数は少ないが羊を牧畜して生計を立てている人々がいる。それで、つい先日、ある羊飼いが何かに殺害されて遺体が発見された。これまでも羊が犠牲になることが数回あったのだが、人の犠牲が出たことで本格的に捜索をすることになった」
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「いや、どうやら羊飼いを殺害したのは、そう言った良く知られている動物ではないようなのだ。犠牲者や、これまで殺害された羊が居た周りには見たことのない足跡が残っていたそうだ。それはかなり大きな足跡で、熊や狼の物ではないのは間違いないという。その足跡から推測して、熊の十倍以上の大きさがあるようだ」
「十倍?!」
クリーガーは驚いて声を上げた。
「まさか地竜ですか?!」
「それはわからない。知っての通り、この大陸には地竜は居ないとされている。なので我々の知らない生物が生息しているのかもしれないということになった」
「そんな巨大な生物がこれまで発見されていないとは思えません」
「そうなのだが、その生物の由来も含めて調査をすることになった」
「なるほど。わかりました」
「現場から一番近い都市はオストハーフェンシュタット。そこから一週間もあれば現場に到着できる。しかし、捜索範囲が大きくなりそうなのだ。まず、オストハーフェンシュタットの第一旅団から兵が出動するのだが、街の治安維持のために三百名ばかりしか数を裂けない。そこで、我々第五旅団にも人員を出せと首都から命令が来た。そこで、こちらの旅団から百名。傭兵部隊は全員の二百名の合わせて三百名を出動させることにした。急になるが、明日、午前中に出発だ。その準備を頼む。指揮は副司令官のコバルスキーに任せることにしてある。彼の指示に従ってくれ」
「了解いたしました」
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