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共和国再興
戦略
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大陸歴1658年4月19日・ヤチメゴロド近郊
早朝、私とオットー、コフとその仲間数人が、馬屋の前に集まった。
「おはようございます」。
「まずいですね」。
「何がですか?」
「その制服ですよ」。
コフは私の制服を指さした。
「遊撃部隊の制服は帝国軍の制服と似ています。お二人が市民に帝国軍の関係者と思われてしまうと、通してくれない可能性があります」。
「なるほどそうか」。
私とオットーは一旦部屋に戻り、制服から私服に着替えた。
「では参りましょう」。
我々は馬にまたがり、城を出発する。
住民達が城に入らないように、城門を開けコフ達が住民を制止する。私とオットーは馬を進めた。コフが前に進み出る。
「街中でも私が先導します」。
街中では市民が騒ぎ続けている。
一晩中燃えていたのか、あちこちで火が上がっている。帝国軍兵士が詰所として使っていた建物が焼き討ちにあっているようだ。
通りの市民たちを避けながら通りを進む。
我々は、街壁を抜け、遊撃部隊と合流するため馬を速めた。
夕刻、我々はヤチメゴロドに到着した。
「遊撃部隊はこの付近に来ている頃だろう。旅団もだ。注意して郊外を捜索してみよう」。
ヤチメゴロドの郊外の見通しがきく小高い丘までやって来た。
はるか先に旅団が接近してくるのが見えた。遊撃部隊の姿は見えない。
プロブストも旅団に見つからないように注意しているだろうから、旅団の近くにはいないだろう。私とオットーは遊撃部隊を探すことにした。旅団に見つからないように回り込んで付近を捜索したところ、遊撃部隊の歩哨と遭遇することができた。
歩哨の案内で遊撃部隊の野営地に到着し、プロブストの居るテントに入った。
プロブストは私とオットーを見て喜びを隠せないでいた。
「クリーガー隊長、ご無事でしたか。クラクス副隊長も」。
「モルデンの方は、おおむね上手くいっていいる。帝国軍兵士達は私が旅団長だと思っている。しかし、住民たちは街が解放されたことで、喜びで大騒ぎになっている。住民を城に入れないようにはしているが、軍を指揮して城の外に出すのは不可能だ。ルツコイとイェブツシェンコの旅団が、モルデンの近くまでに来れば街の異変に気付くだろう。そうなると、彼らは住民の鎮圧に出るかもしれない。それを止めるために、我々が彼らをモルデンに到着する前に足止めさせる」。
「二百人で六千人を足止めするのですか?」
「いや、違う。我々の部隊を、ルツコイ達の目の前で展開はするが、戦いはしない」。
「では、どうやって?」
「ルツコイと話して説得する。そして、皇帝も説得するつもりだ」。
「説得できるのですか?」
「ルツコイのことは、三年の付き合いだから彼の事は良くわかる。それに皇帝の説得するのも考えがあるので、私に任せてほしい」。
「しかし、ルツコイはともかく、もはや皇帝に会うことはできないでしょう」。
「そうだ。そこで考えたんだが、私は一人でルツコイの陣に向かい、投降しようと思う」。
それを聞いて、オットーとプロブストは非常に驚いて声を上げた。
「投降ですって?!」
「師、一人にそんなことはさせられません!」
オットーが声を上げた。
私は続ける。
「そうでもしないと、皇帝に会える可能性は無い」。
「しかし…」。
オットーとプロブストは何か言おうとしたが、私は遮った。
「私には考えがある、任せてほしい」。
そういうと、二人はその場は黙った。
私は改めて命令を発する。
「明日の早朝、出発する。急いで進軍し、ルツコイ達の旅団よりも先にモルデンに到着し、彼らを待ち構える」。
早朝、私とオットー、コフとその仲間数人が、馬屋の前に集まった。
「おはようございます」。
「まずいですね」。
「何がですか?」
「その制服ですよ」。
コフは私の制服を指さした。
「遊撃部隊の制服は帝国軍の制服と似ています。お二人が市民に帝国軍の関係者と思われてしまうと、通してくれない可能性があります」。
「なるほどそうか」。
私とオットーは一旦部屋に戻り、制服から私服に着替えた。
「では参りましょう」。
我々は馬にまたがり、城を出発する。
住民達が城に入らないように、城門を開けコフ達が住民を制止する。私とオットーは馬を進めた。コフが前に進み出る。
「街中でも私が先導します」。
街中では市民が騒ぎ続けている。
一晩中燃えていたのか、あちこちで火が上がっている。帝国軍兵士が詰所として使っていた建物が焼き討ちにあっているようだ。
通りの市民たちを避けながら通りを進む。
我々は、街壁を抜け、遊撃部隊と合流するため馬を速めた。
夕刻、我々はヤチメゴロドに到着した。
「遊撃部隊はこの付近に来ている頃だろう。旅団もだ。注意して郊外を捜索してみよう」。
ヤチメゴロドの郊外の見通しがきく小高い丘までやって来た。
はるか先に旅団が接近してくるのが見えた。遊撃部隊の姿は見えない。
プロブストも旅団に見つからないように注意しているだろうから、旅団の近くにはいないだろう。私とオットーは遊撃部隊を探すことにした。旅団に見つからないように回り込んで付近を捜索したところ、遊撃部隊の歩哨と遭遇することができた。
歩哨の案内で遊撃部隊の野営地に到着し、プロブストの居るテントに入った。
プロブストは私とオットーを見て喜びを隠せないでいた。
「クリーガー隊長、ご無事でしたか。クラクス副隊長も」。
「モルデンの方は、おおむね上手くいっていいる。帝国軍兵士達は私が旅団長だと思っている。しかし、住民たちは街が解放されたことで、喜びで大騒ぎになっている。住民を城に入れないようにはしているが、軍を指揮して城の外に出すのは不可能だ。ルツコイとイェブツシェンコの旅団が、モルデンの近くまでに来れば街の異変に気付くだろう。そうなると、彼らは住民の鎮圧に出るかもしれない。それを止めるために、我々が彼らをモルデンに到着する前に足止めさせる」。
「二百人で六千人を足止めするのですか?」
「いや、違う。我々の部隊を、ルツコイ達の目の前で展開はするが、戦いはしない」。
「では、どうやって?」
「ルツコイと話して説得する。そして、皇帝も説得するつもりだ」。
「説得できるのですか?」
「ルツコイのことは、三年の付き合いだから彼の事は良くわかる。それに皇帝の説得するのも考えがあるので、私に任せてほしい」。
「しかし、ルツコイはともかく、もはや皇帝に会うことはできないでしょう」。
「そうだ。そこで考えたんだが、私は一人でルツコイの陣に向かい、投降しようと思う」。
それを聞いて、オットーとプロブストは非常に驚いて声を上げた。
「投降ですって?!」
「師、一人にそんなことはさせられません!」
オットーが声を上げた。
私は続ける。
「そうでもしないと、皇帝に会える可能性は無い」。
「しかし…」。
オットーとプロブストは何か言おうとしたが、私は遮った。
「私には考えがある、任せてほしい」。
そういうと、二人はその場は黙った。
私は改めて命令を発する。
「明日の早朝、出発する。急いで進軍し、ルツコイ達の旅団よりも先にモルデンに到着し、彼らを待ち構える」。
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