雑司ヶ谷高校 歴史研究部!!

谷島修一

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暁を覚えない春眠編

中の人

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 火曜日。
 登校し、授業を受け、あっという間に放課後。
 もう、歴史研の部室には行かず、帰宅した。

 自分の部屋で、久しぶりにVRMMORPG“色彩の大陸”をプレイする。
 スマホでアプリを立ち上げ、VRゴーグルにスマホをセットしてゲーム開始。
 少し間が空いてしまったので、カンを取り戻さないと。
 
 ゲームにログインする。
 すると、僕はVRの中の最初の街の広場に立っている。
 あたりを見ると、たくさんのプレイヤーがいるのが見える。
 そして、頭の上に吹き出しがあり、色んな言語でチャットしている様子がうかがえる。
 外国のプレイヤーとチャットする時は、AIが翻訳してくれるから特に問題はないらしい。
 と言っても僕はコミュ障なので誰とも話をしない。
 日本人だって会話は難しいのに、外国のプレイヤーとの会話は絶対無理だな。

 早速移動。
 初めの街の近くの草原で雑魚キャラを倒して、チマチマと経験値を稼ぐ。
 しかし、僕のレベルはそれなりに上がっているので、簡単にはレベルは上がらなくなっていた。

 たまに他のプレイヤーとすれ違うが、当然会話もない。
 近くにヒーラーの格好をしたダークエルフのプレイヤーがいるのが見えた。
 ヒーラーがたった1人でウロウロするのは危険なのでは?
 まあ、いいや。僕とは関係がない。

 経験値をもう少し稼ごうと思って、ちょっと奥地に行ってみようかなと考えた。
 いつもは悠斗と六角君が一緒なので安心なのだが、今日は彼らとはプレイする約束をしていない。
 ちょっと不安があるが1人で進んでみることにする。
 
 進んで奥の森へ進む。
 そう言えば、以前、クエストでUSO800っていう巨大熊が出て来たところだよな、ここは。
 今日はクエストは無いから、熊は出てこないはず。
 30分ばかり、森で現れるモンスターを倒す。
 それらは、なんとか倒せるけど、やっぱりダメージは受けるな。
 まだ致命傷ではないが、念のため街に戻ることにした。

 最初の街の近くに戻ってきた。
 もう、攻撃を食らってもダメージをほとんど受けない雑魚キャラしか出ないから大丈夫。
 ちょっと、時間をつぶして、HPが自動で回復するのを待つ。
 僕は貧乏高校生なので課金はしていない。だから、回復ポーションは買えないのだ。

 しばらくその場でたたずんでいると、音がしてHPが少し回復した。
 え? なんだ?
 あたりを見回すと、さっき見かけたヒーラーのダークエルフ。
 これ、辻ヒールってやつ?
 ダークエルフのプレイヤーは何度も回復してくれて、ほどなくHPは満タンとなった。
 さすがにお礼を言った方がいいよな…。
 僕は、チャットで話しかける。

『ど、どうもありがとう』

『いえ』

 僕は、相手のステータスを見る。 
 レベル1、始めたばかりなのかな?
 職業はヒーラー、名前は“ユミコ”になっている。
 日本人?
 そして、女?
 いやいや、早とちりは良くない、キャラは女でも、中はオジサンというのは良くある話だ。

 ユミコは話しかけて来る。
『こんばんは』

『こ、こんばんは』

 『私、始めたばかりの初心者なので、いろいろ教えてもらえないかな?』
 
 うーん…、どうしようかな?
 まあ、どうせ今日だけだろうし。
『いいよ。でも、あまり教えられるほどプレイしてないけどね』

『ありがとう』

 とりあえず、一緒にパーティを組んで、付近の雑魚キャラを倒してユミコさんのために経験値を稼いでいくことにした。
 1時間程プレイしたら、その間にユミコさんのレベルは何段階かアップした。

『ここで雑魚ばかり倒しても面白くないから、クエストとかやれば楽しいかもね』
 僕はアドバイスする。

『やってみたい』
 ユミコは答えた。

『そうか。いま、やれるクエストは何かあるかな』
 僕がインフォメーションから情報を探そうとしたら、いきなりVRゴーグルを外された。

 目の前に、怒り顔の妹が立っていた。
「お兄ちゃん! 晩ごはんだよ! 何度も呼んでるのに返事ないと思ったら、また遊んでる!」

「“また”って言われるほど、遊んでないだろ」

「エロいのしてたんでしょ?」

「してないよ。この前のRPGだよ」

「どうでもいいから、早くご飯食べに来なよ」

「わかったよ」
 
 妹が部屋を出て行くのを確認して、再びVRゴーグルをかぶって、ユミコさんに事情を話して、今日のところは解散とした。
 その前に、フレンド登録しようと言うことになり、悠斗、六角君以外に初めてフレンドが出来た。
 しかも、女子キャラ。
 でも、ユミコさん、オジサンなんだろうな…。
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