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第10話 夢
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ソフィアが目を開けると、テントの天井らしきものが目に入った。
ということは坑道の外へ出られたのか? 自分は助かったのか?
自分は確か、坑道内で倒れて…。その後の記憶がなかった。最後の微かな記憶では人の声がした。その声の主は、おそらく坑夫か兵士で、彼らに助けられたのだろう。
ソフィアはハッと目を見開いた。そうだ、クリーガーが怪物たちを足止めするために一人坑道内に残ったのだ。それを思い出し、ソフィアは身を起こした。
それに気が付いて軍医のザービンコワが声を掛けた。
「気が付いた?」
ザービンコワは微笑んで話しかけて来た。
それに対し、ソフィアは深刻な顔で大声を出した。
「大変です! 師が! 隊長が坑道の中に!」
それを聞いてザービンコワは再び微笑んで言った。しかし、目には困惑の色が見えた。
「何、言っているの? クリーガー隊長ならずっと外にいるわよ」
「えっ?!」
ソフィアは驚いて再び声を上げた。
「いえ、師は私を怪物から助けるために坑道に残りました!」
「落ち着いて。夢でも見たのかしら? 彼は本当に外にいるわ。何だったら呼んで来るからちょっと待っていて」
ザービンコワはそう言うとテントの外へ出て行った。
ソフィアがテントの中を見回すと、他にけが人が数人寝かされていた。医師や看護師も数名いて、患者の手当をしている。
ソフィア自身も地面に布を敷かれただけの上に寝かされていたことに気が付いた。
しばらくするとザービンコワがテントに戻って来た。その後を続いてクリーガーがテントに入って来た。
ソフィアは、クリーガーの姿を見て驚きのあまり声を発せずにいた。
クリーガーはソフィアに近づいて横になっている彼女の傍らにしゃがんで話しかけた。
「大丈夫か?」
ソフィアは声を絞り出した。
「師こそ、大丈夫だったのですね」
「私か? 私なら問題無いが」
そのやり取りにザービンコワが割り込んだ。
「あなたがソフィアを怪物から助けるために坑道の中に残ったと言っているのよ」
クリーガーはそれを聞いて驚いたようにザービンコワの方を向いた。そして、再びソフィアの方へ向き直った。
「私は指揮を執るためずっと外にいた。坑道の中には、今回ほとんど入っていない」
「そんな! じゃあ、私が坑道であった師は一体どういう事ですか?」
ザービンコワもしゃがみこんでソフィアを見つめて言った。
「多分、夢を見たのよ」
「夢?!」
ソフィアはその言葉を聞いて驚く。しかし、確かにクリーガーは坑道内に居た。
しかし、クリーガーは外で指揮を執っていたというし、本当にそういう事なのだろう。ソフィアは少々納得がいかなかったが、その場は「そうですか」と言って収めた。
「もう少し休めばいいわ」
ザービンコワが言う。
ソフィアは再び思い出してハッとなった。
「そういえば、落盤でコークマッツさんが下敷きになっています」
それにクリーガーが答える。
「君が巻き込まれた落盤は今、救出作業を行っている。その生存者の確認には、まだ数日かかるそうだ。ちなみに最初の落盤で閉じ込められていた坑夫たちの生存者は、先ほど全員救出されている」
「そうですか」
「まあ、休みなさい」
そう言うとクリーガーは立ち上がりテントを出て行った。ザービンコワも立ち上がって他のけが人の治療のため忙しくし始めた。
ソフィアは納得のいかないこともあったが、もう一度休もうと思い、横になって目を閉じて再び眠りに就いた。
ということは坑道の外へ出られたのか? 自分は助かったのか?
自分は確か、坑道内で倒れて…。その後の記憶がなかった。最後の微かな記憶では人の声がした。その声の主は、おそらく坑夫か兵士で、彼らに助けられたのだろう。
ソフィアはハッと目を見開いた。そうだ、クリーガーが怪物たちを足止めするために一人坑道内に残ったのだ。それを思い出し、ソフィアは身を起こした。
それに気が付いて軍医のザービンコワが声を掛けた。
「気が付いた?」
ザービンコワは微笑んで話しかけて来た。
それに対し、ソフィアは深刻な顔で大声を出した。
「大変です! 師が! 隊長が坑道の中に!」
それを聞いてザービンコワは再び微笑んで言った。しかし、目には困惑の色が見えた。
「何、言っているの? クリーガー隊長ならずっと外にいるわよ」
「えっ?!」
ソフィアは驚いて再び声を上げた。
「いえ、師は私を怪物から助けるために坑道に残りました!」
「落ち着いて。夢でも見たのかしら? 彼は本当に外にいるわ。何だったら呼んで来るからちょっと待っていて」
ザービンコワはそう言うとテントの外へ出て行った。
ソフィアがテントの中を見回すと、他にけが人が数人寝かされていた。医師や看護師も数名いて、患者の手当をしている。
ソフィア自身も地面に布を敷かれただけの上に寝かされていたことに気が付いた。
しばらくするとザービンコワがテントに戻って来た。その後を続いてクリーガーがテントに入って来た。
ソフィアは、クリーガーの姿を見て驚きのあまり声を発せずにいた。
クリーガーはソフィアに近づいて横になっている彼女の傍らにしゃがんで話しかけた。
「大丈夫か?」
ソフィアは声を絞り出した。
「師こそ、大丈夫だったのですね」
「私か? 私なら問題無いが」
そのやり取りにザービンコワが割り込んだ。
「あなたがソフィアを怪物から助けるために坑道の中に残ったと言っているのよ」
クリーガーはそれを聞いて驚いたようにザービンコワの方を向いた。そして、再びソフィアの方へ向き直った。
「私は指揮を執るためずっと外にいた。坑道の中には、今回ほとんど入っていない」
「そんな! じゃあ、私が坑道であった師は一体どういう事ですか?」
ザービンコワもしゃがみこんでソフィアを見つめて言った。
「多分、夢を見たのよ」
「夢?!」
ソフィアはその言葉を聞いて驚く。しかし、確かにクリーガーは坑道内に居た。
しかし、クリーガーは外で指揮を執っていたというし、本当にそういう事なのだろう。ソフィアは少々納得がいかなかったが、その場は「そうですか」と言って収めた。
「もう少し休めばいいわ」
ザービンコワが言う。
ソフィアは再び思い出してハッとなった。
「そういえば、落盤でコークマッツさんが下敷きになっています」
それにクリーガーが答える。
「君が巻き込まれた落盤は今、救出作業を行っている。その生存者の確認には、まだ数日かかるそうだ。ちなみに最初の落盤で閉じ込められていた坑夫たちの生存者は、先ほど全員救出されている」
「そうですか」
「まあ、休みなさい」
そう言うとクリーガーは立ち上がりテントを出て行った。ザービンコワも立ち上がって他のけが人の治療のため忙しくし始めた。
ソフィアは納得のいかないこともあったが、もう一度休もうと思い、横になって目を閉じて再び眠りに就いた。
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