363 / 433
暁を覚えない春眠編
編集会議
しおりを挟む
翌日。
火曜日の放課後。
今日はホワイトデーのクッキーを渡すため、顔を知らない一条さん、鍋島さん、蜂須賀さん、山名さんの4人が、どのクラスまたは部活にいるのか確認しようと思っている。
そこで考えた。
学校内の生徒を良く知っているのは新聞部だ。
新聞部の片倉部長に聞けば4人の所在が分かるはずだ。
という訳で、授業が終わったら後片付けをし、新聞部に行こうと立ち上がった。
そこで服部さんに声を掛けられた。
「武田君」
服部さんは服飾部。
怪文書の差出人“P”が服飾部から何か盗むかもしれないということで、昨日、注意をしたのだ。
「なに?」
僕は返事をした。
「昨日の話なんだけど、みんなに話すと、怖がっちゃって…。それで、武田君にお願いなんだけど、14日当日、服飾部の部室に来てくれないかな?」
「え? 別にいいけど…。14日は、活動は休みにすればいいんじゃない?」
「作らなきゃいけない衣装の締め切りが迫っていて、1日でも惜しいのよ」
「そうか…。じゃあ、良いよ。14日の放課後だね」
「うん。ありがとう」
服部さんは安堵した表情で教室を出て行った。
そのやり取りを隣の席で聞いていた毛利さんが尋ねた。
「どうしたの?」
僕は経緯を詳しく話した。
かくかくしかじか。
「……、だから、もし“P”が来れば、つかまえられるかもしれないしね」
「そっか…」
毛利さんはなんか言いたそうだったが、話を変えた。
「今日、私は図書委員だから行くね」
「え? うん。じゃあ、また明日」
さて、僕は新聞部に行かないと。
教室を出て、部室棟の新聞の部室へやって来た。
扉をノックして中に入る。
今日は、部員のほとんどが部室にいるようだ。
ホワイトボードの前には片倉部長が立っていて、部員たちはホワイトボードを取り囲むようにパイプ椅子を並べて座っている。
何やら打ち合わせをしているようだった。
片倉部長は僕に気付くと声を掛けて来た。
「やあ、武田君。何か用かい?」
「ちょっと、聞きたいことがあって…」
「そうか。これから編集会議だから、中でちょっと待っててよ」
「見てて、いいんですか?」
「いいとも。別に秘密会議じゃあないからね。次号の学校新聞の進捗の確認するんだよ」
「じゃあ、遠慮せず見学します」
僕は、壁に立てかけられているパイプ椅子を広げて座って、部員たちの後ろでホワイトボードに向いて座った。
会議の内容は、いつもの片倉部長とは思えないような、真面目な内容。
学校新聞だから、ふざけた内容は掲載できないからな。
山岳部がどうとか、陸上部がどうとか、美術部がどうとかやっている。
僕はあまり興味がないので、途中からスマホをいじっていた。
結局、1時間程待たされた。
「お待たせ」
片倉部長が僕に話しかけて来た。
「それで、何の用?」
一条さん、鍋島さん、蜂須賀さん、山名さんの4人の件の前に、服飾部の件を話しておこう。
「実は、14日、服飾部で張り込もうとかと思っています」
「“P”の件かい?」
「そうです。“CROWN”がミスコンの王冠のことかもしれないので」
「まだ、次回の学園祭の王冠は無いよね?」
「ないですが、念のためです」
「なるほどね。こっちはこっちでやっておくよ」
「下駄箱ですね?」
「そう。他にも考えがあるけどね」
「そうなんですか?」
ちょっと気になるが、片倉部長はそれ以上語らなかった。
僕は本題に入る。
「ところで…、人を探しているんですが、片倉部長ならご存知かもしれないと思って」
「人探し?」
「ええ。一条さん、鍋島さん、蜂須賀さん、山名さんの4人なんですが…」
「蜂須賀さんは美術部だよ。今、会議で話してたろ?」
全然聞いてなかった…。
「そ、そ、そうでした。すみません」
「彼女は1年生だけど、絵の才能が天才的なんだよ。ちょっと変わり者だけどね」
「変わり者?」
「芸術家には、よくある、“あれだよ」
あれ?
