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暁を覚えない春眠編
君たちはどう生けるか
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今日は午後から、楽しみにしていた宇喜多邸の訪問の日だ。
朝は例によって、妹の美咲と偽妹の前田さんに叩き起こされてジョギング。
雑司ヶ谷町内を駆け抜けて終了。
僕、妹、偽妹の3人で朝食を食べた後、僕の部屋でゲーム機を引っ張り出して遊んで、ウダウダして、昼食にカップ麺を食べる。
午後になって、僕は宇喜多邸訪問ための待ち合わせ場所である目白駅前に向かうため、立ち上がって準備を始める。
「あれ? お兄ちゃんどこか行くの?」
準備をする僕を見て、妹が尋ねた。
宇喜多さんの家に行くと言うと面倒なことになりそうなので、適当に誤魔化す。
「ああ、友達の家に行くんだよ」
「え? お兄ちゃん、友達いないじゃん?」
「何を言う。友達ぐらいいる」
「まさか、白雪姫の家じゃあないでしょうね?」
妹は睨みつけて来た。
「違う、違う」
「じゃあ、毛利さん家だ」
「今日は違う」
「“今日は”?」
「もう、誰でもいいじゃないか」
「新しい女だ」
妹は、さらに鋭い眼光で睨む。
「違うよ」
宇喜多さんとは以前からの知り合いなので、“新しい女”ではない。
「私も行きたいですー」
偽妹が懇願する。
だが、しかし、
「大勢で行くと迷惑だろ。そもそも、僕だけが呼ばれているだけだし」
2人はブーブー言ってるが、何とか振り切って家を出た。
自宅から徒歩で目白駅まで。
目白駅前に到着すると、O.M.G.の3人がすでに待っていた。
「お待たせ」
僕は挨拶する。
「じゃあ、行こうか」
早速、宇喜多さんが先導して、徒歩で進んでいく。
路地に入って、閑静な住宅街の中へ。
10分ほど歩くと、高い白い壁が続く一角にやって来た。
ここが宇喜多さんの家らしい。壁が高くて、中の様子が見えない。
しばらく進んで、大きな門の脇にある通用口を抜ける。
そこから、よく手入れされた庭を少し進むと、ちょっとクラシックな洋風の豪邸に到着した。
僕は豪邸を見上げる。
すごい。やっぱり宇喜多さん金持ちなのか。
「お手伝いさんとか居るの?」
僕は思わず尋ねた。
「住み込みのメイドが2人いますよ」
宇喜多さんは笑いながら答えた。
本物のメイドが居るのか。
スゲー。
豪邸の玄関の大きな扉を開ける。
中も広くてきれいにされている。壁に高価なそうな絵画とか掛けられていた。
しかし、家が広いと掃除するの大変そうだ。という、貧乏くさい感想しか出てこない。
豪邸の中に入り、2階の宇喜多さんの部屋に到着。
女子っぽく淡いピンクのカーテンとか、赤いカーペットとか、暖色系でまとまっている。
でも広い。うちのリビングより広い。
宇喜多さんが紅茶とクッキーを出してくれた。
ティーカップも高そうなやつだ。
僕とO.M.G.の3人は、床に座って明日の新曲CDのリリイベの打ち合わせをする。
僕は、妹と偽妹が手伝いに行けると伝えると、3人に喜んでもらえた。
打ち合わせも終盤。
「じゃあ、武田君、CDを現場まで運んでほしいから、今日持って帰ってね」
といって、宇喜多さんは部屋の片隅おいてある段ボール箱を指さした。
CDは業者に頼んで完成したものを、一旦、宇喜多邸に送ってもらったそうだ。
「え? 今日、僕が持って帰って、明日、持っていくってこと?」
「そうだよ」
荷物運びか。まあしょうがない、やるしかない。
「何枚あるの?」
「200枚」
重そうだなあ。
「即日完売しそう?」
僕は尋ねた。
「さすがにちょっと無理かな」
「でも150枚ぐらいは、いけそうだよね」
真帆がちょっと気合入って感じで言った。
打ち合わせ終了後も、しばらく雑談して過ごす。
僕は、宇喜多姉に会いたくて、宇喜多妹に尋ねた。
「ところで、お姉さんは?」
「多分、家にいるよ」
「ふーん…。挨拶したいな」
「いいよ。ちょっと、捜してみよう」
家が広いから居場所を探すのも大変そうだな。
と思ってみていると、宇喜多さんはスマホを取り出して、姉とLINEで交信する。
家のどこに居るのか尋ねるのにLINEを使うのか、豪邸住みは違うなあ。
