色彩の大陸2~隠された策謀

谷島修一

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ソローキン反乱

進軍命令

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 大陸歴1658年3月27日・帝国首都アリーグラード

 私、ルツコイ、スミルノワ、イェブツシェンコの各司令官の四人は朝、皇帝イリヤに呼び出された。

 我々は謁見の間の前室で衛兵に武器を渡した。大きな扉を衛兵に開けてもらい謁見の間に入る。そして、広い謁見の間の皇帝が座る玉座の前に進んだ。隣には護衛のため親衛隊長のヴァーシャがいつもの様に立っていた。

 四人は跪いて挨拶する。それを見届けた後、皇帝は命令を発した。
「ルツコイ旅団長、スミルノワ旅団長、イェブツシェンコ旅団長、クリーガー隊長。新たに指令を与えます。これより部隊を率いて国境まで移動しなさい。ルツコイを総司令官とし、各旅団は合同で行動してください」。
 私は驚いた。ソローキンとキーシンの旅団が越境したことは、私の耳にも入っていた。
 しかし、国境まで移動するということは、公国軍が帝国軍を打ち破り、その上こちらへ侵攻しようとしている、ということなのか。

 私と同様の疑問を持ったのであろう、ルツコイが皇帝に質問をする。
「陛下、質問してもよろしいでしょうか?」
「構いません」。
「今の命令から推測すると、越境した軍が敗退しそうだということでしょうか?」
「いえ、違います」。
「すると、我々まで国境線に進軍する理由がわかりませんが」。
「国境では、まだ小規模な戦闘があっただけです。本格的な衝突は近くあるでしょう。その時に備えて後方支援に当たってください」。
「わかりました」。
「国境に到着したら、別の命令を指示するまで待機を」。
「御意」。
 我々は、少々疑問を抱きつつも謁見の間を後にした。

 ルツコイは不満そうに言った。
 「やはり、今回の作戦は裏があるな」。
 私も少し考えてみた。皇帝が何かを隠しているようだが、やはり何も思い浮かばない。
 「その“裏”が全く読めませんね」。
 「その内、明らかになるだろう」。

 我々四人は、それぞれの旅団、部隊に戻ると野営地をたたみ、ゆっくりと北へ向けて進軍を始めた。
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