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共和国再興
モルデン掌握2
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大陸歴1658年4月18日・旧共和国モルデン
私は、ブルガコフに言って、街の通りで市民の監視を続けている兵士達を全員引き上げさせた。次に、帝国軍の兵士をできるだけ多く城の中の広場に集める様に言った。
私の司令官就任の挨拶をするためだ。もちろん、これは偽の就任の挨拶だ。
まずは、兵士達の私が指揮官だと思わせる必要がある。
夜もやや遅い時間となってしまったが、事は早く進めた方が良い。城の中庭の四千五百名近い兵士が集まった。
集まった兵士たちに対し、私が第四旅団長となったと宣言した。
私が、旅団長就任を打診されていることは多くの兵士達の耳にも入っていたので、彼らにさほど動揺はなかったようだ。
私は、兵士達には命令があるまで、待機するように伝え解散させた。
次に上級士官を会議室に全員集めるように言った。
会議室にブルガコフを含め上級士官五名が集まった。
私の合図でオットーとコフを始めとする共和国派が二十名ばかり部屋に入ってきた。
「これはどうしたことですか?」
ブルガコフは驚いて立ち上がった。
「これよりモルデンは共和国派の支配下となります。申し訳ありませんが、しばらくあなた方を拘束します」。
「何だと?! クリーガー旅団長、裏切ったのか?!」。
ブルガコフは抵抗しようとしたが、すぐにコフ達に押さえつけられた。共和国派の者たちに両脇から押さえつけられて連れて行かれた。
ここまでの首尾は上々だ。
次の問題は、こちらに向かっている本来の旅団長イェプツシェンコ率いる旅団と、そして、モルデンを経由してズーデハーフェンシュタットへ向かうルツコイの旅団だ。その二つの旅団は、おそらくほぼ同時にモルデンの近くに到着するだろう。
合わせて六千の兵力だ。モルデンに残っている兵力は五千、モルデンにいる共和国派は五百程度、合わせて五千五百。
兵士達が、上級士官達がいない異変に気付くのはそう遅くはないだろう。そうなった時、モルデンの兵士達全員が私の指令に従うかどうかは分からない。もし、兵士達のほとんどが私に従ったとしても、相対するルツコイは機知に富む戦略家だ。こちらには用兵のできる者はいないと考えると、ほぼ同数の戦いではおそらくこちらには勝ち目はないだろう。
私は考えを巡らせ一つの案が浮かんだ。そして、それを実行するためにオットーを呼んだ。ブルガコフたちを牢に入れたあと会議室に戻って来たオットーに言った。
「我々は明日、遊撃部隊と合流し、モルデンへ急がせよう。ルツコイ達をモルデンの前で足止めさせる」。
「わかりました」。
私はコフに向き直る。
「コフさん。モルデンを任せても良いですか?」
「わかりました。任せてください」。
すでに外は暗くなっていた。
私は街を一望できる城の窓から外を見下ろした。
街中では市民が騒ぎ続けているようだ。あちこちで火が上がっているのが見える。この様子ではしばらくは騒ぎが治まらないだろう。
一般市民も帝国からの解放を喜んでいるようだ。モルデンは元々は共和国の都市だった。今でも住民のほとんどが元共和国の者達だ。帝国から抑圧されていたので三年ぶりの自由を謳歌している。
私は再びコフを呼んだ。
「住民を静かにさせることはできないか?」
「こうなっては、我々でも手が付けられません」。
「しばらくはこんな状態なのか」。
「おそらく、数日すれば治まるでしょう」。
私はため息をついた。自分がやったこととはいえ、この状況は良くない。
「住民を城の中に入れないようにしてくれ」。
「すでに手は打ってあります。城門は閉じてあります」。
「ありがとう」。
私は再び窓の外に目をやった。
私は、ブルガコフに言って、街の通りで市民の監視を続けている兵士達を全員引き上げさせた。次に、帝国軍の兵士をできるだけ多く城の中の広場に集める様に言った。
私の司令官就任の挨拶をするためだ。もちろん、これは偽の就任の挨拶だ。
まずは、兵士達の私が指揮官だと思わせる必要がある。
夜もやや遅い時間となってしまったが、事は早く進めた方が良い。城の中庭の四千五百名近い兵士が集まった。
集まった兵士たちに対し、私が第四旅団長となったと宣言した。
私が、旅団長就任を打診されていることは多くの兵士達の耳にも入っていたので、彼らにさほど動揺はなかったようだ。
私は、兵士達には命令があるまで、待機するように伝え解散させた。
次に上級士官を会議室に全員集めるように言った。
会議室にブルガコフを含め上級士官五名が集まった。
私の合図でオットーとコフを始めとする共和国派が二十名ばかり部屋に入ってきた。
「これはどうしたことですか?」
ブルガコフは驚いて立ち上がった。
「これよりモルデンは共和国派の支配下となります。申し訳ありませんが、しばらくあなた方を拘束します」。
「何だと?! クリーガー旅団長、裏切ったのか?!」。
ブルガコフは抵抗しようとしたが、すぐにコフ達に押さえつけられた。共和国派の者たちに両脇から押さえつけられて連れて行かれた。
ここまでの首尾は上々だ。
次の問題は、こちらに向かっている本来の旅団長イェプツシェンコ率いる旅団と、そして、モルデンを経由してズーデハーフェンシュタットへ向かうルツコイの旅団だ。その二つの旅団は、おそらくほぼ同時にモルデンの近くに到着するだろう。
合わせて六千の兵力だ。モルデンに残っている兵力は五千、モルデンにいる共和国派は五百程度、合わせて五千五百。
兵士達が、上級士官達がいない異変に気付くのはそう遅くはないだろう。そうなった時、モルデンの兵士達全員が私の指令に従うかどうかは分からない。もし、兵士達のほとんどが私に従ったとしても、相対するルツコイは機知に富む戦略家だ。こちらには用兵のできる者はいないと考えると、ほぼ同数の戦いではおそらくこちらには勝ち目はないだろう。
私は考えを巡らせ一つの案が浮かんだ。そして、それを実行するためにオットーを呼んだ。ブルガコフたちを牢に入れたあと会議室に戻って来たオットーに言った。
「我々は明日、遊撃部隊と合流し、モルデンへ急がせよう。ルツコイ達をモルデンの前で足止めさせる」。
「わかりました」。
私はコフに向き直る。
「コフさん。モルデンを任せても良いですか?」
「わかりました。任せてください」。
すでに外は暗くなっていた。
私は街を一望できる城の窓から外を見下ろした。
街中では市民が騒ぎ続けているようだ。あちこちで火が上がっているのが見える。この様子ではしばらくは騒ぎが治まらないだろう。
一般市民も帝国からの解放を喜んでいるようだ。モルデンは元々は共和国の都市だった。今でも住民のほとんどが元共和国の者達だ。帝国から抑圧されていたので三年ぶりの自由を謳歌している。
私は再びコフを呼んだ。
「住民を静かにさせることはできないか?」
「こうなっては、我々でも手が付けられません」。
「しばらくはこんな状態なのか」。
「おそらく、数日すれば治まるでしょう」。
私はため息をついた。自分がやったこととはいえ、この状況は良くない。
「住民を城の中に入れないようにしてくれ」。
「すでに手は打ってあります。城門は閉じてあります」。
「ありがとう」。
私は再び窓の外に目をやった。
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