良く分からないが、まあいいや。
片倉部長は話を続ける。
「あと…、鍋島さんは、同じクラスにいるな」
「何組でしたっけ?」
「2年D組」
「そうですか。ありがとうございます。一条さんと山名さんは、いかがでしょうか?」
「その2人は知らないなあ」
「そうですか…。でも、助かりました。ありがとうございました」
僕は礼を言って、新聞部を後にした。
4人中2人はわかったな。
さすがの片倉部長でも、全生徒は知らないか。
さて、あとの2人は、どうやって探そうかな。
火曜日の放課後。
今日はホワイトデーのクッキーを渡すため、顔を知らない一条さん、鍋島さん、蜂須賀さん、山名さんの4人が、どのクラスまたは部活にいるのか確認しようと思っている。
そこで考えた。
学校内の生徒を良く知っているのは新聞部だ。
新聞部の片倉部長に聞けば4人の所在が分かるはずだ。
という訳で、授業が終わったら後片付けをし、新聞部に行こうと立ち上がった。
そこで服部さんに声を掛けられた。
「武田君」
服部さんは服飾部。
怪文書の差出人“P”が服飾部から何か盗むかもしれないということで、昨日、注意をしたのだ。
「なに?」
僕は返事をした。
「昨日の話なんだけど、みんなに話すと、怖がっちゃって…。それで、武田君にお願いなんだけど、14日当日、服飾部の部室に来てくれないかな?」
「え? 別にいいけど…。14日は、活動は休みにすればいいんじゃない?」
「作らなきゃいけない衣装の締め切りが迫っていて、1日でも惜しいのよ」
「そうか…。じゃあ、良いよ。14日の放課後だね」
「うん。ありがとう」
服部さんは安堵した表情で教室を出て行った。
そのやり取りを隣の席で聞いていた毛利さんが尋ねた。
「どうしたの?」
僕は経緯を詳しく話した。
かくかくしかじか。
「……、だから、もし“P”が来れば、つかまえられるかもしれないしね」
「そっか…」
毛利さんはなんか言いたそうだったが、話を変えた。
「今日、私は図書委員だから行くね」
「え? うん。じゃあ、また明日」
さて、僕は新聞部に行かないと。
教室を出て、部室棟の新聞の部室へやって来た。
扉をノックして中に入る。
今日は、部員のほとんどが部室にいるようだ。
ホワイトボードの前には片倉部長が立っていて、部員たちはホワイトボードを取り囲むようにパイプ椅子を並べて座っている。
何やら打ち合わせをしているようだった。
片倉部長は僕に気付くと声を掛けて来た。
「やあ、武田君。何か用かい?」
「ちょっと、聞きたいことがあって…」
「そうか。これから編集会議だから、中でちょっと待っててよ」
「見てて、いいんですか?」
「いいとも。別に秘密会議じゃあないからね。次号の学校新聞の進捗の確認するんだよ」
「じゃあ、遠慮せず見学します」
僕は、壁に立てかけられているパイプ椅子を広げて座って、部員たちの後ろでホワイトボードに向いて座った。
会議の内容は、いつもの片倉部長とは思えないような、真面目な内容。
学校新聞だから、ふざけた内容は掲載できないからな。
山岳部がどうとか、陸上部がどうとか、美術部がどうとかやっている。
僕はあまり興味がないので、途中からスマホをいじっていた。
結局、1時間程待たされた。
「お待たせ」
片倉部長が僕に話しかけて来た。
「それで、何の用?」
一条さん、鍋島さん、蜂須賀さん、山名さんの4人の件の前に、服飾部の件を話しておこう。
「実は、14日、服飾部で張り込もうとかと思っています」
「“P”の件かい?」
「そうです。“CROWN”がミスコンの王冠のことかもしれないので」
「まだ、次回の学園祭の王冠は無いよね?」
「ないですが、念のためです」
「なるほどね。こっちはこっちでやっておくよ」
「下駄箱ですね?」
「そう。他にも考えがあるけどね」
「そうなんですか?」
ちょっと気になるが、片倉部長はそれ以上語らなかった。
僕は本題に入る。
「ところで…、人を探しているんですが、片倉部長ならご存知かもしれないと思って」
「人探し?」
「ええ。一条さん、鍋島さん、蜂須賀さん、山名さんの4人なんですが…」
「蜂須賀さんは美術部だよ。今、会議で話してたろ?」
全然聞いてなかった…。
「そ、そ、そうでした。すみません」
「彼女は1年生だけど、絵の才能が天才的なんだよ。ちょっと変わり者だけどね」
「変わり者?」
「芸術家には、よくある、“あれだよ」
あれ?
良く分からないが、まあいいや。
片倉部長は話を続ける。
「あと…、鍋島さんは、同じクラスにいるな」
「何組でしたっけ?」
「2年D組」
「そうですか。ありがとうございます。一条さんと山名さんは、いかがでしょうか?」
「その2人は知らないなあ」
「そうですか…。でも、助かりました。ありがとうございました」
僕は礼を言って、新聞部を後にした。
4人中2人はわかったな。
さすがの片倉部長でも、全生徒は知らないか。
さて、あとの2人は、どうやって探そうかな。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
如月さんは なびかない。~クラスで一番の美少女に、何故か告白された件~
八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」
ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。
蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。
これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。
一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)
チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。
主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。
ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。
しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。
その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。
「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」
これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる