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暁を覚えない春眠編
ホワイトデー~その3
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途中、寄り道をしてしまったが、やっとたどり着いた2年D組の教室前。
教室の扉は空いているが、中に入るのはちょっと気が引ける。
しかも、鍋島さんの顔を知らなかった…。
困った。
しばらく教室前にいると、教室の中から声を掛けて来る人物。
「武田君!」
扉のところまでやって来てくれたのは新聞部部長の片倉先輩。
この前、聞きに行ったとき、鍋島さんと同じクラスだと言ってたな。
助かった。
「片倉先輩。こんにちは」
「どうしたの? “P”について何か動きがあったのかい?」
「いえ、違います…。新聞部のほうでは何かつかめたんですか?」
「いや、まだだよ。昼休みも下駄箱のほうは何人かで監視してるよ」
「そうですか」
「放課後に服飾部に行くって言ってたよね?」
「はい…。今、聞いたのですが、今日の放課後は片倉先輩は将棋部に行くとか」
「うん。ちょうどYouTubeの企画がまとまったのでね」
「上杉先輩と成田さんの将棋対決って、成田さんの圧勝なんじゃあ?」
「内容的には、成田さんが上杉さんに将棋を教えるっていうものだよ。ギャルが将棋やるっていう意外性が受けるんじゃあないかと思ってね」
「なるほど。そう言うことなんですね」
確かに意外性はありそうだ。
しかし、上杉先輩の存在自体が放送事故みたいにならなければいいけど。
「よかったら、服飾部のほうが終わったら、将棋部の部室に来なよ」
「ええ…。考えておきます」
多分、行かない。
それより本題、本題。
「あの…。鍋島さんはどの人ですか?」
「鍋島さん? ああ、そう言えば、この前、捜してるって言ってたね。何の用なの?」
「ちょっと、渡したいものがあって」
「ははーん。ホワイトデーかい?」
「ええ、まあ…」
「ということは、鍋島さんが武田君にチョコをあげたということだね」
そう推理すると、片倉先輩はニヤリと笑った。
片倉先輩にまたゴシップネタ?を掴まれてしまったな。
しょうがない。
「そういうことなので、お返しでクッキーを渡そうと思って…。すみませんが、鍋島さんを呼んで来てもらえると助かります」
「いいよ」
片倉先輩は快諾してくれた。
一度教室の中に入ると、女子生徒を連れてきてくれた。
黒髪ロングで黒縁メガネの地味な女子。
この人が鍋島さんか。雰囲気が毛利さんに似てるかも。
「こんにちは」
鍋島さんは僕を見ると、小声で挨拶してきた。
「こ、こんにちは」
僕は少々緊張しつつも挨拶を返す。
その隣でニヤつきながら見守る片倉先輩。
片倉先輩を気にしないようにクッキーの入った袋を手渡した。
「これ…、ホワイトデーのクッキーです」
「あ、ありがとう」
鍋島さんはお礼を言ってくれた。
片倉先輩が横で聞き耳を立てているので、あまり話ができない。
なぜ、鍋島さんがチョコをくれたのか聞きたかったが、この場は去ろう。
「じゃあ、これで」
とりあえず、任務完了だ。
片倉先輩、僕と鍋島さんとのこと、絶対にXに投稿するよな…。
教室の扉は空いているが、中に入るのはちょっと気が引ける。
しかも、鍋島さんの顔を知らなかった…。
困った。
しばらく教室前にいると、教室の中から声を掛けて来る人物。
「武田君!」
扉のところまでやって来てくれたのは新聞部部長の片倉先輩。
この前、聞きに行ったとき、鍋島さんと同じクラスだと言ってたな。
助かった。
「片倉先輩。こんにちは」
「どうしたの? “P”について何か動きがあったのかい?」
「いえ、違います…。新聞部のほうでは何かつかめたんですか?」
「いや、まだだよ。昼休みも下駄箱のほうは何人かで監視してるよ」
「そうですか」
「放課後に服飾部に行くって言ってたよね?」
「はい…。今、聞いたのですが、今日の放課後は片倉先輩は将棋部に行くとか」
「うん。ちょうどYouTubeの企画がまとまったのでね」
「上杉先輩と成田さんの将棋対決って、成田さんの圧勝なんじゃあ?」
「内容的には、成田さんが上杉さんに将棋を教えるっていうものだよ。ギャルが将棋やるっていう意外性が受けるんじゃあないかと思ってね」
「なるほど。そう言うことなんですね」
確かに意外性はありそうだ。
しかし、上杉先輩の存在自体が放送事故みたいにならなければいいけど。
「よかったら、服飾部のほうが終わったら、将棋部の部室に来なよ」
「ええ…。考えておきます」
多分、行かない。
それより本題、本題。
「あの…。鍋島さんはどの人ですか?」
「鍋島さん? ああ、そう言えば、この前、捜してるって言ってたね。何の用なの?」
「ちょっと、渡したいものがあって」
「ははーん。ホワイトデーかい?」
「ええ、まあ…」
「ということは、鍋島さんが武田君にチョコをあげたということだね」
そう推理すると、片倉先輩はニヤリと笑った。
片倉先輩にまたゴシップネタ?を掴まれてしまったな。
しょうがない。
「そういうことなので、お返しでクッキーを渡そうと思って…。すみませんが、鍋島さんを呼んで来てもらえると助かります」
「いいよ」
片倉先輩は快諾してくれた。
一度教室の中に入ると、女子生徒を連れてきてくれた。
黒髪ロングで黒縁メガネの地味な女子。
この人が鍋島さんか。雰囲気が毛利さんに似てるかも。
「こんにちは」
鍋島さんは僕を見ると、小声で挨拶してきた。
「こ、こんにちは」
僕は少々緊張しつつも挨拶を返す。
その隣でニヤつきながら見守る片倉先輩。
片倉先輩を気にしないようにクッキーの入った袋を手渡した。
「これ…、ホワイトデーのクッキーです」
「あ、ありがとう」
鍋島さんはお礼を言ってくれた。
片倉先輩が横で聞き耳を立てているので、あまり話ができない。
なぜ、鍋島さんがチョコをくれたのか聞きたかったが、この場は去ろう。
「じゃあ、これで」
とりあえず、任務完了だ。
片倉先輩、僕と鍋島さんとのこと、絶対にXに投稿するよな…。
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