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ソローキン反乱
公国首都・ソントルヴィレ
しおりを挟む 大陸歴1658年3月26日 テレ・ダ・ズール公国・首都ソントルヴィレ
帝国軍が国境を越えたことが伝わると、ソントルヴィレの首都の城の大公の間では大騒ぎとなっていた。
最高指導者である大公パトリック二世の前に、国防大臣はじめ各大臣が集まっていた。首相が落ち着きなく国防大臣に話しかける。
「今回の作戦は帝国が越境してくるということは聞いていなかった。一体どういうことだ」。
一方の国防大臣は落ち着いた風で答えた。
「なにか手違いがあったのでしょう」。
首相は言う。
「カタパルトが多数、破壊されたという。我々は罠にはめられたのではないか? まんまと帝国軍の侵略の機会を与えてしまったのではないのか?」
「私はそうは思いません」。
「何故だ?」
「何故ならば、今回はヴィット王国の魔術師三人も来ております。もし、帝国の目的が我が国への侵攻であれば、自分達に不利になる様なことはしなかったでしょう。今回は何かの行き違いだと思います」。
「帝国をそこまで信用していいのか?ヴィット王国の魔術師もグルだったら?」
首相は声を荒らげた。
首相と国防大臣の言い争いを見かねて、パトリック二世が言葉を挟んだ。
「とりあえず、帝国軍はもうしばらく様子を見よう」。
パトリック二世は傍にいた衛兵に声を掛ける。
「念のため、ヴィット王国の魔術師達には監視を付けておけ」。
衛兵が部屋を出て行くのを見て、パトリック二世は国防大臣に質問する。
「今後のわが軍はどうする?」
「司令官のトム・フルニエの作戦によると、軍は戦わず、一気に首都まで退却します」。
国防大臣はそう言うと、再び首相が声を荒らげた。
「なんですと!そのまま首都を攻撃されたらどうするんだ」。
「帝国軍がここまで来たとしたら、補給線が伸びます。途中にある村には今の季節、あまり食料の備蓄は多くはありません。我が国の領内で新たに食料の調達はほとんど無理です。ですので、時間をかけて首都を攻め続けることはできません。もし帝国軍が首都まで来ずに、退却すればそれはそれで構わないでしょう。そうなれば、機会を見て追撃します。私は司令官フルニエを信用しています。彼に任せれば大丈夫です」。
それを聞いてパトリック二世は言った。
「わかった国防長官と司令官を信用しよう。このまま、行く末を見守ることにする」。
首相は少々不満そうにしているが、パトリック二世の言葉を聞いて、それ以上は反論をすることしなかった。
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「何故だ?」
「何故ならば、今回はヴィット王国の魔術師三人も来ております。もし、帝国の目的が我が国への侵攻であれば、自分達に不利になる様なことはしなかったでしょう。今回は何かの行き違いだと思います」。
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「とりあえず、帝国軍はもうしばらく様子を見よう」。
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「今後のわが軍はどうする?」
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国防大臣はそう言うと、再び首相が声を荒らげた。
「なんですと!そのまま首都を攻撃されたらどうするんだ」。
「帝国軍がここまで来たとしたら、補給線が伸びます。途中にある村には今の季節、あまり食料の備蓄は多くはありません。我が国の領内で新たに食料の調達はほとんど無理です。ですので、時間をかけて首都を攻め続けることはできません。もし帝国軍が首都まで来ずに、退却すればそれはそれで構わないでしょう。そうなれば、機会を見て追撃します。私は司令官フルニエを信用しています。彼に任せれば大丈夫です」。
それを聞いてパトリック二世は言った。
「わかった国防長官と司令官を信用しよう。このまま、行く末を見守ることにする」。
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