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第8話 遭遇
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ソフィアは目を覚ました。松明もとっくに消え、坑道内は真っ暗闇だ。
頭がくらくらする。さらに、少し息苦しい。これはもしかして、酸欠の影響だろうか。
ということは、潜水魔術の効果が切れてしまったということか。
時間の感覚がなくなっているため、閉じ込められるきっかけになった落盤からどれぐらい経ったのかわからなかったが、潜水魔術の効果は一日と聞いた。ということはもうすでに二十四時間程度は経っているということか。
不意にソフィアは、何かの気配をすぐ近くに感じた。
「誰?!」
火炎魔術で手のひらに炎を灯した。
「驚かせてしまったね」
炎の灯りで照らし出されたその姿と聞きなれた声とソフィアは驚いた。
「師!」
嬉しさと安堵のあまり大声を発した。
ソフィアの師であるユルゲン・クリーガーが坑道の反対側の壁際に座っているのがわかった。
クリーガーは立ち上がりながら話しかける
「怪我はないか?」
「はい」
ソフィアも立ち上がりながら質問をする。
「なぜここに?」
「君を捜しに来たんだよ。しかし、怪物が掘った穴のせいで地図がほとんど役に立たなくなっている。さらに、怪物が案引きもうろついているようだ。そんな状況で無事に君に会えたのはついていたよ」
ソフィアは安堵もあって、ふらついて壁に手を当てて身体を支えた。やはり、酸欠の影響かめまいがする上に、目がかすんでいる。
手のひらの炎も消えた。魔術を使う集中力もさほど長くは続かない。
「地図が役に立たないのであれば、出口まではどうやって行けば?」
ソフィアは不安そうに質問した。暗闇の中、クリーガーは話をする。
「ソフィア。先日、出動前に城で言ったことを覚えているか?」
「何でしょうか?」
「指に唾を付ければ風の流れを感じとれる。そうすれば出口の方向がわかる、ということだ」
「そういえば…。思い出しました」
「やってみなさい」
「はい」
ソフィアは言われたままに人差し指をなめた後、それを前に掲げた。
すると微かに風を感じ取ることが出来た。そちらが進むべき方向だ。
ソフィアは再び火炎魔術で手のひらに火を灯し言った。
「わかりました、こちらの方向です」
「よし。先を急ごう」
クリーガーは用心のため剣を抜いて歩き始めた。ソフィアはその後に続く。
しかし、ソフィアはしばらく歩くと息苦しくなって立ち止まった。そして、手のひらの炎も消える。
「潜水魔術の効果が…、切れてしまって…」
息が詰まって、声も途切れ途切れにしか発することができない。
「仕方ない。無理せずゆっくり行こう」
クリーガーの声が前の方からする。
「休んではどうだ?」
「はい」
ソフィアはそう言うと力なくその場にしゃがみこんだ。
「私が助けを呼びに言ってもいいのだが、そんな状態に君をこの場に一人にするわけにはいかない。怪物に襲われたら、とても対処できないだろう」
クリーガーは言葉を続ける。
「私は潜水魔術を掛けてもらい、まだその効果があるようだ。しかし、私自身は潜水魔術を使うことができない。君の苦しさを止めてやることができなくて申し訳ないが」
「いえ…、気にしないで…下さい」
ソフィアは何とか言葉を発した。クリーガーはその声の様子から彼女の身体を案じて言う。
「もう、あまり話すな」
ソフィアはその言葉に甘えて黙り込んで、言われるままにしばらく休むことにした。
辺りが静かになると唸り声が微かに聞こえた。坑道内での反響の度合いからかなり遠くではあるが怪物がいるらしい。
ソフィアの状態では怪物に襲われたときには、とてもではないが対応ができない。しかし、元“深蒼の騎士”で相当な手練れであるクリーガーであれば怪物の二、三匹ぐらい簡単に倒すことができるであろう。おかけで、ここは安心して休むことができた。
