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共和国派の内紛
モルデンへ
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大陸歴1658年4月25日・ベルグブリック
夕刻。
ホルツの命令を受けて、ブロンベルクの部隊がポズナーノーチニク山脈の
方からベルグブリックに戻って来た。
ブロンベルクはホルツに近づいて敬礼し、話しかけてきた。
「一体、どうしたことですか?」
その質問に、ホルツは憮然として答えた。
「クーラが居なくなった。それで、クーラが言う、帝国軍が向かっていると言うの情報が嘘かもしれないと疑っている」
「確かに、こちらの偵察の報告では帝国軍の姿は一切見つけることができませんでした」
「モルデンで何かが起こっているようだ。それを確かめるために全軍でモルデンに向かう」
ホルツは改めて号令を掛け、全軍を整列させ進軍命令を出した。
出発が当初から二日遅れた分、昼夜、急いでモルデンに向かうことにした。
進軍中、ホルツはこの一件について考えを巡らせていた。
しばらく考えるとある考えが浮かんだ。
コフが共和国派の主導権を握るために、我々を足止めさせられているとしたら?
ホルツは、コフという人物には直接会ったことはない。共和国が滅亡してモルデンの近くに潜伏してからは、街に出入りは不可能だったので、伝令をつかって何とか情報を交換していた。その程度なので、その人となりは良くは知らない。
ようやく、モルデンが帝国軍の支配から脱したというのに、もう仲間内で主導権の争いをしようというのだろうか?
しかし、これは最悪の事態で、この時は一旦この考えを捨てることにした。
◇◇◇
翌日の夜、ホルツ達はモルデンまで後数時間というところまで到着した。
ホルツは暗がりの中、街道の少し先に松明の灯りが見えた。
どうやら、どこかの部隊が待機しているようだ。
ホルツ達はそれが帝国軍のである可能性も鑑みて、一旦全軍を停止させた。
そして、偵察を出し前方の部隊が、どこの軍かを調べさせる。
しばらくして偵察が戻って来た。帝国軍に似ている制服を着ている者が数名見えたという。しかし、帝国軍か共和国派であるかどうかも、はっきりしないとのことだ。
帝国軍に似た制服というのが気になった。
ホルツは、もう一度偵察を出させた。今度は可能であれば陣の中に潜入し様子を探れと命令した。
そして、ホルツ達は全軍に街道から逸れて、草原の中で待機するように命令を出した。
明け方、偵察に出した者達が戻って来た。
帝国軍に似た制服を着ている者が、この部隊を指揮しているとのことだ。
しかし、ほとんどの兵士が義勇兵のようで正規の軍では無いようだ。陣の中の規律もさほど整っていなく、警戒も緩いという。
ホルツは部隊をブロンベルクに任せ、少数で前方の部隊に近づくことにした。
辺りも明るくなったので、前方の部隊全貌は見えて来た。部隊は二千程度の兵力というのが分かった。こちらの倍だ。
ホルツと数名は馬を進めた。
すると、ホルツ達に気が付いた前方の待機していた部隊が慌てたように動きだした。武器を取って戦闘準備を整えている。
「まずいな」
ホルツは慌てて馬を返した。
その様子に気がついたブロンベルク率いる深蒼の騎士たちが、ホルツ達を助けるために前に出て前方の部隊に迫る。
深蒼の騎士たちが、けん制するために火炎魔術で火の玉を放つ。
前方の部隊はそれに対応できず、すぐに後方に下がっていく。どうやら魔術による攻撃を予測をしていなかったようだ。
帝国軍に似ている制服を着ている者達数名が、剣を抜いて迫って来た。
それをブロンベルクたちは火の玉を放つ。火の玉が命中し彼らは炎に包まれ落馬して絶命した。
他の兵士達は蜘蛛の子を散らすように逃げ去った。
「あっけないな」
ホルツがつぶやく。
それを聞いていたブロンベルクが答える
「彼らも義勇兵のようです。モルデンの住民なのでは?」
「どうもそのようだな」
そうなるとやはりコフが何かを企んでいるのか?
