雑司ヶ谷高校 歴史研究部!!

谷島修一

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暁を覚えない春眠編

イチャつくだけのムービー

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 歴史研の部室で行われた、先輩たちへの卒業祝い&お別れパーティーの後、僕は1人で図書室に向かう。
 今日は、毛利さんの誕生日で、この後、サプライズを仕掛けようということになっている。
 当の毛利さんは図書委員の仕事で、しばらくは図書室に居る。
 雪乃の書いたシナリオでは、 僕が毛利さんの図書委員の仕事終わるのを待って、毛利さんを自宅に誘う流れになっている。

 図書室に入室すると受付に毛利さんのほかにもう1人、2年生の図書委員が並んで座って受付をやっていた。
 図書室の中を見回すと、利用者は少ない様子。まあ、今日は卒業式だったからな。

 僕は受付に、対応すべき利用者がいないのを見て毛利さんに声をかけた。
「毛利さん、今日、図書委員の後、用事ある?」

「ううん、ないよ。どうして?」

「ちょっと、相談したいことがあって」

「わかった…。でも、終わるまで、まだ結構時間あるよ」

「いいよ、ここで本でも読んで待っているよ」

 僕はそう言って、受付を離れて本棚の方へ向かった。
 毛利さんとは今日、誕生日の話を全然しなかったが、薄々、サプライズでお祝いされると感じているんだろうな。
 しかし、サプライズの内容まではわかるまい。
 雪乃の考えたサプライズ、あのシナリオ通りにやるのは少々抵抗あるのだが。

 僕は特に読みたい本が無かったので、本棚からお城の写真集を取り出して、適当な席に着きパラパラとお城の写真を眺めていると、聞きなれない声で名前を呼ばれた。

「武田君」

 僕は顔を上げる。
 側に暗めの茶髪をポニーテールにしている、やや表情の乏しい女子生徒が立っていた。
 執筆部の森さんだ。
 彼女とは、ショートムービーの打ち合わせとかで顔を合わせることは数回あったが、ほとんど話をしたことが無かった。
 ミステリー小説を得意をする彼女自身も、少々ミステリアスな雰囲気を醸し出している。占い研の松前先輩もミステリアスだが、その雰囲気とはどこか少し違う。

 初めて彼女に声をかけられたので、僕は少々驚いて返事をした。
「あ、ああ…。森さん、どうも…」

「ムービーの撮影の方はどう?」

 今回のムービーのシナリオは、執筆部の別の部員である堀君が書いたので、森さんは撮影に立ち会っていなかった。
 なので、撮影の進捗は知らないのだろう。

「順調に楽しくやっているよ」
 僕は答えた。

「武田君と織田さんがイチャつくだけのムービーだもんね。そりゃあ、楽しいでしょ」

「『だけ』というわけではないと思うけど…。それに、ラブコメってあんなもんでは? ところで、森さんはラブコメは書かないの?」

「私は、ミステリーがほとんどね。以前、他のジャンルも書いたことがあるけど、書いててあまり楽しくないから書かない」

「あ、そう」

 森さんは話題を変える。
「ミステリーと言えば、Xで見たけど新聞部が何かやってるじゃない?」

「え? 新聞部…? そうか、怪文書のことだね」

「武田君もかかわっているんでしょ?」

「うん。もともと、一番初めの怪文書は生徒会に届いたんだよ、それから新聞部の協力を得て、謎の解明をやっている」

「ふーん」

「そうだ! 森さんはミステリーが得意なら、怪文書の謎解きもできるんじゃない? よかったら、森さんにも協力をお願いできないかな?」

「自分で犯罪の仕掛けを考えられても、他人の考えた仕掛けを解けるわけではないわ。それに、自分の執筆活動が忙しくて、ほかのことにあまり時間を割けないし」

「そうか…、残念。僕らとしては、協力者が多ければ多いほどありがたいんだけど…。そういう事情なら仕方ないね」

「謎の解明は、大人数でやってるの?」

「新聞部以外には、僕と毛利さんと成田さん。なので10名程度だよ」

「ふーん」
 森さんは、あまり興味なさそうに返事をした。

 僕らはそこで会話を終了し、森さんは図書室から去っていった。
 さらに1時間ほど経ち、図書室が閉室の時間となった。
 毛利さんが後片付けを終えるのを待って、図書室の扉の外で合流した。

「相談したいことって何?」
 毛利さんは訪ねた。

「うん。ここじゃあなんだから、うちに来ない?」

「いいよ」

 というわけで、僕と毛利さんは今日も僕の部屋にやってきた。
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