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第11話 幻覚
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数日後、すべての救出作業が終わった。傭兵部隊が出動するきっかけとなった最初の落盤事故では十数名の生存者が救出された。何日も食事も水もなかったのでかなり衰弱していたが、彼らの多くが命に別条はないとのことだった。
また、ソフィアが巻き込まれた落盤では、岩の下敷きとなっていたベラト大尉始め他の王国軍兵士数名が遺体となって発見された。
帝国軍と傭兵部隊には作業中に受けた擦り傷程度のけが人が数名あったが、全員無事である。そして、救出作業が終結したので、帝国軍と傭兵部隊は撤収し帰国のための準備を始めた。
坑道の中にいた正体不明の怪物について、唯一の目撃者となったソフィアは王国軍、帝国軍両方からの事情聴衆があった。しかし、ソフィアの記憶からの情報は乏しく、その正体についてはわからないままだった。
あれは一体何だったのか?
これまで発見されていない新種の生物か、それとも何者かが魔術で作ったものか。
帝国軍と傭兵部隊としては、もう撤退するので怪物については調査することもないだろう。後は何かあっても王国内の問題だ。
怪物による兵士の犠牲者を数名出した王国は、一旦は坑道の入り口を埋めて厳重に塞ぎ、怪物が入り口付近から出てこないように、また民間人が誤って坑道に入らないようにするとのことだった。
クリーガーたちはダーガリンダ王国の首都ジェーハールセリエの港に戻り、海軍の船に乗り込んだ。ソフィアは来た時と同じフリゲート艦の “ウンビジーバー号” に乗り込む。後はズーデハーフェンシュタットまで四日間の航海。その間、兵士、隊員たちは特にやることもないので休暇となった。
ジェーハールセリエから出航して二日目。すっかり体調が戻っていたソフィアは甲板に上った。天気も良く潮風が気持ち良い。
ソフィアは甲板の端で海を眺めているザービンコワを見つけたので声を掛けた。
「ザービンコワさん」
ザービンコワは振り返って挨拶を返した。
「あら、ソフィア。もう体調は大丈夫そうね」
「はい。すっかり」
「それは良かったわ」
ソフィアは気になっていたことを尋ねた。
「私の見たものが本当に夢だと思いますか?」
「そうね、夢じゃないとしたら…」
ザービンコワはしばらく考えるように少しうつむいた。そして、答えた。
「後、考えられるのは空気が少ない状況下での幻覚ね。それに、潜水魔術を掛けられていたというから、それの作用もあったのかもしれないわね」
「幻覚……、ですか?」
「あくまで可能性だけど」
「幻覚」
ソフィアは、その言葉をもう一度繰り返した。そうなのかもしれない。しかし、もうそれを確認する術もない。
炎と稲妻で怪物を一匹を倒したが、あの怪物との戦いも幻覚だったのだろうか。
一人坑道に残っていたと思ったクリーガーは、坑道に入っておらず何事もなかったというので、疑問はあったがソフィアはこの話はもう忘れることにした。
そして、剣と魔術をもっと磨こうと思った。
また、ソフィアが巻き込まれた落盤では、岩の下敷きとなっていたベラト大尉始め他の王国軍兵士数名が遺体となって発見された。
帝国軍と傭兵部隊には作業中に受けた擦り傷程度のけが人が数名あったが、全員無事である。そして、救出作業が終結したので、帝国軍と傭兵部隊は撤収し帰国のための準備を始めた。
坑道の中にいた正体不明の怪物について、唯一の目撃者となったソフィアは王国軍、帝国軍両方からの事情聴衆があった。しかし、ソフィアの記憶からの情報は乏しく、その正体についてはわからないままだった。
あれは一体何だったのか?
これまで発見されていない新種の生物か、それとも何者かが魔術で作ったものか。
帝国軍と傭兵部隊としては、もう撤退するので怪物については調査することもないだろう。後は何かあっても王国内の問題だ。
怪物による兵士の犠牲者を数名出した王国は、一旦は坑道の入り口を埋めて厳重に塞ぎ、怪物が入り口付近から出てこないように、また民間人が誤って坑道に入らないようにするとのことだった。
クリーガーたちはダーガリンダ王国の首都ジェーハールセリエの港に戻り、海軍の船に乗り込んだ。ソフィアは来た時と同じフリゲート艦の “ウンビジーバー号” に乗り込む。後はズーデハーフェンシュタットまで四日間の航海。その間、兵士、隊員たちは特にやることもないので休暇となった。
ジェーハールセリエから出航して二日目。すっかり体調が戻っていたソフィアは甲板に上った。天気も良く潮風が気持ち良い。
ソフィアは甲板の端で海を眺めているザービンコワを見つけたので声を掛けた。
「ザービンコワさん」
ザービンコワは振り返って挨拶を返した。
「あら、ソフィア。もう体調は大丈夫そうね」
「はい。すっかり」
「それは良かったわ」
ソフィアは気になっていたことを尋ねた。
「私の見たものが本当に夢だと思いますか?」
「そうね、夢じゃないとしたら…」
ザービンコワはしばらく考えるように少しうつむいた。そして、答えた。
「後、考えられるのは空気が少ない状況下での幻覚ね。それに、潜水魔術を掛けられていたというから、それの作用もあったのかもしれないわね」
「幻覚……、ですか?」
「あくまで可能性だけど」
「幻覚」
ソフィアは、その言葉をもう一度繰り返した。そうなのかもしれない。しかし、もうそれを確認する術もない。
炎と稲妻で怪物を一匹を倒したが、あの怪物との戦いも幻覚だったのだろうか。
一人坑道に残っていたと思ったクリーガーは、坑道に入っておらず何事もなかったというので、疑問はあったがソフィアはこの話はもう忘れることにした。
そして、剣と魔術をもっと磨こうと思った。
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