27 / 75
ソローキン反乱
進軍
しおりを挟む
大陸歴1658年3月23日・帝国公国国境セベルー川付近
最前線。
帝国軍の第二、第三、第六旅団が陣を展開してから、早くも十日が経つ。
各旅団長であるデニス・ソローキン、セルゲイ・キーシン、アレクサンドル・ペシェハノフの三人は今日も早朝から指令室テントで会議を行なっていた。
国境付近にいる偵察部隊からの報告をペシェハノフが伝えるが、日々、公国軍に動きはない、というものが続いていた。
冷たい雨が降る日の多いこの季節。今日も小雨が陣地を冷やしていた。
ここに陣を張って十日、兵士たちの疲れもわずかではあるが見え始めた。
「先制攻撃を掛けようと思う」。
会議中にソローキンが突然そういった。
「一度、痛い目に合わせれば、こちらを侵攻しようなどと思わなくなるだろう」。
「このままでは兵士の士気も下がる一方だ。私も早めに決着を付けてしまいたいと思う」。
キーシンがそれに同意した。
「兵士の士気や疲れを気にするのであれば、少しずつ交代でプリブレジヌイで休息させてはどうでしょうか?」
ペシェハノフは提案した。
「それでは、根本的な解決になっていない。敵軍を国境から撤退させ、この状況を変えなければ、いつまでたっても我々はここで陣を張り続けないといけない」。
ソローキンはそう言った
たしかにその通りだが、ソローキンは開戦によって出る負傷者や死者については考えていない。
「私は開戦には反対です。そもそも陛下の命令はこの場に待機だと」。
ペシェハノフはそう言ったが、ソローキンの考えを翻すのは無理なのはわかっていた。しかし、ここでは自分が反対意見を言ったという事実だけを残したかったのだ。
ソローキンは、ペシェハノフに向いて不満そうに言った。
「戦いに勝てば陛下も何も言わないだろう。君が命令違反をすることに不満なら、私とキーシンの旅団のみで攻撃を開始する。君の部隊はこの場で留まってくれ」。
「そうすると、公国軍とほぼ同数での戦いになります。カタパルトの実力もわからない状況では、当方の被害も予測できません」。
「何を臆することがあるか。我が軍に敵はない」。
ペシェハノフが何か続きを言おうとしたが、ソローキンはそれを聞かず立ち上がった。
「一気に捻りつぶしてやる」。
ソローキンはそう言い捨てると、ソローキンとキーシンは指令室のテントから出て行った。
ソローキンは鎧を部下たちに装着させ、出発の準備をさせる。一時間もしないうちにソローキンとキーシンの旅団は野営地をたたみ始めた。
それが終わると各旅団だ整列する。
最初にソローキン、続いてキーシン、上級士官たちが号令を掛けると旅団がゆっくりと進み始めた。
重装騎士団を先頭に、騎兵、歩兵がそれに続く。
ペシェハノフは出発する旅団を見送る。国境へは半日もすれば到着するだろう。そして、この季節は川の水量はまだ少ない、ここ数日の雨のせいで少々水量が多いようだが、比較的簡単に渡河できるだろう。そうすると、公国軍の出方にもよるが、午後の早い時間には開戦となる可能性がある。
ペシェハノフは戦闘の様子とソローキン達の旅団の動きを探らせるため、国境付近に監視するように偵察を出した。また、首都の皇帝にもソローキンとキーシンが進軍を始めたという伝令を出発させた。
最前線。
帝国軍の第二、第三、第六旅団が陣を展開してから、早くも十日が経つ。
各旅団長であるデニス・ソローキン、セルゲイ・キーシン、アレクサンドル・ペシェハノフの三人は今日も早朝から指令室テントで会議を行なっていた。
国境付近にいる偵察部隊からの報告をペシェハノフが伝えるが、日々、公国軍に動きはない、というものが続いていた。
冷たい雨が降る日の多いこの季節。今日も小雨が陣地を冷やしていた。
ここに陣を張って十日、兵士たちの疲れもわずかではあるが見え始めた。
「先制攻撃を掛けようと思う」。
会議中にソローキンが突然そういった。
「一度、痛い目に合わせれば、こちらを侵攻しようなどと思わなくなるだろう」。
「このままでは兵士の士気も下がる一方だ。私も早めに決着を付けてしまいたいと思う」。
キーシンがそれに同意した。
「兵士の士気や疲れを気にするのであれば、少しずつ交代でプリブレジヌイで休息させてはどうでしょうか?」
ペシェハノフは提案した。
「それでは、根本的な解決になっていない。敵軍を国境から撤退させ、この状況を変えなければ、いつまでたっても我々はここで陣を張り続けないといけない」。
ソローキンはそう言った
たしかにその通りだが、ソローキンは開戦によって出る負傷者や死者については考えていない。
「私は開戦には反対です。そもそも陛下の命令はこの場に待機だと」。
ペシェハノフはそう言ったが、ソローキンの考えを翻すのは無理なのはわかっていた。しかし、ここでは自分が反対意見を言ったという事実だけを残したかったのだ。
ソローキンは、ペシェハノフに向いて不満そうに言った。
「戦いに勝てば陛下も何も言わないだろう。君が命令違反をすることに不満なら、私とキーシンの旅団のみで攻撃を開始する。君の部隊はこの場で留まってくれ」。
「そうすると、公国軍とほぼ同数での戦いになります。カタパルトの実力もわからない状況では、当方の被害も予測できません」。
「何を臆することがあるか。我が軍に敵はない」。
ペシェハノフが何か続きを言おうとしたが、ソローキンはそれを聞かず立ち上がった。
「一気に捻りつぶしてやる」。
ソローキンはそう言い捨てると、ソローキンとキーシンは指令室のテントから出て行った。
ソローキンは鎧を部下たちに装着させ、出発の準備をさせる。一時間もしないうちにソローキンとキーシンの旅団は野営地をたたみ始めた。
それが終わると各旅団だ整列する。
最初にソローキン、続いてキーシン、上級士官たちが号令を掛けると旅団がゆっくりと進み始めた。
重装騎士団を先頭に、騎兵、歩兵がそれに続く。
ペシェハノフは出発する旅団を見送る。国境へは半日もすれば到着するだろう。そして、この季節は川の水量はまだ少ない、ここ数日の雨のせいで少々水量が多いようだが、比較的簡単に渡河できるだろう。そうすると、公国軍の出方にもよるが、午後の早い時間には開戦となる可能性がある。
ペシェハノフは戦闘の様子とソローキン達の旅団の動きを探らせるため、国境付近に監視するように偵察を出した。また、首都の皇帝にもソローキンとキーシンが進軍を始めたという伝令を出発させた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説

