雑司ヶ谷高校 歴史研究部!!

谷島修一

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暁を覚えない春眠編

クランクアップ

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 僕らは、蜂須賀さんに挨拶をして美術室を後にした。
 少し早いけど、ショートムービーの撮影現場である空き教室に戻ろうと言うことになり、ぞろぞろと移動をする。
 目的の空き教室を目前に、隣の空き教室の扉がいきなり開いた。

「キミィ!」

 僕に声を掛けたのは、まさかの上杉先輩だった。

 僕は驚いて尋ねる。
「ええっ!? なんで、上杉先輩がいるんですか?!」

「それはこっちのセリフだよ。女子を沢山引き連れて、何してんの?」
 上杉先輩はニヤつきながら、僕の後ろに続いて歩く、雪乃、妹の美咲、前田さん、丹羽さん、溝口さんを見て言った。

「僕はショートムービーの撮影があって学校に来てて…。次のシーンの撮影までの時間が空いたので、他の部活の見学をしてたんですよ、妹たちが見たいというので」

「へー。そうだったんだ。アタシは将棋のYouTubeの撮影だよ」

「そういえば、上杉先輩も撮影をするって言ってましたね…。今日だったんですね」

「そうだよ。今、終わったところ」

 続いて、将棋部の成田さんと、将棋部部長の十河先輩と新聞部部長の片倉先輩も教室から出て来た。

「いやー面白い撮影だったよ」
 片倉先輩が満足そうに言う。
「上杉さんもどんどん上達してるし、なんといってもギャルが将棋をしている画が良い!」

「上杉先輩は、物覚えが良いから教えるのも楽でいいです」
 成田さんも満足そうだ。

 上杉先輩は僕に近づいてきて尋ねた。
「キミのショートムービーの撮影、アタシたちも見学していいでしょ?」

「え、まあ…」
 キスシーンもあるから、あんまり見られたくないんだけどな。

「是非どうぞ!」
 雪乃は、僕とは真逆で、ノリノリで答えた。

 そんなこんなで、想定外のギャラリーが大勢増えてショートムービーの撮影が開始された。
 僕は、想定外のギャラリーのせいで滅茶苦茶緊張している。
 そのせいで、ラストシーンのいい場面なのに、何度もNGを出してしまった。
 キスシーンでNGを出すと言うことは、必要以上に雪乃とキスをしなければならず、それがさらに緊張を呼んで、結局10回以上雪乃とキスをした。

 上杉先輩はじめギャラリーは、ニヤつきながらそれを見ていた。
 妹は激怒しているようだけど、気にしないようにする。

 なんやかんやでクランクアップ。
 撮影チームの映画研究部員と演劇部員たちは撮影完了を拍手で祝う。
 僕も撮影が何とか終了したので、ホッと一息ついた。
 映画研究部は撮影機材の後片付けを始める。

「ねえ」
 上杉先輩が話しかけて来た。
「キミ、演技下手だね」

「しょうがないじゃあないですか、僕は演劇部じゃあないんですから」

「織田ちゃんが滅茶苦茶上手いから、その対比で下手さが目立つ」

 まあ、そうなんだろうな。
 白雪姫の時の映像も見たけど、僕自身が見ても演技はイマイチだったし。
 あの時からさほど進歩もしてないだろうからな。

「なんで、ショートムービーに出ることになったんですかー?」
 前田さんが質問した。

「僕が学校で有名人だから、映研が面白がってキャスティングしたんでしょ」

「なんで、有名人なんですかー?」

「それはね」
 上杉先輩が割り込んできた。
「去年、武田君がエロマンガを学校に持ち込んで炎上したからなんだよ」

「いやいやいやいや。エロマンガを持ち込んだのは上杉先輩じゃあないですか?!」

「そうだっけ?」

「そうですよ。とばっちりもいいとこですよ」

 上杉先輩は、生徒会長選挙の時、僕を謀略に巻き込んだのを全然反省してないだろう。まったく。

 次に妹が怒りながら話しかけて来た。
「NGをたくさん出してたけど、わざとでしょ?」

「わざとなわけないだろ」

「あの人とキスしたいから、わざとだ」

「ちがうって。お前たちがいるから余計に緊張して、NGを出してしまったんだよ」

「どーだか」
 妹は不満たらたらで、その後もずっとブツブツ言っていた。

 雪乃とキスしたければ、こんなギャラリーがたくさんいるところでなく、別のところでいくらでもできるからな。

 撮影機材の後片付けが終ると、映画研究部の朝倉部長が話しかけて来た。
「撮影した映像は春休み中に編集して、新学期に早々ぐらいに完成させて上映会をしようと思っているよ。その時は、改めて声を掛けるからね」

「わかりました」

 陽も暮れて来たので、一同は学校を後にした。
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