上 下
395 / 418
暁を覚えない春眠編

偽妹生活~その4

しおりを挟む
 翌日、火曜日の朝も美咲、前田さんとジョギングして、その後は3人で1日ゲームやったりしてダラダラしていた。
 自堕落な生活だ。
 まあ、宿題もないし、春休みぐらいはいいかな。

 さらに翌日、朝、ジョギングして帰宅。
「こんなに毎朝ジョギングしてたら、スタミナつきそうだな。でも、今週で終わりだからな」
 僕は偽妹に宣言する。

「えー、ずっと一緒に走りましょうよー」
 偽妹は不満そうだ。

「いや、ジョギングに付き合うのは前田さんが“妹”をやっている間だけだから」

「私も今週で終わりたい。疲れる」
 珍しく妹と意見が合った。
 基本、妹も僕と同じで面倒くさがりだからな。

「えー」
 偽妹は残念そうにため息をついた。

「前田さんは、卓球で強くなるためにやるんでしょ? 頑張ってね」

「お兄さんも、卓球、強くなりましょうよー」

「僕は卓球に興味ないんだってば」

「えー」

 ここは心を鬼にして断らないと、永久に付き合わされるからな。

 午前中は3人でダラダラした後は、昼食を食べた後、僕は出かける準備をするため部屋に戻った。
 今日は午後からO.M.G.のライブの手伝いに行かないといけないのだ。
 春休みということもあって、夜のライブイベントはいつもより少々早い時間、夕方前の早くから開催される。

「あれ? お兄ちゃんどこか行くの?」
 準備をする僕を見て、妹が尋ねた。

「ああ、バイトだよ」

「え? バイト?」

「O.M.G.のライブ後の物販の手伝いに行かないといけないんだ」

「何それ? 聞いていないんだけど?」

「そりゃ、言ってないからな」

「O.M.G.ってなんですかー?」
 次に前田さんが尋ねてきた。
 前田さんにはO.M.G.の話をしたことあったよな。

「インディーズのアイドルユニットだよ。前にも言ったでしょ? で、少し前から物販の手伝いをしているんだ」
 僕は答えた。

「アイドル? アイドルって歌ったり踊ったりする、あのアイドルのことですかー?」

「そうそう、そのアイドル」

「すごーい」

「私たちも行く!」
 妹が突然宣言した。

「ついて来てもいいけど、入場料払わないと入れないよ」

「ええー。いくら?」

「3000円ぐらいだと思う」

「中学生には高いよ! 何とかしてよ!」

「なんともできるわけないだろ」

「お兄ちゃんは3000円あるの?!」

「僕は、スタッフ扱いだから、お金いらないんだよ」

「私たちもスタッフにしてよ」

「無茶言うな。さすがにそんな権限はない」

「使えないなー」
 妹と偽妹は不満そうだったが諦めてくれた。
 僕は2人を残して家を発った。
 そして、地下鉄をJRを乗り継いで秋葉原のいつものライブハウスに向う。

 秋葉原駅から徒歩数分の雑居ビルの地下にある目的のライブハウスに到着すると、受付の係員女性にO.M.G.のスタッフであると告げた。
 そのスタッフは僕のことを覚えていて、
「お久しぶりですね。1か月ぶりぐらい?」
 と、挨拶された。
 僕も挨拶を返して中に入る。

 ライブハウスの中は、まだリハーサル中。
 会場内には何組ものアイドルがいるのが目に入った。
 そんな中、準備前の客席あたりにたむろしていた、O.M.G.のメンバーを見つけた。
 まだ、衣装に着替えてなくて私服のままだ。
 僕は近づいて挨拶をする。
「やあ、来たよ」

「おお! 純ちゃん! 久しぶり!」
 真帆がテンション高めに挨拶をしてきた。
「今日、よろしくね!」

 他のメンバーの宇喜田さん、竜造寺さんにも挨拶をする。
 真帆からは僕が来ていなかった間に、物販で売るグッズが増えたので、その説明を受ける。

 リハーサルが終わり、本番開始。
 僕は後ろの方で見学。
 ライブハウスは今日も盛況で、お客さんの入りも良い。
 相変わらずオジサンたちが多い。
 まだ夕方前の時間なのに、オジサンたちは仕事とかないんだろうか?
 謎だ。

 ライブも無事終了して、物販タイム。
 グッズ売ったり、チェキの撮影係をやったり、いろいろと忙しい。
 O.M.G.のファンのオジサンたちも僕のことを覚えてくていて、話しかけてくれた。
 1時間の物販タイムで、何とかファンをさばききって、終了。疲れた。
 確かに1か月の間にファンがまた一段と増えたな。
 O.M.G.すごいグループなのかも。

 夜になり、後片付けも完了して、僕はO.M.G.と一緒にライブハウスを後にした。
 真帆が土曜のライブの事を話したいというので、近くの喫茶店で打ち合わせ。
 少し雑談の後、真帆が本題に入る。
「土曜日だけど、新曲のリリイベなんだよね」

「リリイベってなんだっけ?」

「リリースイベントのこと。ほら、純ちゃんが手伝ってくれて、新曲を作ることになったじゃん?」

「え?」
 僕は記憶をたどる。
 以前、O.M.G.がオリジナル曲をほしいというので、僕が徳川さんに声をかけて、彼女の知り合いの作曲家を紹介してもらい、曲を作ってもらうことになったんだっけ。
 作曲家の名前は確か、“風呂椅子”。
 それで、3月中にレコーディングして、ライブ本番に向けて振り付けを考えて練習なんかもやると言ってたっけ。
「あ、ああ…、思い出したよ」

「ライブイベント自体は徳川さんの主催の対バンイベントなんだけど、O.M.G.の新曲リリイベの為に多めに時間配分をもらってるから」

「あ、そう」

「土曜日のリリイベということもあって、お客さんも沢山来そうなんだよね…」
 真帆がちょっと不安そうにしている。

「僕1人で、さばききれるのかな?」

「純ちゃん、誰か手伝ってくれそうな人いない?」

「うーん…」
 そうだ!
「妹とその友達でよければ、手伝わせるけど」

「ああ! いいね! お願いできるかな!?」
 真帆は、妹と偽妹とは顔を合わせたことがあるし、2人ともライブ来たいとか言ってたし、ちょうどいいかも。

 その後も少しだけリリイベの打ち合わせをする。
 話も終え、最後に真帆が話題を変えて、訪ねてきた。
「右寿の家に行く話、大丈夫?」

 明後日、宇喜田邸に訪問するのである。
「もちろん、大丈夫だよ」
 久ぶりに宇喜田姉に会えるので、楽しみだ。

 最後にバイト代をもらって今日は解散となった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた

楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。 この作品はハーメルン様でも掲載しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』

コバひろ
大衆娯楽
前作 “雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ” (全20話)の続編。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/329235482/129667563/episode/6150211 男子キックボクサーを倒したNOZOMIのその後は? そんな女子格闘家NOZOMIに敗れ命まで落とした父の仇を討つべく、兄と娘の青春、家族愛。 格闘技を通して、ジェンダーフリー、ジェンダーレスとは?を描きたいと思います。

落ち込んでいたら綺麗なお姉さんにナンパされてお持ち帰りされた話

水無瀬雨音
恋愛
実家の花屋で働く璃子。落ち込んでいたら綺麗なお姉さんに花束をプレゼントされ……? 恋の始まりの話。

処理中です...