雑司ヶ谷高校 歴史研究部!!

谷島修一

文字の大きさ
上 下
330 / 443
チョコレート狂騒曲編

10枚落ち再び

しおりを挟む
 新聞部の部室を後にした僕と毛利さんと成田さんは下駄箱で靴を履き替えて、校舎を出た。
 そこで、毛利さんが話しかけて来た。
「武田君、この後、暇?」

「うん。暇」

「じゃあ、どこか行かない?」

「うーん、そうだな…」
 僕は少し考えを巡らせる。
 以前にも行った雑司が谷のレトロな喫茶店が良いか?
 いや、ちょっと財布の中身を節約したい。
 来月のホワイトデーのお返しが12個分もあるからな…。
 そこで、提案する。
「じゃあさ。うちに来ない?」

「うん」
 毛利さんは微笑んで答えた。

 そのやり取りを聞いて、成田さんが笑いながら話しかけて来た。
「おふたりは、お付き合いをしているんですか?」

「いやいやいやいや。付き合ってないよ」
 僕は、そんなことを聞かれると思わなかったので、驚いて否定した。

「でも、簡単におうちに誘うなんて、つきあっているとしか…」

「毛利さんは、しょっちゅう一緒に勉強したりとかで良く来ているけど、付き合ってるとかじゃあないよ」

「へー。そうなんですね」
 成田さんは笑っている。

 これは、疑っているな。

「じゃあ、成田さんもこれから、うちに来なよ」
 僕は誘ってみた。

「えっ?! いいんですか? おふたりの密会を邪魔しちゃ悪いですよ」

「いや、密会じゃないし。僕と毛利さんが、どういう風にうちで過ごしているか見てみると良いよ」

「そうですね…。ちょっと興味があるのでお呼ばれに応じます」

 そんなわけで、3人で学校から徒歩5分の自宅にやってきた。
 推理大会で少し遅くなったので、妹が先に帰ってきているようだが、鉢合わせると何かと五月蝿いので、3人をさっさと自室に招いた。

 成田さんは僕の部屋に入ると、あちこち見回す。
 エロい本とかは見えないところに隠しているはず。

「私、男の子の部屋に来るの初めてです」
 成田さんは感心したように見回している。

「そんなに見回しても何もないよ」
 ベッドと壁の隙間とか覗かないでよ、エロマンガが隠してあるから。

「これは…。将棋盤ですね」
 成田さんは机の上に置いてあった、マグネット将棋盤を見つけて言った。
「久しぶりに、一戦どうですか?」

 ボロ負け確定なのは、間違いない…。
 しかし、折角だから対戦してもらうか。

 という訳で、ローテーブルに将棋盤を置いて、僕と成田さんは対峙して座る。
 今回も10枚落ちで対局する。
 毛利さんは横から見学。

 約15分後。

 やっぱり、また負けた…。
 成田さん、ちょっとは手加減してよ…。

 感想戦をやっていると、部屋の扉をノックする音が。
「どうぞ」
 僕は答える。

 妹の美咲がジュースの入ったコップの載ったトレイを持ってきた。
「お兄ちゃん、またジュース出してないでしょ」

「お、おう…。すまないな」

 妹はコップをローテーブルの上に置く。
「毛利さん、こんにちは。そちらは、えーっと…」

「はじめまして、成田と言います」
 成田さんは笑顔で自己紹介をする。

「あっ、はじめまして…? 私は、この冴えない男の妹で、美咲と言います…。成田さんって、どこかでお会いしたことなかったでしたっけ?」

「多分、初めてだと思いますけど」

「そうですか…」
 妹は首を傾げながら部屋を出て行く。
「じゃあ、ごゆっくり~」

 妹を見送った後、成田さんが言う。
「妹さん、あまり似てないですね」

 その話は、もういいよ。

 その後は世間話をする。話題は来週は試験について。
 聞くと成田さんは成績上位者なんだそうな。
 頭が良いから、将棋も強いのか…。

 しばらく勉強について話をしていると、毛利さんが提案してきた。
「明日か明後日、一緒に勉強しない?」
 この土日は、O.M.G.の細川さんたちの東池女子校も試験期間で、その対策勉強でライブはやらないので、時間はある。
 なので、その提案に乗った。
「いいよ。じゃあ、明日もうちに来る? それとも、僕が毛利さんちに行こうか?」

「私が、ここに来るよ」

「OK」

 そんなこんなで、小一時間ほどして会話が一段落すると毛利さんと成田さんは帰宅していった。

 夜、1階の居間で妹と鉢合わせた。
 妹が話しかけて来る。
「さっきの成田さんって人、本当に初めてうちに来た?」

「そうだよ」

「どこかで見たことあるんだよなー。どこだっけ?」

「お前の勘違いじゃないのか? それとも、たまたま町で見かけたとか?」

「うーん、そうなのかなー…」
 妹はしばらく考え込んでいた。

 でも、妹が成田さんを見て『また、新しい女を連れ込んで来た』とか言うかと思ったけど、そんなことなくてよかったよ。
 良く分からんが、妹は成田さんのことで悩んでいてくれ。

 先ほど、来週からの試験の話も出たし、成績が気になる僕は寝るまで少しだけ勉強することにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

処理中です...