色彩の大陸2~隠された策謀

谷島修一

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共和国派の内紛

疑惑

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 大陸歴1658年4月21日・モルデン

 プロブストは昨日のコフとの話し合いの通り、義勇兵を取りまとめるため、遊撃部隊のメンバーをそれぞれ仕事を分担させた。
 現状、義勇兵達は城や街壁近くの詰所など分散して待機している。それぞれに遊撃部隊の誰を当てるかを考える。
 東側、北東側、北側の街壁の門は、帝国軍が攻め込んでくる可能性が最も高く、その場合、激しい戦いとなるだろう。遊撃部隊でも腕の立つオットーの部隊を東側の門に、ソフィアの部隊に北側の門を任せることにした。そして、最も攻撃される可能性が高い北東の門はプロブスト自身が守る。

 遊撃部隊にはオレガはじめ数名の帝国出身者が居た。コフは彼女らが裏切ることを恐れて、共和国派から外すように命令し、オレガたちは城に表面上は“待機命令”ということで遊撃部隊から外され、監視されることになった。
 すでに城にはブルガコフはじめ帝国軍の士官と帝国軍兵士が多数捕らわれている、これもなんとかしないといけない。何かのきっかけで反乱を起こされては収拾がつかなくなるだろう。
 コフは帝国軍兵士達を少しずつ城から出し、別の場所に移動させ始めた。
 プロブストの案で帝国軍兵士達には、帝国軍がモルデンから撤収するという作り話を伝えた。兵士達には動揺が走ったようだが、クリーガーがまだ旅団長だと信じている者がほどんどであったため、皇帝の命令であると伝えれば比較的すんなりといった。
 帝国軍兵士達は城から少しずつ出され、一時的に街の集会所などに集められて監視されることになった。

 ◇◇◇

 遊撃部隊のメンバーが義勇兵の指揮を執り始めて数日、少しは指揮系統が確立してきたであろうか。そんな中、コフから一部の義勇兵に命令が下った。
 モルデンの北西側の城門に兵を集め、いくつかの部隊を街から出して待機しろとの命令だった。

 プロブストはその命令を聞いて疑問を感じ、すぐにコフに会いに城門から城に向かった。
 プロブストは作戦室でコフに会うと懸念を話した。
「最初、遊撃部隊はベルグブリックに向かうように命令を受けたと聞きました。遊撃部隊が我々に寝返ったとなると、別の軍を派遣していることが考えられます。そうすると、ベルグブリックの共和国派は少ない。帝国軍に撃破されてしまうでしょう」そして、プロブストは提案する。「今のうちに、ベルグブリックへ援軍を出してみては?」
「いや、ここで部隊を分けるのは危険だ。帝国軍がまだモルデンの近くにいる。ここを守るための兵力を少なくしたくない。なので、警戒だけを強めたいと思って、ベルグブリックの街道に部隊を展開させた」
「なるほど、わかりました。しかし、部隊に命令を出すときは前もって私にも相談をしていただければ」
 プロブストは指揮官として任命されたので、全軍に対して責任があると感じていた。コフは共和国派の指導者ではあるが、指揮官の頭を越えて軍に命令を出すコフのやり方には、少々疑問を抱かざるを得ない。

 そして、その翌日。
 プロブストの耳に、北西側の城門付近で戦闘があったと情報が入った。
 ベルグブリックを経由した帝国軍が攻め込んできたのかとも考えたが、クリーガーがルツコイの陣に投降して命令違反をしたのが伝わったのは、一週間ほど前だ。それが首都に伝わり新たな帝国軍をベルグブリックに向かわせたとして、さらに六日掛かる。そして、その帝国軍がベルグブリックの共和国派を殲滅して、モルデンへ向かうのには、どんなに早くても、さらに二、三日はかかるだろう。
 いくらなんなんでも到着が数日早すぎる。

 この情報を確認するため、プロブストは直接この目で戦闘を確認したいと考え、受け持つ北東の門から馬を駆って北西の門へ向かった。
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