雑司ヶ谷高校 歴史研究部!!

谷島修一

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暁を覚えない春眠編

卒業式

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 金曜日。
 今日は卒業式がある。
 卒業するのはもちろん3年生なのだが、1、2年生も列席しなければならず、体育館へ。
 卒業式では、校長のありがたい話や、生徒会長である伊達先輩からの送辞、卒業生からの答辞、卒業証書を3年生の渡す儀式などがあり、1時間半ばかり拘束された。
 ただ、今日は卒業式だけで、授業はないのでちょっと嬉しい。

 卒業生が先に体育館を後にして、卒業式はつつがなく終了。
 式が終わった後は、体育館の外、校舎の近くや、校門付近で別れを惜しむ卒業生、在校生であふれていた。
 僕はと言えば、歴史研に在籍していた卒業生、大友先輩と南部先輩が部室にやって来て、残る歴史研のメンバーと簡単に卒業祝いをやろうということになっていた。

 という訳で、部室に歴史研のメンバーが集合した。
 ただし、毛利さんは図書委員の仕事で、図書室に行ってしまっているので欠席。
 僕がコンビニまで飲み物とお菓子をパシって購入。
 部室に戻ると、それを机の上に展開する。

 とりあえず、乾杯となった。
 皆、ジュースを注いだ紙コップを手にし、伊達先輩が音頭をとる。
「では、大友先輩と南部先輩、ご卒業おめでとうございます」

「「ありがとう」」
 大友先輩と南部先輩は答えた。

 大友先輩は、歴史研の部室には似つかわしくない、爽やかなイケメン。
 南部先輩は、背が高く、ショートカットでボーイッシュ。
 彼らとは学校では校舎内でたまにすれ違って挨拶するぐらいで、絡みは全然なかったよな。
 大友、南部両先輩は、伊達、上杉両先輩に比べて、常識人っぽいから、もうちょっと絡んでみたかったが。

 そう言えば、この2人、つきあっているんだっけ。
 卒業したら、どうするんだろ?

 伊達先輩が2人に話しかける
「お2人とも、大学は志望校に受かって良かったですね」

「うん。なんとかね」
 大友先輩は苦笑した。

 僕も思い切って尋ねる。
「大学は別々なんですか?」

「そうだよ。残るみんなも進学するんだろ? あ、いや、上杉さんはしないんだっけ?」

「え、ええ…」
 上杉先輩はテンション低めで答えた。
 おや? 上杉先輩、どうしたんだ?
 いつものハイテンションは?

 続いて、伊達先輩も答える。
「私も学費を自分で捻出しないといけないから、1年間家庭教師のバイトで学費を稼ぎます」

「ということは、1浪になるのか…。家族とは仲悪いままだんだね」
 大友先輩は申し訳なさそうに言った。

「ええ。関係修復は不可能です」
 伊達先輩はそう言うと紙コップのジュースを飲み干した。

「武田君は?」
 大友先輩は僕にも尋ねて来た。

「は、はい。進学したいと思っています。ただ、興味のある学部が無くて」

「歴史には、あまり興味ないんだっけ?」

「ええ、まあ…」

「そうか、歴史研には無理やり入部させられたって言ってたよね」
 大友先輩はそう言って笑った。

「ちなみに歴史を学びたいとしたら、何学部になるんですか?」

「文学部。僕も大学では文学部で歴史を学ぶよ」

「大友先輩は、元々歴史に興味あるから、高校でも歴史研に入ったんですよね?」

「そうだよ」

 まあ、本来こういう人が、歴史研にいるべきなんだろうな。

 伊達、上杉両先輩は、イケメンの歴史武将に口説かれるスマホの乙女ゲームで歴史に興味持ったとか言ってたっけ。
 毛利さんは、日本の歴史に少し興味あるって言っていた。

 その後も、僕らは別れを惜しむ。そして、1時間程度で集まりは解散となった。

「次期部長は、武田君なんだろ? 後はよろしくな」
 大友先輩は、そう言って南部先輩と一緒に部室を後にした。
 僕には部長職は荷が重い…。

 残された3人は後片付けをする。
 この後は、毛利さんのサプライズ誕生パーティをやることになっている。
 サプライズの内容は、一昨日、雪乃が書いた台本があって、僕は気が進まないが、その通りに実行される。
 毛利さんはまだしばらく図書室に居るので、僕が迎えに行くことになっていた。
 という訳で、僕は、部室を後にして図書室に向かった。
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