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軍法会議
証人 マクシム・ブルガコフ
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裁判長クレスチンスキーは言った。
「検事どうぞ」。
検事クラコフは最初の証人を呼んだ。
「マクシム・ブルガコフ第四旅団副長」。
前の証人席に進み出で証人席に座ったのは、モルデン駐留帝国軍の司令官で第四旅団の副長のブルガコフだ。彼が証人席に座ったのを確認して、書記官はブルガコフの肩書を読み上げた。
「証人、マクシム・ブルガコフ。帝国軍第四旅団副長。モルデン駐留軍副司令官。賞罰、ブラミア名誉勲章、武勇勲章」。
検事のクラコフは立ち上がり、証人席に近づきブルガコフに質問した。
「早速ですが、ブルガコフ副長。クリーガー隊長がモルデンに訪れ、偽の命令書を手渡したのはいつのことですか?」
「四月十八日です。時間までは正確に覚えていませんが、おそらく午後の遅い時間です」。
「命令書の内容はどういったものでしたか」。
「四月十八日付で、クリーガー隊長が第四旅団長に就任し、モルデンの統治も任せるというような内容でした」。
「あなたは、その命令書に疑いを持ちませんでしたか?」
「はい。命令書の様式は正式な物と同じでしたし、皇帝のサインも本物と思いました」。
「命令書の内容についてはどうですか?」
「旅団長の異動も良くあることなので、特に疑問を持ちませんでした。特に今回は公国との戦闘があり、ソローキン旅団長が戦死、キーシン旅団長も捕虜になったということで、急ぎの暫時的な異動かとも思いました。また、クリーガー隊長は、以前から旅団長の地位の打診を受けているという噂もありましたので疑問に思いませんでした」。
「クリーガー隊長からその命令書を受け取ってから、あなたはどうしましたか?」
「クリーガー隊長の指示で、彼の就任の訓示を行うために兵士を集めました。その後、街に出ている兵士をすべて城に戻せとの命令を受けたので、その通りにしました」。
「その結果、街はどうなりましたか?」
「住民の暴動は一旦は治まったようです」。
「なるほど。その後は?」
「その後の街の様子はわかりません。反乱分子に拘束され牢に入れられていたので」。
「反乱分子がなぜ城にいたのですか?」
「わかりませんが、おそらくクリーガー隊長が招き入れたものと思います」。
「なるほど、ありがとうございます」。
弁護人のムラブイェフは立ち上がり言った。
「私からも質問したいのですが、よろしいでしょうか」。
裁判官は言った
「よろしい」。
弁護人は証人席のブルガコフに歩み寄った。
「では、私からの質問です」。
弁護人は一度咳払いをしてから尋ねた。
「モルデンで牢にいた期間は?」
「大体一週間です」。
「その後の経緯を教えてください」。
「ルツコイ旅団長がモルデンの反乱分子と交渉した結果、私と他の上級士官は牢から出され、旅団の兵士達も全員モルデンを出ることができました」。
私には、それは初耳だった。ということは、モルデンは今でも共和国派が掌握しているということなのだろうか。遊撃部隊のメンバーも、弟子たちも、無事に生き残っているかもしれない。
私は軽く安堵のため息をついた。
弁護人は質問を続ける。
「あなたと他の士官達、兵士達に死傷者、負傷者はおりましたか?」
「いえ、おりません」。
「それだけで結構です。ありがとうございます」。
そういうと、弁護人は後ろに下がり席に戻り座った。
ブルガコフも、立ち上がり法廷の後ろの証人達が控える席に戻った。
「検事どうぞ」。
検事クラコフは最初の証人を呼んだ。
「マクシム・ブルガコフ第四旅団副長」。
前の証人席に進み出で証人席に座ったのは、モルデン駐留帝国軍の司令官で第四旅団の副長のブルガコフだ。彼が証人席に座ったのを確認して、書記官はブルガコフの肩書を読み上げた。
「証人、マクシム・ブルガコフ。帝国軍第四旅団副長。モルデン駐留軍副司令官。賞罰、ブラミア名誉勲章、武勇勲章」。
検事のクラコフは立ち上がり、証人席に近づきブルガコフに質問した。
「早速ですが、ブルガコフ副長。クリーガー隊長がモルデンに訪れ、偽の命令書を手渡したのはいつのことですか?」
「四月十八日です。時間までは正確に覚えていませんが、おそらく午後の遅い時間です」。
「命令書の内容はどういったものでしたか」。
「四月十八日付で、クリーガー隊長が第四旅団長に就任し、モルデンの統治も任せるというような内容でした」。
「あなたは、その命令書に疑いを持ちませんでしたか?」
「はい。命令書の様式は正式な物と同じでしたし、皇帝のサインも本物と思いました」。
「命令書の内容についてはどうですか?」
「旅団長の異動も良くあることなので、特に疑問を持ちませんでした。特に今回は公国との戦闘があり、ソローキン旅団長が戦死、キーシン旅団長も捕虜になったということで、急ぎの暫時的な異動かとも思いました。また、クリーガー隊長は、以前から旅団長の地位の打診を受けているという噂もありましたので疑問に思いませんでした」。
「クリーガー隊長からその命令書を受け取ってから、あなたはどうしましたか?」
「クリーガー隊長の指示で、彼の就任の訓示を行うために兵士を集めました。その後、街に出ている兵士をすべて城に戻せとの命令を受けたので、その通りにしました」。
「その結果、街はどうなりましたか?」
「住民の暴動は一旦は治まったようです」。
「なるほど。その後は?」
「その後の街の様子はわかりません。反乱分子に拘束され牢に入れられていたので」。
「反乱分子がなぜ城にいたのですか?」
「わかりませんが、おそらくクリーガー隊長が招き入れたものと思います」。
「なるほど、ありがとうございます」。
弁護人のムラブイェフは立ち上がり言った。
「私からも質問したいのですが、よろしいでしょうか」。
裁判官は言った
「よろしい」。
弁護人は証人席のブルガコフに歩み寄った。
「では、私からの質問です」。
弁護人は一度咳払いをしてから尋ねた。
「モルデンで牢にいた期間は?」
「大体一週間です」。
「その後の経緯を教えてください」。
「ルツコイ旅団長がモルデンの反乱分子と交渉した結果、私と他の上級士官は牢から出され、旅団の兵士達も全員モルデンを出ることができました」。
私には、それは初耳だった。ということは、モルデンは今でも共和国派が掌握しているということなのだろうか。遊撃部隊のメンバーも、弟子たちも、無事に生き残っているかもしれない。
私は軽く安堵のため息をついた。
弁護人は質問を続ける。
「あなたと他の士官達、兵士達に死傷者、負傷者はおりましたか?」
「いえ、おりません」。
「それだけで結構です。ありがとうございます」。
そういうと、弁護人は後ろに下がり席に戻り座った。
ブルガコフも、立ち上がり法廷の後ろの証人達が控える席に戻った。
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