12 / 75
謎めいた指令
モルデン
しおりを挟む
大陸歴1658年3月11日・モルデン郊外
早朝、私はマリアが居たテントを訪れて中を確認した。中に誰もおらず、彼女がすでにホルツの元へ出発しているのを確認した。難しい依頼ではない。彼女であれば、うまくやってのけるだろう。
しばらくして、部隊の出発の時間になり、部隊は野営地をたたみ出発する。
部隊は次の目的地モルデンに向かう。順調に進軍を続け、夜のとばりが降りたころ、予定のモルデン郊外の草原に到着し、その場に野営地を設置した。
しばらくすると、モルデン駐留軍である第四旅団の副司令官ブルガコフが、城からやって来た。彼は私のテントに入ると敬礼した。
第四旅団の司令官は、ミハイル・イェブツシェンコであるが、彼は昨日のうちに出撃して不在だという。彼の目的地も我々同様、首都だ。テレ・ダ・ズール公国の侵攻に備えるため、モルデン駐留の八千の軍の内三千五百を引き連れて、今日の午前中に出発し、五日後には首都付近で野営地を展開する予定だという。
イェブツシェンコも、ルツコイ同様に帝国軍内の主流派ではない。主流派でない彼は、中央から遠ざけられて旧共和国領内の都市に駐留させられていた。
一年前、私がモルデンに訪問した際は、イェブツシェンコは軍や市民と共に熱狂的歓迎をしてくれた。その時、城で開催された宴に、ブルガコフも参加していたので、彼とは顔見知りだ。
ブルガコフは、「部隊を城内で休ませてください」。と提案した。
私が率いる遊撃部隊二百名程度であれば、城内に収容も可能だろう。
しかし、私は固辞した。
帝国の指揮官の多くは、いまだに私を“英雄”として特別扱いしたがる。
私は特別扱いが好ましいと思っていないし、隊員には実戦に慣れてもらいたいので、このまま野営地にとどまることにした。
ブルガコフと話を続ける。彼もルツコイ同様、街の兵力が減ることで、大規模な暴動が発生した場合、十分に抑え込むことができないかもしれないと言う懸念を持っていた。
最近、モルデンでは、暴動が多発していることはホルツからの手紙で知っていた。
ホルツはモルデンの近くに潜伏しているので、暴動は彼の指導によるものもあるという。しかし、それは少ないと聞いている。自然発生的に起こっている暴動が多いようだ。
そして、ブルガコフも今回の出撃命令に疑問を感じていた。
出撃命令は、すべての旅団に出ている。その命令では、第二、第三、第六旅団が最前線へ布陣し、我々と残りの旅団は首都付近に展開するという命令になっている。ということは、公国軍が最前線を突破して首都まで迫る可能性があり、その対応のために我々を展開させたということだと考えられる。しかし、公国軍がそんなに強力とは聞いたことがない。それとも万が一に備えてのことだろうか。
皇帝イリアは、ここまで用心深い性格のだろうか。私は以前首都に滞在していた時、彼女と何度か話をしたことはあるが、彼女のことをさほど良く知らない。
オレガなら、召使として皇帝が皇女の時、仕えていたはずだから、彼女の性格も知っているかもしれない。私は、明日、そのことについてオレガに尋ねることにすることにした。
早朝、私はマリアが居たテントを訪れて中を確認した。中に誰もおらず、彼女がすでにホルツの元へ出発しているのを確認した。難しい依頼ではない。彼女であれば、うまくやってのけるだろう。
しばらくして、部隊の出発の時間になり、部隊は野営地をたたみ出発する。
部隊は次の目的地モルデンに向かう。順調に進軍を続け、夜のとばりが降りたころ、予定のモルデン郊外の草原に到着し、その場に野営地を設置した。
しばらくすると、モルデン駐留軍である第四旅団の副司令官ブルガコフが、城からやって来た。彼は私のテントに入ると敬礼した。
第四旅団の司令官は、ミハイル・イェブツシェンコであるが、彼は昨日のうちに出撃して不在だという。彼の目的地も我々同様、首都だ。テレ・ダ・ズール公国の侵攻に備えるため、モルデン駐留の八千の軍の内三千五百を引き連れて、今日の午前中に出発し、五日後には首都付近で野営地を展開する予定だという。
イェブツシェンコも、ルツコイ同様に帝国軍内の主流派ではない。主流派でない彼は、中央から遠ざけられて旧共和国領内の都市に駐留させられていた。
一年前、私がモルデンに訪問した際は、イェブツシェンコは軍や市民と共に熱狂的歓迎をしてくれた。その時、城で開催された宴に、ブルガコフも参加していたので、彼とは顔見知りだ。
ブルガコフは、「部隊を城内で休ませてください」。と提案した。
私が率いる遊撃部隊二百名程度であれば、城内に収容も可能だろう。
しかし、私は固辞した。
帝国の指揮官の多くは、いまだに私を“英雄”として特別扱いしたがる。
私は特別扱いが好ましいと思っていないし、隊員には実戦に慣れてもらいたいので、このまま野営地にとどまることにした。
ブルガコフと話を続ける。彼もルツコイ同様、街の兵力が減ることで、大規模な暴動が発生した場合、十分に抑え込むことができないかもしれないと言う懸念を持っていた。
最近、モルデンでは、暴動が多発していることはホルツからの手紙で知っていた。
ホルツはモルデンの近くに潜伏しているので、暴動は彼の指導によるものもあるという。しかし、それは少ないと聞いている。自然発生的に起こっている暴動が多いようだ。
そして、ブルガコフも今回の出撃命令に疑問を感じていた。
出撃命令は、すべての旅団に出ている。その命令では、第二、第三、第六旅団が最前線へ布陣し、我々と残りの旅団は首都付近に展開するという命令になっている。ということは、公国軍が最前線を突破して首都まで迫る可能性があり、その対応のために我々を展開させたということだと考えられる。しかし、公国軍がそんなに強力とは聞いたことがない。それとも万が一に備えてのことだろうか。
皇帝イリアは、ここまで用心深い性格のだろうか。私は以前首都に滞在していた時、彼女と何度か話をしたことはあるが、彼女のことをさほど良く知らない。
オレガなら、召使として皇帝が皇女の時、仕えていたはずだから、彼女の性格も知っているかもしれない。私は、明日、そのことについてオレガに尋ねることにすることにした。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説