「1階の和室にいるって」
宇喜多さんは言うと、全員で移動する。
ということで、1階の和室に到着した。
何枚ものふすまで仕切られている。
宇喜多さんは、ふすまを開ける。
ここも広い。柔道の試合もできそうな広さ。
その和室の真ん中あたりで、和服姿で花を活けている宇喜多姉の姿が見えた。
宇喜多姉は僕たちに気が付くと、話しかけて来た。
「あら、皆さんいらっしゃい。まあ、武田さんまで」
「ど、どうも、お邪魔してます」
宇喜多姉に会えて、ちょっと嬉しい。
そして、緊張する。
彼女の和服姿は昨年の東池女子校の学園祭の時に見たけど、和服姿が良く似合うな。
「お、お花もやっているんですね」
「うちの姉は、華道と茶道をずっと習っているからね」
宇喜多妹が答えた。
「君はやらないの?」
「やってない。姉がこの家を継ぐからね、私はそう言うのは無しで自由にさせてもらってる」
宇喜多姉妹はタイプも性格も全然違う。
姉は、黒髪清楚な静かなお嬢様タイプ。
妹は、茶髪でアイドル活動もやる活発なタイプ。
「家を継ぐって、婿養子を迎えるってこと?」
僕は尋ねた。
「多分そうなりますね」
宇喜多姉が答えた。
「うちは代々、他の財閥や大企業の経営者と政略結婚しているから、姉もそうなるだろうね」
宇喜多妹が言う。
政略結婚とか本当にあるのか。
ということは、宇喜多姉とはお近づきになっても、先は無いってことか…。
「皆さんも、お花、やってみますか?」
宇喜多姉が提案してきた。
折角だからと、僕とO.M.G.みんなでお花に挑戦する。
お花を何種類か、花器、剣山、花ばさみを人数分用意してもらい、華道の体験。
しかし、どういう風にやればいいのか全く分からない。
思わず尋ねる。
「どういう風に生ければいいんですか?」
「自分が良いと思った風に、自由にやればいいですよ」
宇喜多姉がアドバイスしてくれる。
「『考えるな、感じろ』、ってやつですね」
真帆が言った。
自由にやれってのが一番難しいんだよな…。
なんやかんやで、お花の体験を終了。
宇喜多姉は、僕の出来栄えを褒めてくれたけど、きっとお世辞。
記念に完成品をスマホで写真に納めた。
終わった頃には、夕方だったので宇喜多一家と滅多に食べれない豪華な晩ごはんを頂き、食べ終わった後はCDの入った段ボールも忘れずに持って帰宅した。
朝は例によって、妹の美咲と偽妹の前田さんに叩き起こされてジョギング。
雑司ヶ谷町内を駆け抜けて終了。
僕、妹、偽妹の3人で朝食を食べた後、僕の部屋でゲーム機を引っ張り出して遊んで、ウダウダして、昼食にカップ麺を食べる。
午後になって、僕は宇喜多邸訪問ための待ち合わせ場所である目白駅前に向かうため、立ち上がって準備を始める。
「あれ? お兄ちゃんどこか行くの?」
準備をする僕を見て、妹が尋ねた。
宇喜多さんの家に行くと言うと面倒なことになりそうなので、適当に誤魔化す。
「ああ、友達の家に行くんだよ」
「え? お兄ちゃん、友達いないじゃん?」
「何を言う。友達ぐらいいる」
「まさか、白雪姫の家じゃあないでしょうね?」
妹は睨みつけて来た。
「違う、違う」
「じゃあ、毛利さん家だ」
「今日は違う」
「“今日は”?」
「もう、誰でもいいじゃないか」
「新しい女だ」
妹は、さらに鋭い眼光で睨む。
「違うよ」
宇喜多さんとは以前からの知り合いなので、“新しい女”ではない。
「私も行きたいですー」
偽妹が懇願する。
だが、しかし、
「大勢で行くと迷惑だろ。そもそも、僕だけが呼ばれているだけだし」
2人はブーブー言ってるが、何とか振り切って家を出た。
自宅から徒歩で目白駅まで。
目白駅前に到着すると、O.M.G.の3人がすでに待っていた。
「お待たせ」
僕は挨拶する。
「じゃあ、行こうか」
早速、宇喜多さんが先導して、徒歩で進んでいく。
路地に入って、閑静な住宅街の中へ。
10分ほど歩くと、高い白い壁が続く一角にやって来た。
ここが宇喜多さんの家らしい。壁が高くて、中の様子が見えない。
しばらく進んで、大きな門の脇にある通用口を抜ける。
そこから、よく手入れされた庭を少し進むと、ちょっとクラシックな洋風の豪邸に到着した。
僕は豪邸を見上げる。
すごい。やっぱり宇喜多さん金持ちなのか。
「お手伝いさんとか居るの?」
