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衝撃の新学年編

部活紹介

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 金曜日。
 いよいよ部活紹介オリエンテーションの日。

 なのだが、その他にもいろいろ用事のある忙しい日なのだ。
 金曜日は、1年生の時からの雪乃、毛利さんとのお弁当交換会。これは継続することになっている。
 というわけで、早めに起きだして弁当を完成させる。
 途中、妹の美咲に絡まれつつも、弁当を完成させて登校する。

 次に、僕がクラス委員長に選出されてしまい、初仕事で昼休みまでにクラスの生徒全員から進路調査票を回収しなければならない。
 というわけで、休憩時間などを利用して回収。
 数名ほど持ってくるのを忘れた不届き者がいたが、来週月曜日に持ってくると約束させる。
 そして、昼休み早々に、職員室の担任の島津先生のところまで持っていく。

 職員室は行きたくないが仕方がない。
 勇気を出して職員室の扉を開けた。
 職員室の真ん中あたりに島津先生が居るのを見つけた。
 先生は、今日もベージュのスーツで決めている。
 そして、お弁当を食べていた。
 僕は側に立って、構わず声を掛ける。
「先生、調査票を回収してきました。ただし、何人か分は来週です」

 島津先生は箸をおいて、僕を見上げた。

「あら。ご苦労様」

 僕は調査票を机の上に置く。

「武田君は、進路はどうするの?」
 島津先生は尋ねてきた。

「調査票に書きましたが、一応、進学を考えてます」

「どこの大学?」

「第一志望は、面影橋大学の文学部です」

「文学部? 大学でも歴史の勉強をしたいのかしら?」

「ええ、まあ」
 本当は、全くそんなことは無いのだが、空欄で提出は怒られるだろうし、他に思いつかなかったので、元歴史研で卒業した大友先輩と同じ大学にしておいた。
 第2志望も、第3志望も適当に埋めている。

「卓球で推薦を狙ったりしない? 上手くいけば、 良い大学、行けるわよ」
 島津先生はまた、卓球の話題を出してきた。

「いや、僕、卓球に興味は無いです」

「武田君、卓球の才能があると思うんだけど?」

「そもそも2年生になってから入部しても逆に迷惑では?」

「ぜんぜん、そんなことないわよ。うちの卓球部は男子が少なめだから、ミックスダブルスに出場できないことが多くて」
 卓球部は島津先生にあこがれて入ってくる人が多いらしいから、結果、女子が多くなるみだいなのだ。

 これ以上、卓球の話をしたくないので、さっさと職員室を去ろう。
「すいません。この後、用事があるので、この辺で…」

「用事って、ひょっとして、織田さんと毛利さんかしら?」

「えっ?! なんで知ってるんですか?」

「学校内で知らない人は、いないと思うわよ」
 そう言って島津先生は笑った。

 島津先生にまで、金曜のお弁当交換会を知られているとは…。
 他の先生たちにも知られているということか?
 新聞部のXで晒されているせいだろうが、それにしても、新聞部の情報拡散力はすごいな。

 それより、中庭に急ぐ。
 冬の間は寒かったので、体育館の観客席で弁当を食べていたが、暖かくなってきたので中庭で食べようということになっているのだ。

 いくつか並んでいる中庭のベンチの1つに、雪乃と毛利さんがいた。

「ごめん、お待たせ」
 僕は早歩きで2人のところまでやってきた。

「「ご苦労さま」」
 雪乃と毛利さんはほぼ同時に言った。

「早く座って」
 雪乃はベンチをポンポンと叩いた。
 今日も、雪乃と毛利さんを“両手に花”で座る。

 僕は毛利さんから彼女の作った弁当を受け取る。
 雪乃には僕の弁当を昼休み始まって早々に渡してある。
 そして、毛利さんは、雪乃の弁当を食べることになっている。

 3人で弁当箱のふたを開けて、おかず談議に花が咲く。

 おかず談議が終わり、しばらくして雪乃が尋ねる。
「調査票ってさあ、純也はどうしたの?」

「第一志望は、面影橋大学の文学部だよ」

「歩美と同じだね」

「そうだね」
 毛利さんは司書になりたいからと、面影橋大学の文学部志望というのは覚えていた。
「で、雪乃はどう書いたの?」

「私は、第一志望は“女優”だよ」

「ふーん」
 それって、後日、島津先生になんか言われないのだろうか。
 まあいいや。

 昼休みも終わり、午後はいよいよ部活紹介オリエンテーションだ。
 1年生は体育館に集められ、主に2年生が中心となって、部活紹介をする。
 2年生以上の“帰宅部”はやることが無いので、帰宅してもいいということになっている。
 うらやましい。

 しかも、各部が順番に演台に立って部活紹介をするのだが、部活の名前の50音順で紹介することになっているのだ。
 すると、歴史研究部は一番最後。
 おかげで、出番までの待ち時間が長い。
 さらには、一番最後だと聞いている1年生も疲れてきて、ロクに話を聞いてくれないだろうと思った。

 僕の不安とは関係なく、オリエンテーション開始。
 映画研究部、演劇部はかなり早い段階で紹介をする。
 いずれも、前日、視聴覚室の上映会で観たショートムービーの上映。
 演劇部は、ショートムービー上映と演台でのリアルな演技のコラボで独特な紹介となっていて、特に雪乃の演技力が光ってた。

 …

 サッカー部。
 悠斗のイケメンぶりで、1年生女子がざわめく。

 …

 将棋部。
 将棋Youtuberの成田さんの注目度は高い。

 …

 水泳部。
 赤松さんの美少女ぶりで、1年生男子がざわめく。

 …

 次々に部活紹介が進むが、どこの部活も工夫が凝らされていた。
 少子化で部員が減っているのに、最低5人は部員が所属していないと“部”として認められないから、どこも必死だ。
 一方、何も考えていない歴史研、やる気ないよな。

 そして、いよいよ歴史研の番が回ってきた。
 僕は緊張しつつ、毛利さんと一緒に演台に立った。
 僕らが演台の中心まで来ると。1年生が、少しざわつき始めた。
 何やら、失笑もされている。

 やっぱり、“エロマンガ伯爵”の一件が1年生にも広がっているに違いない。
 もう1年も前の話なのに困ったものだ。
 そして、新聞部のXの拡散力…。
 僕への注目が、部員獲得に一役買えばいいのだが、そんなことはないんだろうな…。

 僕は、昨日、何を話すか書いたノートを見つつ紹介を開始する。
 無難に紹介をして、あっけなくオリエンテーション終了。

 いろいろ疲れたので、今日のところは僕と毛利さんは、さっさと解散することにした。
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