ブラック・スワン ~『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る~
碧
ファンタジー
「詰んだ…」遠い眼をして呟いた4歳の夏、カイザーはここが乙女ゲーム『亡国のレガリアと王国の秘宝』の世界だと思い出す。ゲームの俺様攻略対象者と我儘悪役令嬢の兄として転生した『無能』なモブが、ブラコン&シスコンへと華麗なるジョブチェンジを遂げモブの壁を愛と努力でぶち破る!これは優雅な白鳥ならぬ黒鳥の皮を被った彼が、無自覚に周りを誑しこんだりしながら奮闘しつつ総愛され(慕われ)する物語。生まれ持った美貌と頭脳・身体能力に努力を重ね、財力・身分と全てを活かし悪役令嬢ルート阻止に励むカイザーだがある日謎の能力が覚醒して…?!更にはそのミステリアス超絶美形っぷりから隠しキャラ扱いされたり、様々な勘違いにも拍車がかかり…。鉄壁の微笑みの裏で心の中の独り言と突っ込みが炸裂する彼の日常。(一話は短め設定です)
お飾りの側妃ですね?わかりました。どうぞ私のことは放っといてください!
水川サキ
恋愛
クオーツ伯爵家の長女アクアは17歳のとき、王宮に側妃として迎えられる。
シルバークリス王国の新しい王シエルは戦闘能力がずば抜けており、戦の神(野蛮な王)と呼ばれている男。
緊張しながら迎えた謁見の日。
シエルから言われた。
「俺がお前を愛することはない」
ああ、そうですか。
結構です。
白い結婚大歓迎!
私もあなたを愛するつもりなど毛頭ありません。
私はただ王宮でひっそり楽しく過ごしたいだけなのです。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化

【完結済】ラーレの初恋
こゆき
恋愛
元気なアラサーだった私は、大好きな中世ヨーロッパ風乙女ゲームの世界に転生していた!
死因のせいで顔に大きな火傷跡のような痣があるけど、推しが愛してくれるから問題なし!
けれど、待ちに待った誕生日のその日、なんだかみんなの様子がおかしくて──?
転生した少女、ラーレの初恋をめぐるストーリー。
他サイトにも掲載しております。

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。
桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。
だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。
そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。
ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。
飲めないお酒を飲んでぶったおれた。
気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。
その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる