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第13話・決着
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私とルツコイの話し合いから、さらに二時間ほど経った。時刻は既に夕方となっている。
巡洋艦が用意されローデンベルガーが潜伏していた倉庫から一番近い桟橋につけられた。船内に潜伏する兵士達五十名は、巡洋艦が出発した海軍の桟橋から、すでに乗船していた。ルツコイからは彼らは船内のいくつかの倉庫に別れて隠れていると聞いた。
私は再び倉庫内に入りローデンベルガーに逃走用の船が来たと伝えた。私が先に倉庫を出て、その後に続いてローデンベルガーはメリナに剣を突き付けたまま、倉庫から出て来た。
それを、大勢の帝国軍兵士と傭兵部隊員が遠巻きに見つめる。
ローデンベルガーは用心深くあたりに注意する。そして、大声で叫んだ。
「もっと後ろに下がれ!」
ルツコイが手で下がるように合図をする。それに合わせて兵士達はゆっくりと後ろに下がる。
私、ローデンベルガー、メリナはゆっくりと巡洋艦が居る桟橋に向かう。
そして、舷梯を登り艦の甲板に上がった。
「出航しろ!」
ローデンベルガーは早速、指示を出した。水兵たちは指示に従う。
帆が上がると、艦はゆっくりと進みだした。海は穏やかで、船体の揺れは小さかった。
冷たい風が顔を撫でる。
ローデンベルガーは甲板の端に立って海を見つめていた。メリナは奴から少し離れて立っていた。私はさらに離れて、甲板の真ん中あたりで、ローデンベルガーの様子を覗っていた。
今のローデンベルガーとメリナの位置ほど離れていれば、メリナが私の魔術の巻き添えになることはないだろう。
しばらく船が海上を進むと、船内に潜伏していた兵士達が一斉に甲板まで上がってきた。
ローデンベルガーは、それに気付いて振り返った。
その瞬間、私は奴に手のひらを向け、火炎魔術で火の玉を放った。火の玉は奴の体に命中し、大きな炎が全身を包む。
ローデンベルガーは大きな悲鳴を上げて、甲板の端の柵から身を乗り出し、海へ転落した。
私は急いで、駆け寄り海面を見つめた。陽が落ちてきたこともあって、海面は少々暗く、奴の体を見つけることができなかった。それに続いて兵士達も甲板の端に集まり、海面を見るが、誰の目にもローデンベルガーの姿を見つけることができなかった。
現金輸送馬車襲撃から始まった、ローデンベルガーの絡んだ事件は、あっけない幕切れとなった。
巡洋艦はそこで引き返し、出発した桟橋まで戻って行く。
次は、メリナをダクシニーの船まで連れて行き、彼女を引き渡さなければならないが、それは、ルツコイが主導する。
翌日の朝、改めて別の船が用意され、メリナはそれに乗ってダクシニーの船に向かうことになった。
私も許可を得て港に出向き、メリナが船に乗り込む前に、最後の言葉を交わすことが出来た。
「メリナ、妙な事件に巻き込まれて大変だったね」
私が声を掛けると、メリナは深く頭を下げた。
「いえ。クリーガーさん達には、とても良くしてもらいました。感謝しかありません」
「さようなら。元気で」
「さようなら」
メリナは再び頭を下げた。
彼女は人質になっている間も、ずっと落ち着いていた。ひょっとしたら、彼女の故郷はシンドゥ王国との戦いで、もっと酷い目に合っていたのかもしれない。また、王族としての品行だろうか、とても十六歳とは思えなかった。
そして、約一か月と少しの間で、彼女の言葉もだいぶ流暢になっていた。
今後、彼女はダクシニーでは人質としての生活が待っている。それが、どのようなものかは私には想像し難い。
彼女が舷梯を登り船に乗り込み、その船が出航して沖合で小さく見えるシンドゥ王国の船のところにたどり付くまで、私は見送った。
巡洋艦が用意されローデンベルガーが潜伏していた倉庫から一番近い桟橋につけられた。船内に潜伏する兵士達五十名は、巡洋艦が出発した海軍の桟橋から、すでに乗船していた。ルツコイからは彼らは船内のいくつかの倉庫に別れて隠れていると聞いた。
私は再び倉庫内に入りローデンベルガーに逃走用の船が来たと伝えた。私が先に倉庫を出て、その後に続いてローデンベルガーはメリナに剣を突き付けたまま、倉庫から出て来た。
それを、大勢の帝国軍兵士と傭兵部隊員が遠巻きに見つめる。
ローデンベルガーは用心深くあたりに注意する。そして、大声で叫んだ。
「もっと後ろに下がれ!」
ルツコイが手で下がるように合図をする。それに合わせて兵士達はゆっくりと後ろに下がる。
私、ローデンベルガー、メリナはゆっくりと巡洋艦が居る桟橋に向かう。
そして、舷梯を登り艦の甲板に上がった。
「出航しろ!」
ローデンベルガーは早速、指示を出した。水兵たちは指示に従う。
帆が上がると、艦はゆっくりと進みだした。海は穏やかで、船体の揺れは小さかった。
冷たい風が顔を撫でる。
ローデンベルガーは甲板の端に立って海を見つめていた。メリナは奴から少し離れて立っていた。私はさらに離れて、甲板の真ん中あたりで、ローデンベルガーの様子を覗っていた。
今のローデンベルガーとメリナの位置ほど離れていれば、メリナが私の魔術の巻き添えになることはないだろう。
しばらく船が海上を進むと、船内に潜伏していた兵士達が一斉に甲板まで上がってきた。
ローデンベルガーは、それに気付いて振り返った。
その瞬間、私は奴に手のひらを向け、火炎魔術で火の玉を放った。火の玉は奴の体に命中し、大きな炎が全身を包む。
ローデンベルガーは大きな悲鳴を上げて、甲板の端の柵から身を乗り出し、海へ転落した。
私は急いで、駆け寄り海面を見つめた。陽が落ちてきたこともあって、海面は少々暗く、奴の体を見つけることができなかった。それに続いて兵士達も甲板の端に集まり、海面を見るが、誰の目にもローデンベルガーの姿を見つけることができなかった。
現金輸送馬車襲撃から始まった、ローデンベルガーの絡んだ事件は、あっけない幕切れとなった。
巡洋艦はそこで引き返し、出発した桟橋まで戻って行く。
次は、メリナをダクシニーの船まで連れて行き、彼女を引き渡さなければならないが、それは、ルツコイが主導する。
翌日の朝、改めて別の船が用意され、メリナはそれに乗ってダクシニーの船に向かうことになった。
私も許可を得て港に出向き、メリナが船に乗り込む前に、最後の言葉を交わすことが出来た。
「メリナ、妙な事件に巻き込まれて大変だったね」
私が声を掛けると、メリナは深く頭を下げた。
「いえ。クリーガーさん達には、とても良くしてもらいました。感謝しかありません」
「さようなら。元気で」
「さようなら」
メリナは再び頭を下げた。
彼女は人質になっている間も、ずっと落ち着いていた。ひょっとしたら、彼女の故郷はシンドゥ王国との戦いで、もっと酷い目に合っていたのかもしれない。また、王族としての品行だろうか、とても十六歳とは思えなかった。
そして、約一か月と少しの間で、彼女の言葉もだいぶ流暢になっていた。
今後、彼女はダクシニーでは人質としての生活が待っている。それが、どのようなものかは私には想像し難い。
彼女が舷梯を登り船に乗り込み、その船が出航して沖合で小さく見えるシンドゥ王国の船のところにたどり付くまで、私は見送った。
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