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暁を覚えない春眠編
ホワイトデー~その5
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学校を後にして、サンシャインシティへ向かう。
服飾部につきあっていたので、時間はだいぶ遅くなってしまった。
今日は、これから真帆にホワイトデーのクッキーを渡すために会う約束をしている。
サンシャインシティに着く前に、真帆がどこで待っているのか確認するために、歩きながらLINEアプリを立ち上げてメッセージを送る。
すぐに返事が来た。いつものマックにいるという。
僕は先を急ぐ。
数分後、マックに到着して一番安いドリンクを頼んで受け取ると、店内で真帆の姿を探す。
僕は、すぐに彼女を見つけることが出来た。
席には真帆だけでなく、O.M.G.のメンバーである龍造寺さんと宇喜多さんも一緒に居た。
真帆は僕に気が付くと手を振って挨拶をする。
「純ちゃん、こっちこっち」
「遅くなってごめん」
僕は彼女たちのいる席に着いた。
「大丈夫、みんなで打ち合わせをしてたから」
「そっか」
「それにしても、なんか久しぶりじゃない?」
「そう? 3週間ぶりぐらい?」
「先月までは毎週2回は会ってたじゃん?」
ライブの手伝いで1回、真帆に平日の放課後に呼び出されて1回。
習慣のようになっていた。
「そ、そうだったね。で、最近ライブはどう?」
「前にLINEでも言ったけど、純ちゃんがいなくて物販が大変だよー」
「だよねー。やっぱり、手伝いは必要だよねー」
宇喜多さんが相槌を打った。
「今月はショートムービーの撮影で忙しいんでしょ? 今月いっぱいはかかるんだっけ?」
真帆が質問をする。
「そうだよ」
「春休みは?」
「撮影は今週末と来週末の4日で終わる予定。だから、春休みは撮影はないよ」
「春休みは、お城巡りなんでしょ?」
「いや…、どうだろう?」
春休みの予定は何も伊達先輩に聞いていない。
今月は何かと忙しかったからな。
そもそも僕がお城巡りに参加するとも、しないとも考えていなかった。
参加しない方向で考えてはいるが。
「じゃあさ」
真帆が続ける。
「春休みに右寿のうちに遊びに行くんだけど、純ちゃんも来る?」
「え? いいの?」
「いいよ。大歓迎」
宇喜多さんが答えた。
「右寿のうち、豪邸だよ」
真帆が微笑んで言う。
「そうなんだ」
宇喜多さんは茶道をやっているって言っていたし、お金持ちの雰囲気がしたけど、本当にお金持ちなのか。
そうだ!
宇喜多さんのお姉さんに、久しぶりに会いたいなぁ。
僕がO.M.G.の手習いをすることになったのは、宇喜多姉とお近づきになりたいからだった。全然、達成できてないけど。
完全に、忘れてたな。
ひょっとしたら、宇喜多姉にも会えるかもしれない。
「じゃあ、行くよ」
僕は答えた。
春休みは、歴史研のお城巡りは放っておいて、宇喜多邸訪問を優先してもいいだろう。
「それで、なにか用だったんでしょ?」
真帆は話題を変えた。
そうだった。今日の本題はホワイトデーの件。
僕は、クッキーを2つ取り出して真帆に渡した。
「これ…、バレンタインのお返し。つまらないものだけど。1つは真帆に、もう1つはO.M.G.に」
同じクッキーが2つって芸がなかったな。
別の物にした方がよかったかな?
「ありがとう」
真帆はクッキーを受け取ると礼をいってくれた。
「1つは、右寿と佐和でわけなよ」
そう言って、真帆は龍造寺さんと宇喜多さんに1つ渡すと、2人も礼を言ってくれた。
「うちら女子校じゃない? だから、ホワイトデーとか全然盛り上がらないんだよねー」
真帆はクッキーの入った袋を見ると、ちょっと残念そうに言う。
「他の学校の生徒と交流は無いの?」
僕は尋ねた。
「人によっては、他の学校の男子と仲良くやっている人もいるけど、かなりの少数派はだよ」
「そっか」
「だから、この前、合コンのセッティングをお願いしたんじゃん?」
そういえば、そうだ。
以前、真帆たちにお願いされて、合コンをやったんだっけ。
女子はO.M.G.の3人で、男子は僕と悠斗と片倉先輩が参加したのだ。
「あの時の参加者と連絡を取り合ってないの?」
「全然」
龍造寺さんが答えた。
「片倉さんとは、SNSの運用の件でしばらくやり取りしてたけど、今は全然」
宇喜多さんはそう答えた。
「今度さあ」
龍造寺さんが前のめりになって話しかけて来た。
「また、合コンをセッティングしてよ」
「ええっ?! やだよ」
これまでに、O.M.G.の合コンと歴史研の合コンを2回セッティングしたことがあるが、大して楽しいと感じなかったからな。