ホルツは困惑するばかりだった。
夕刻。
ホルツの命令を受けて、ブロンベルクの部隊がポズナーノーチニク山脈の
方からベルグブリックに戻って来た。
ブロンベルクはホルツに近づいて敬礼し、話しかけてきた。
「一体、どうしたことですか?」
その質問に、ホルツは憮然として答えた。
「クーラが居なくなった。それで、クーラが言う、帝国軍が向かっていると言うの情報が嘘かもしれないと疑っている」
「確かに、こちらの偵察の報告では帝国軍の姿は一切見つけることができませんでした」
「モルデンで何かが起こっているようだ。それを確かめるために全軍でモルデンに向かう」
ホルツは改めて号令を掛け、全軍を整列させ進軍命令を出した。
出発が当初から二日遅れた分、昼夜、急いでモルデンに向かうことにした。
進軍中、ホルツはこの一件について考えを巡らせていた。
しばらく考えるとある考えが浮かんだ。
コフが共和国派の主導権を握るために、我々を足止めさせられているとしたら?
ホルツは、コフという人物には直接会ったことはない。共和国が滅亡してモルデンの近くに潜伏してからは、街に出入りは不可能だったので、伝令をつかって何とか情報を交換していた。その程度なので、その人となりは良くは知らない。
ようやく、モルデンが帝国軍の支配から脱したというのに、もう仲間内で主導権の争いをしようというのだろうか?
しかし、これは最悪の事態で、この時は一旦この考えを捨てることにした。
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ホルツは暗がりの中、街道の少し先に松明の灯りが見えた。
どうやら、どこかの部隊が待機しているようだ。
ホルツ達はそれが帝国軍のである可能性も鑑みて、一旦全軍を停止させた。
そして、偵察を出し前方の部隊が、どこの軍かを調べさせる。
しばらくして偵察が戻って来た。帝国軍に似ている制服を着ている者が数名見えたという。しかし、帝国軍か共和国派であるかどうかも、はっきりしないとのことだ。
帝国軍に似た制服というのが気になった。
ホルツは、もう一度偵察を出させた。今度は可能であれば陣の中に潜入し様子を探れと命令した。
そして、ホルツ達は全軍に街道から逸れて、草原の中で待機するように命令を出した。
明け方、偵察に出した者達が戻って来た。
帝国軍に似た制服を着ている者が、この部隊を指揮しているとのことだ。
しかし、ほとんどの兵士が義勇兵のようで正規の軍では無いようだ。陣の中の規律もさほど整っていなく、警戒も緩いという。
ホルツは部隊をブロンベルクに任せ、少数で前方の部隊に近づくことにした。
辺りも明るくなったので、前方の部隊全貌は見えて来た。部隊は二千程度の兵力というのが分かった。こちらの倍だ。
ホルツと数名は馬を進めた。
すると、ホルツ達に気が付いた前方の待機していた部隊が慌てたように動きだした。武器を取って戦闘準備を整えている。
「まずいな」
ホルツは慌てて馬を返した。
その様子に気がついたブロンベルク率いる深蒼の騎士たちが、ホルツ達を助けるために前に出て前方の部隊に迫る。
深蒼の騎士たちが、けん制するために火炎魔術で火の玉を放つ。
前方の部隊はそれに対応できず、すぐに後方に下がっていく。どうやら魔術による攻撃を予測をしていなかったようだ。
帝国軍に似ている制服を着ている者達数名が、剣を抜いて迫って来た。
それをブロンベルクたちは火の玉を放つ。火の玉が命中し彼らは炎に包まれ落馬して絶命した。
他の兵士達は蜘蛛の子を散らすように逃げ去った。
「あっけないな」
ホルツがつぶやく。
それを聞いていたブロンベルクが答える
「彼らも義勇兵のようです。モルデンの住民なのでは?」
「どうもそのようだな」
そうなるとやはりコフが何かを企んでいるのか?
ホルツは困惑するばかりだった。
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