異世界で生きていく。
モネ
ファンタジー
目が覚めたら異世界。
素敵な女神様と出会い、魔力があったから選ばれた主人公。
魔法と調合スキルを使って成長していく。
小さな可愛い生き物と旅をしながら新しい世界で生きていく。
旅の中で出会う人々、訪れる土地で色々な経験をしていく。
3/8申し訳ありません。
章の編集をしました。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです
yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~
旧タイトルに、もどしました。
日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。
まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。
劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。
日々の衣食住にも困る。
幸せ?生まれてこのかた一度もない。
ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・
目覚めると、真っ白な世界。
目の前には神々しい人。
地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・
短編→長編に変更しました。
R4.6.20 完結しました。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。
【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~
柊彼方
ファンタジー
「一族から出ていけ!」「お前は忌み子だ! 俺たちの子じゃない!」
テイマーのエリート一族に生まれた俺は一族の中で最弱だった。
この一族は十二歳になると獣と契約を交わさないといけない。
誰にも期待されていなかった俺は自分で獣を見つけて契約を交わすことに成功した。
しかし、一族のみんなに見せるとそれは『獣』ではなく『魔物』だった。
その瞬間俺は全ての関係を失い、一族、そして村から追放され、野原に捨てられてしまう。
だが、急な展開過ぎて追いつけなくなった俺は最初は夢だと思って行動することに。
「やっと来たか勇者! …………ん、子供?」
「貴方がマオウさんですね! これからお世話になります!」
これは魔物、魔族、そして魔王と一緒に暮らし、いずれ世界最強のテイマー、冒険者として名をとどろかせる俺の物語
2月28日HOTランキング9位!
3月1日HOTランキング6位!
本当にありがとうございます!
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
元聖女だった少女は我が道を往く
春の小径
ファンタジー
突然入ってきた王子や取り巻きたちに聖室を荒らされた。
彼らは先代聖女様の棺を蹴り倒し、聖石まで蹴り倒した。
「聖女は必要がない」と言われた新たな聖女になるはずだったわたし。
その言葉は取り返しのつかない事態を招く。
でも、もうわたしには関係ない。
だって神に見捨てられたこの世界に聖女は二度と現れない。
わたしが聖女となることもない。
─── それは誓約だったから
☆これは聖女物ではありません
☆他社でも公開はじめました

絞首刑まっしぐらの『醜い悪役令嬢』が『美しい聖女』と呼ばれるようになるまでの24時間
夕景あき
ファンタジー
ガリガリに痩せて肌も髪もボロボロの『醜い悪役令嬢』と呼ばれたオリビアは、ある日婚約者であるトムス王子と義妹のアイラの会話を聞いてしまう。義妹はオリビアが放火犯だとトムス王子に訴え、トムス王子はそれを信じオリビアを明日の卒業パーティーで断罪して婚約破棄するという。
卒業パーティーまで、残り時間は24時間!!
果たしてオリビアは放火犯の冤罪で断罪され絞首刑となる運命から、逃れることが出来るのか!?

プラス的 異世界の過ごし方
seo
ファンタジー
日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。
呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。
乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。
#不定期更新 #物語の進み具合のんびり
#カクヨムさんでも掲載しています

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる