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共和国再興
ルツコイの苦悩
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大陸歴1658年4月21日・モルデン近郊
ルツコイ率いる第五旅団とイェプツシェンコ率いる第四旅団は、モルデンまで一時間程度の距離の場所の平原で野営していた。
いま、モルデンは共和国派の支配下にあるという。街から立ち上がっていた煙の筋は幾分か少なくなり、騒擾は昨日に比べると治まりつつあるようだ。
昨日、投降したクリーガーは捕虜として拘束した。
ルツコイは彼とは傭兵部隊を設立させて以来三年の付き合いで、良い友人だと思っていた。個人的にも一緒に食事したり、酒を飲んだりするような交友があった。さらに、彼は“帝国の英雄”と呼ばれ、“チューリン事件”や、つい先日のソローキンの排除の作戦でも目覚ましい活躍をしていた。そんな彼が、まさか共和国派だったとは。彼は今では完全に帝国に忠誠を払っていたと思っていた。ルツコイは自分の見通しの甘さを痛感した。
しかし、それをいつまでも悔やんでいても仕方がない。いくつもやらなければいけないことがある。
まずは、モルデンが反乱分子の手の落ちたこととの報告とモルデンに攻め込むのかどうか、そして、クリーガーの処遇をどうするか、これら判断は陛下に委ねることにし、お伺いを立てるための伝令を首都に向け出発させた。
次に、モルデンの街の中の様子を確認することにし、偵察を早朝に出しておいた。目の前に展開していた遊撃部隊は、昨日の日没時にモルデンに戻って行ったので、街壁の外側であれば偵察を出すのは難しいことではない。しかし、偵察は街壁の外からでは内部の細かい状況は分からないだろう。
モルデンにいる反乱軍の人数はどれぐらいなのかは不明だ。ここの住民はイグナユグ戦争で帝国軍によってひどい目にあっていたので、帝国への反感は特に強い。住民も一緒に抵抗すれば、モルデンの攻略は簡単にはいかないだろう。
クリーガーの話が本当とすれば、帝国軍は城の中にいるという。場合によっては、軍を解放し合流する。そうすれば、一万以上の勢力になる。あとは反乱分子の兵力如何だが、状況によってはモルデンを奪還できるかもしれない。その判断をするには陛下からの命令を待つしかない。
元々自分が駐留していたズーデハーフェンシュタットの様子が心配だが、ここで足止めされているので何もできることがない。スミルノワが向かっているオストハーフェンシュタットはどうだろうか。彼女らは明日には到着するはずだが、あそこも共和国派の手に落ちていたら。クリーガーの言う通り、もう旧共和国領内の反乱の鎮圧は無理なのかもしれないと感じていた。
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