僕は思わず尋ねた。
「住み込みのメイドが2人いますよ」
宇喜多さんは笑いながら答えた。
本物のメイドが居るのか。
スゲー。
豪邸の玄関の大きな扉を開ける。
中も広くてきれいにされている。壁に高価なそうな絵画とか掛けられていた。
しかし、家が広いと掃除するの大変そうだ。という、貧乏くさい感想しか出てこない。
豪邸の中に入り、2階の宇喜多さんの部屋に到着。
女子っぽく淡いピンクのカーテンとか、赤いカーペットとか、暖色系でまとまっている。
でも広い。うちのリビングより広い。
宇喜多さんが紅茶とクッキーを出してくれた。
ティーカップも高そうなやつだ。
僕とO.M.G.の3人は、床に座って明日の新曲CDのリリイベの打ち合わせをする。
僕は、妹と偽妹が手伝いに行けると伝えると、3人に喜んでもらえた。
打ち合わせも終盤。
「じゃあ、武田君、CDを現場まで運んでほしいから、今日持って帰ってね」
といって、宇喜多さんは部屋の片隅おいてある段ボール箱を指さした。
CDは業者に頼んで完成したものを、一旦、宇喜多邸に送ってもらったそうだ。
「え? 今日、僕が持って帰って、明日、持っていくってこと?」
「そうだよ」
荷物運びか。まあしょうがない、やるしかない。
「何枚あるの?」
「200枚」
重そうだなあ。
「即日完売しそう?」
僕は尋ねた。
「さすがにちょっと無理かな」
「でも150枚ぐらいは、いけそうだよね」
真帆がちょっと気合入って感じで言った。
打ち合わせ終了後も、しばらく雑談して過ごす。
僕は、宇喜多姉に会いたくて、宇喜多妹に尋ねた。
「ところで、お姉さんは?」
「多分、家にいるよ」
「ふーん…。挨拶したいな」
「いいよ。ちょっと、捜してみよう」
家が広いから居場所を探すのも大変そうだな。
と思ってみていると、宇喜多さんはスマホを取り出して、姉とLINEで交信する。
家のどこに居るのか尋ねるのにLINEを使うのか、豪邸住みは違うなあ。
「1階の和室にいるって」
宇喜多さんは言うと、全員で移動する。
ということで、1階の和室に到着した。
何枚ものふすまで仕切られている。
宇喜多さんは、ふすまを開ける。
ここも広い。柔道の試合もできそうな広さ。
その和室の真ん中あたりで、和服姿で花を活けている宇喜多姉の姿が見えた。
宇喜多姉は僕たちに気が付くと、話しかけて来た。
「あら、皆さんいらっしゃい。まあ、武田さんまで」
「ど、どうも、お邪魔してます」
宇喜多姉に会えて、ちょっと嬉しい。
そして、緊張する。
彼女の和服姿は昨年の東池女子校の学園祭の時に見たけど、和服姿が良く似合うな。
「お、お花もやっているんですね」
「うちの姉は、華道と茶道をずっと習っているからね」
宇喜多妹が答えた。
「君はやらないの?」
「やってない。姉がこの家を継ぐからね、私はそう言うのは無しで自由にさせてもらってる」
宇喜多姉妹はタイプも性格も全然違う。
姉は、黒髪清楚な静かなお嬢様タイプ。
妹は、茶髪でアイドル活動もやる活発なタイプ。
「家を継ぐって、婿養子を迎えるってこと?」
僕は尋ねた。
「多分そうなりますね」
宇喜多姉が答えた。
「うちは代々、他の財閥や大企業の経営者と政略結婚しているから、姉もそうなるだろうね」
宇喜多妹が言う。
政略結婚とか本当にあるのか。
ということは、宇喜多姉とはお近づきになっても、先は無いってことか…。
「皆さんも、お花、やってみますか?」
宇喜多姉が提案してきた。
折角だからと、僕とO.M.G.みんなでお花に挑戦する。
お花を何種類か、花器、剣山、花ばさみを人数分用意してもらい、華道の体験。
しかし、どういう風にやればいいのか全く分からない。
思わず尋ねる。
「どういう風に生ければいいんですか?」
「自分が良いと思った風に、自由にやればいいですよ」
宇喜多姉がアドバイスしてくれる。
「『考えるな、感じろ』、ってやつですね」
真帆が言った。
自由にやれってのが一番難しいんだよな…。
なんやかんやで、お花の体験を終了。
宇喜多姉は、僕の出来栄えを褒めてくれたけど、きっとお世辞。
記念に完成品をスマホで写真に納めた。
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