このようにして、休んでは進み、休んでは進みをくりかえり坑道内を二人は進んで行った。
頭がくらくらする。さらに、少し息苦しい。これはもしかして、酸欠の影響だろうか。
ということは、潜水魔術の効果が切れてしまったということか。
時間の感覚がなくなっているため、閉じ込められるきっかけになった落盤からどれぐらい経ったのかわからなかったが、潜水魔術の効果は一日と聞いた。ということはもうすでに二十四時間程度は経っているということか。
不意にソフィアは、何かの気配をすぐ近くに感じた。
「誰?!」
火炎魔術で手のひらに炎を灯した。
「驚かせてしまったね」
炎の灯りで照らし出されたその姿と聞きなれた声とソフィアは驚いた。
「師!」
嬉しさと安堵のあまり大声を発した。
ソフィアの師であるユルゲン・クリーガーが坑道の反対側の壁際に座っているのがわかった。
クリーガーは立ち上がりながら話しかける
「怪我はないか?」
「はい」
ソフィアも立ち上がりながら質問をする。
「なぜここに?」
「君を捜しに来たんだよ。しかし、怪物が掘った穴のせいで地図がほとんど役に立たなくなっている。さらに、怪物が案引きもうろついているようだ。そんな状況で無事に君に会えたのはついていたよ」
ソフィアは安堵もあって、ふらついて壁に手を当てて身体を支えた。やはり、酸欠の影響かめまいがする上に、目がかすんでいる。
手のひらの炎も消えた。魔術を使う集中力もさほど長くは続かない。
「地図が役に立たないのであれば、出口まではどうやって行けば?」
ソフィアは不安そうに質問した。暗闇の中、クリーガーは話をする。
「ソフィア。先日、出動前に城で言ったことを覚えているか?」
「何でしょうか?」
「指に唾を付ければ風の流れを感じとれる。そうすれば出口の方向がわかる、ということだ」
「そういえば…。思い出しました」
「やってみなさい」
「はい」
ソフィアは言われたままに人差し指をなめた後、それを前に掲げた。
すると微かに風を感じ取ることが出来た。そちらが進むべき方向だ。
ソフィアは再び火炎魔術で手のひらに火を灯し言った。
「わかりました、こちらの方向です」
「よし。先を急ごう」
クリーガーは用心のため剣を抜いて歩き始めた。ソフィアはその後に続く。
しかし、ソフィアはしばらく歩くと息苦しくなって立ち止まった。そして、手のひらの炎も消える。
「潜水魔術の効果が…、切れてしまって…」
息が詰まって、声も途切れ途切れにしか発することができない。
「仕方ない。無理せずゆっくり行こう」
クリーガーの声が前の方からする。
「休んではどうだ?」
「はい」
ソフィアはそう言うと力なくその場にしゃがみこんだ。
「私が助けを呼びに言ってもいいのだが、そんな状態に君をこの場に一人にするわけにはいかない。怪物に襲われたら、とても対処できないだろう」
クリーガーは言葉を続ける。
「私は潜水魔術を掛けてもらい、まだその効果があるようだ。しかし、私自身は潜水魔術を使うことができない。君の苦しさを止めてやることができなくて申し訳ないが」
「いえ…、気にしないで…下さい」
ソフィアは何とか言葉を発した。クリーガーはその声の様子から彼女の身体を案じて言う。
「もう、あまり話すな」
ソフィアはその言葉に甘えて黙り込んで、言われるままにしばらく休むことにした。
辺りが静かになると唸り声が微かに聞こえた。坑道内での反響の度合いからかなり遠くではあるが怪物がいるらしい。
ソフィアの状態では怪物に襲われたときには、とてもではないが対応ができない。しかし、元“深蒼の騎士”で相当な手練れであるクリーガーであれば怪物の二、三匹ぐらい簡単に倒すことができるであろう。おかけで、ここは安心して休むことができた。
このようにして、休んでは進み、休んでは進みをくりかえり坑道内を二人は進んで行った。
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