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暁を覚えない春眠編

いのイノ猪ボアー

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 土曜日。
 朝、ゆっくり目に起床。

 朝食を食べた後、 今日は久しぶりに何も予定が入ってないので、VRMMOPRG “色彩の大陸” でもやってみようと思う。
 VRゴーグルを装着して、ゲーム開始。
 早速、フレンドの悠斗、六角君、ユミコさんの状態を確認する。
 みんな、ログインしてないようだ。
 悠斗と六角君は、サッカー部の練習に行ってるんだろう。
 ユミコさんの中の人の職業は知らないが、オジサンなら仕事に行っているのかもしれない。いや、今日は土曜日だから休みなのかな? いずれにしてもログインはしていない。

 僕はマップを確認する。
 ログインしていない間にゲーム内のワールドが、どんどん広がっている様子。 
 あまりやっていない僕はそれに追いつけない。
 追いつこうとも思っていないが。
 とはいえ、たまには他の街にでも行ってみようと思った。
 ゲームスタート時の街は港町という設定だが、隣の町は内陸部にあるという設定。
 ともかく、スタートの街から、雑魚敵を倒しながらのんびり移動。
 途中、他のプレイヤーでイノシシの被り物(?)みたいな装備をしている人がちらほらいる。
 なんだこれは…?
 ちょっと調べると限定で出るレア装備で、 森に出て来るイノシシの化け物を倒すと、まれに出て来るらしい。
 僕は興味がないので、スルーすることにして道を進む。
 
 1時間ほどの移動で、隣町へやって来た。結構、遠かった。
 隣町でのクエスト“敵兵の残党狩り”などをやって、時間をつぶす。
 まあまあレベルは上がっているので、この街のクエストや、出て来る敵は比較的簡単に倒すことができた。
 しばらくプレイして、お昼になったので中断して昼食を食べる。
 その後はゲーム再開。

 1時間程プレイしていると、ユミコさんがログインしてきた。
 そして、チャットで話しかけて来た。
『こんにちは』

 ユミコさんがログインしてくるのは想定外で驚いたが、僕は返事をする。
『こんにちは』
 ユミコさん、やはり仕事は休みなのか。
 いや、仕事してない引きこもりかもしれないぞ。
 何十年も引きこもっているオジサンがいて社会問題になっている、みたいなのをニュースで見たことがある。

『今、どこにいますか?』
 ユミコさんは尋ねて来た。

『隣町です。遠いですが、来ますか?』

『私、レベルがまだ低いので、途中で倒されてしまうかも』

 そうか、その通りだな…。
『じゃあ、僕が戻ります』
 調べたら、街にはそれぞれポータルがあって、一度行ったことがある街にはポータルを使うと一瞬で移動できるという。
 という訳で、さっそくポータルを使って、最初の街に戻った。
 
 街の広場ですぐにユミコさんと合流できた。
 そして、ユミコさんの為に経験値稼ぎで、2人で雑魚敵を倒したり、クエストをしたりして、しばらく過ごす。

 2時間ばかり経っただろうか、ユミコさんが言う。
『今日は、そろそろログアウトします』

『そうですか。次は、いつログインしますか?』

『来週から学校だから、あまりログインできないかも』

 え? 学校?
 ということは、オジサンではないということか?
 大学生、高校生、中学生、小学生のいずれかということかな?
 待て待て、教師や職員ということも考えられる。とすると、やはりオジサンということになる。
 いずれにしても、引きこもりの人でないようだ。

『そ、そうですか。じゃあ、また』

『またね』

 僕は1人でゲームを再開。
 夕方頃、悠斗がログインしてきた。

『やあ、純也』

『やあ、悠斗。サッカー部は?』

『練習終わって、さっき帰って来たよ』

『そうか。おつかれ』

『純也は、お城巡りに行ってたんだろ?』

『ああ、昨日、東京に戻って来たよ』

『そうか』

『ところで。さっきまで、ユミコさんが居たよ』

『あ、そう』

『ユミコさんってさあ、歳、いくつだと思う?』

『さあ、どうだろ?』

『オジサンかもしれないよね?』

『いやいや、あの人は若い女でしょ?』

『なんでわかるの?』

『そうだな…。なんとなく会話の内容で、そんな感じがするよ』

 そうなのかな?
『そうか、悠斗はいつも女に囲まれてるから、わかるんだな』

『何、言ってんの? 純也だって、女に囲まれてるじゃん?』

『え?』
 そう言われれば、そうなのか…?
 でも、歴史研のメンバーと雪乃、あとはO.M.G.ぐらいだと思うが…。
 学校で結構な人数の女子生徒から人気がある悠斗と比べると全然だよな。
 それに囲まれてるというより、絡まれているというか…。
 いずれにせよ、僕にはユミコさんが男か女か、わからなかった。
 悠斗が女というのなら、そうなのかもしれない。
 ユミコさんの話題はそこまでにする。

 その後、六角君も合流してきて3人でゲームを夜まで楽しんだ。
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