上 下
5 / 31
アグネッタ・ヴィクストレーム

任務

しおりを挟む
 傭兵部隊の隊長ユルゲン・クリーガーは部隊から数名を率い、帝国軍の兵士たちと共に数カ月ぶりに旧共和国の過激派のアジトを襲撃の為に出動していた。
 任務は過激派を捕らえ、こちら側には死者は出ず、比較的短時間で終了した。その後、部隊は城に戻り解散した。
 そして、クリーガーは帝国軍第五旅団の司令官でズーデハーフェンシュタットの統治責任者のボリス・ルツコイ旅団長に呼び出されていたので、彼の執務室に向かった。

 クリーガーは扉をノックし、中には入るように促された。扉を開け敬礼をする。
「ユルゲン・クリーガー、参上しました」
 クリーガーは部屋の中に入ると扉を閉める。
「まあ座ってくれ」
「失礼します」
 ルツコイに椅子に座るように手で促されたので、執務机の前の椅子に座った。
 それを確認するとルツコイは、ゆっくり話し出した。
「任務ご苦労だった。今日は、どんな塩梅だったのかね?」
「いつものように難しい任務ではありませんでした。テログループのアジトを急襲そ、中にメンバーが九名おりましたが、戦闘の末、四名を捕えました。五名は死亡です。正式な報告書は後日、提出いたします」
「そうか、わかった。ご苦労だった」
 ルツコイはそれを聞いて満足そうにして、椅子の背もたれに体重を掛けた。
 そして、彼は話題を変える。
「それで、急に呼びつけてしまったのは、別件で新しい任務だ。元々の帝国の領内で、ある事件があった。場所は、ズードヴァイフェル川の下流の北側にあるナザッド・ボールック高原だ。ダーガリンダ王国の国境からも近い」
 ルツコイは部屋の左側の壁に掲げてある地図を指さして説明をする。
「少し前に、この高地で羊飼いが犠牲になる事件があった」
「羊飼いですか?」
「そうだ、帝国では数は少ないが羊を牧畜して生計を立てている人々がいる。それで、つい先日、ある羊飼いが何かに殺害されて遺体が発見された。これまでも羊が犠牲になることが数回あったのだが、人の犠牲が出たことで本格的に捜索をすることになった」
「何かに殺害されたと言われましたが、何かというのは、熊か狼のような野生動物で、その駆除という事ですか?」
「いや、どうやら羊飼いを殺害したのは、そう言った良く知られている動物ではないようなのだ。犠牲者や、これまで殺害された羊が居た周りには見たことのない足跡が残っていたそうだ。それはかなり大きな足跡で、熊や狼の物ではないのは間違いないという。その足跡から推測して、熊の十倍以上の大きさがあるようだ」
「十倍?!」
 クリーガーは驚いて声を上げた。
「まさか地竜ですか?!」
「それはわからない。知っての通り、この大陸には地竜は居ないとされている。なので我々の知らない生物が生息しているのかもしれないということになった」
「そんな巨大な生物がこれまで発見されていないとは思えません」
「そうなのだが、その生物の由来も含めて調査をすることになった」
「なるほど。わかりました」
「現場から一番近い都市はオストハーフェンシュタット。そこから一週間もあれば現場に到着できる。しかし、捜索範囲が大きくなりそうなのだ。まず、オストハーフェンシュタットの第一旅団から兵が出動するのだが、街の治安維持のために三百名ばかりしか数を裂けない。そこで、我々第五旅団にも人員を出せと首都から命令が来た。そこで、こちらの旅団から百名。傭兵部隊は全員の二百名の合わせて三百名を出動させることにした。急になるが、明日、午前中に出発だ。その準備を頼む。指揮は副司令官のコバルスキーに任せることにしてある。彼の指示に従ってくれ」
「了解いたしました」
「今回は、相手の正体が不明なこともあって、少々危険な任務かもしれん、心してかかれ。君ならやれるだろう」
「わかりました」
 クリーガーは立ち上がり敬礼をし、明日の準備のため早々に部屋を後にした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

【R18】散らされて

月島れいわ
恋愛
風邪を引いて寝ていた夜。 いきなり黒い袋を頭に被せられ四肢を拘束された。 抵抗する間もなく躰を開かされた鞠花。 絶望の果てに待っていたのは更なる絶望だった……

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

淫らなお姫様とイケメン騎士達のエロスな夜伽物語

瀬能なつ
恋愛
17才になった皇女サーシャは、国のしきたりに従い、6人の騎士たちを従えて、遥か彼方の霊峰へと旅立ちます。 長い道中、姫を警護する騎士たちの体力を回復する方法は、ズバリ、キスとH! 途中、魔物に襲われたり、姫の寵愛を競い合う騎士たちの様々な恋の駆け引きもあったりと、お姫様の旅はなかなか困難なのです?!

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

処理中です...