そもそも友達のいない僕を幹事をさせるなんて、見る目がない。
その後も他愛のない話をして20分ほど過ごすと、もう時間もだいぶ遅くなったので解散することになった。
服飾部につきあっていたので、時間はだいぶ遅くなってしまった。
今日は、これから真帆にホワイトデーのクッキーを渡すために会う約束をしている。
サンシャインシティに着く前に、真帆がどこで待っているのか確認するために、歩きながらLINEアプリを立ち上げてメッセージを送る。
すぐに返事が来た。いつものマックにいるという。
僕は先を急ぐ。
数分後、マックに到着して一番安いドリンクを頼んで受け取ると、店内で真帆の姿を探す。
僕は、すぐに彼女を見つけることが出来た。
席には真帆だけでなく、O.M.G.のメンバーである龍造寺さんと宇喜多さんも一緒に居た。
真帆は僕に気が付くと手を振って挨拶をする。
「純ちゃん、こっちこっち」
「遅くなってごめん」
僕は彼女たちのいる席に着いた。
「大丈夫、みんなで打ち合わせをしてたから」
「そっか」
「それにしても、なんか久しぶりじゃない?」
「そう? 3週間ぶりぐらい?」
「先月までは毎週2回は会ってたじゃん?」
ライブの手伝いで1回、真帆に平日の放課後に呼び出されて1回。
習慣のようになっていた。
「そ、そうだったね。で、最近ライブはどう?」
「前にLINEでも言ったけど、純ちゃんがいなくて物販が大変だよー」
「だよねー。やっぱり、手伝いは必要だよねー」
宇喜多さんが相槌を打った。
「今月はショートムービーの撮影で忙しいんでしょ? 今月いっぱいはかかるんだっけ?」
真帆が質問をする。
「そうだよ」
「春休みは?」
「撮影は今週末と来週末の4日で終わる予定。だから、春休みは撮影はないよ」
「春休みは、お城巡りなんでしょ?」
「いや…、どうだろう?」
春休みの予定は何も伊達先輩に聞いていない。
今月は何かと忙しかったからな。
そもそも僕がお城巡りに参加するとも、しないとも考えていなかった。
参加しない方向で考えてはいるが。
「じゃあさ」
真帆が続ける。
「春休みに右寿のうちに遊びに行くんだけど、純ちゃんも来る?」
「え? いいの?」
「いいよ。大歓迎」
宇喜多さんが答えた。
「右寿のうち、豪邸だよ」
真帆が微笑んで言う。
「そうなんだ」
宇喜多さんは茶道をやっているって言っていたし、お金持ちの雰囲気がしたけど、本当にお金持ちなのか。
そうだ!
宇喜多さんのお姉さんに、久しぶりに会いたいなぁ。
僕がO.M.G.の手習いをすることになったのは、宇喜多姉とお近づきになりたいからだった。全然、達成できてないけど。
完全に、忘れてたな。
ひょっとしたら、宇喜多姉にも会えるかもしれない。
「じゃあ、行くよ」
僕は答えた。
春休みは、歴史研のお城巡りは放っておいて、宇喜多邸訪問を優先してもいいだろう。
「それで、なにか用だったんでしょ?」
真帆は話題を変えた。
そうだった。今日の本題はホワイトデーの件。
僕は、クッキーを2つ取り出して真帆に渡した。
「これ…、バレンタインのお返し。つまらないものだけど。1つは真帆に、もう1つはO.M.G.に」
同じクッキーが2つって芸がなかったな。
別の物にした方がよかったかな?
「ありがとう」
真帆はクッキーを受け取ると礼をいってくれた。
「1つは、右寿と佐和でわけなよ」
そう言って、真帆は龍造寺さんと宇喜多さんに1つ渡すと、2人も礼を言ってくれた。
「うちら女子校じゃない? だから、ホワイトデーとか全然盛り上がらないんだよねー」
真帆はクッキーの入った袋を見ると、ちょっと残念そうに言う。
「他の学校の生徒と交流は無いの?」
僕は尋ねた。
「人によっては、他の学校の男子と仲良くやっている人もいるけど、かなりの少数派はだよ」
「そっか」
「だから、この前、合コンのセッティングをお願いしたんじゃん?」
そういえば、そうだ。
以前、真帆たちにお願いされて、合コンをやったんだっけ。
女子はO.M.G.の3人で、男子は僕と悠斗と片倉先輩が参加したのだ。
「あの時の参加者と連絡を取り合ってないの?」
「全然」
龍造寺さんが答えた。
「片倉さんとは、SNSの運用の件でしばらくやり取りしてたけど、今は全然」
宇喜多さんはそう答えた。
「今度さあ」
龍造寺さんが前のめりになって話しかけて来た。
「また、合コンをセッティングしてよ」
「ええっ?! やだよ」
これまでに、O.M.G.の合コンと歴史研の合コンを2回セッティングしたことがあるが、大して楽しいと感じなかったからな。
そもそも友達のいない僕を幹事をさせるなんて、見る目がない。
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