雑司ヶ谷高校 歴史研究部!!

谷島修一

文字の大きさ
上 下
322 / 440
チョコレート狂騒曲編

バレンタインデー~その1

しおりを挟む
 そして、さらに翌日。
 バレンタインデー。
 僕にとって中学だった去年までは、全く関係のないイベントだったが、今年は違う。雪乃と毛利さんからは、もらえそうだからな。多分。

 登校して校舎に入り、げた箱あたりから男子どもが浮足立ているのがよくわかった。
 近くで、誰かのげた箱にチョコが入っていたらしく、歓喜の声を上げる男子がいる。
 僕は、それを横目にげた箱の扉を開けた。
 すると見覚えのある封筒が入っていた。
 これは、上杉先輩か…。
 中には、『今日、部室に来い』という指令が書いてあるのだろう。
 その封筒を取り上げると、さらにその下に別の封筒が…。

 おや?

 僕は見慣れない封筒を取り上げた。
 薄いピンク色の封筒に、『武田純也様へ』と書いてある。
 宛名の筆跡は、上杉先輩じゃあないみたいだけど…。
 裏に差出人の名前はない。
 誰の手紙だろう?

 とりあえず、上杉先輩の手紙と、謎の手紙をポケットに入れる。
 毛利さんが登校してきたので、一緒に教室に向かう。

 教室も、いつもと雰囲気が違う。
 女子たちが友チョコを配り合ったり、数人の男子にチョコを渡したりしている。
 教室の半数近い男子がチョコと縁遠いようで、厭戦気分の様子。

 僕は自分の席に座る。
 早速、雪乃が近づいてきた。そして、赤い包みを差し出した。
「はい、純也。バレンタインチョコ」
 そして、微笑みながら言う。
「もちろん、本命チョコだから」

「お、おう…。ありがとう」

 雪乃は用件が終わるとすぐに立ち去って、陽キャ友達の輪に入っていく。

 隣の席の毛利さんにも声を掛けられた。
「私も、チョコ、あげる」
 そう言って、青いリボンのついた白い箱を手渡してきた。

「お、おう…。ありがとう」

 毛利さん、何も言わないけど、本命だよな…? 多分。
 想定していたとは言え、雪乃と毛利さんからチョコがもらえてちょっと嬉しい。

 そうこうしていると、悠斗が登校してきた。
 彼は両手に紙袋を持っている。どうやら中には、さっそく、もらったチョコが大量に入っているようだ。さすが、悠斗だな。
 日頃からのモテっぷりの上、中学の時も毎年チョコを大量にもらっていたので、この光景は予想できた。

 毛利さんがすっくと立ちあがって、悠斗に近づいてチョコを渡しているようだ。
 最近は、毛利さんと悠斗が会話をしているところを全然見たことが無かったので、僕は予想外でちょっと驚いた。
 1学期の頃は、僕と悠斗と毛利さんの3人で昼休みに弁当を一緒に食べることもあったけど、最近の悠斗は他の仲間と昼休みは過ごしている。

 僕は毛利さんを目で追う。
 悠斗と毛利さんは何か会話しているようだが、離れているのでその内容は聞こえなかった。
 あれって、義理チョコだよな…?
 いや、あれが仮に本命チョコだったとしても、僕に何かを言う権利はない。
 なにせ、毛利さんに告白されて、フッたのは僕の方だからな。

 その後、1時限目の授業が終わり、朝、げた箱に入っていた手紙を読もうと思い、トイレの個室に入る。
 まずは、上杉先輩からの手紙の封を開ける。

『今日、部室まで来てよ』

 想定内の内容だった。
 しかし、何の用だろうか?
 月末のお城巡りで何か変更でもあったかな?
 ともかく、放課後は真帆にも呼び出されているので、用件は手短に済ませたい。

 そして、もう1つの謎のピンク色の封筒を開けた。
 中の手紙には、

『お話したいことがあるので、放課後、プール横の水泳部の部室前まで来てください。
                          赤松真琴』

 と書いてあった。

 差出人は、赤松真琴…?
 名前は、聞いたことあるな?
 誰だっけ?

 そして、水泳部の部室横か。
 冬の間はプールは使っていないから、あの辺りは人があまりいないはずだ。
 それにしても、何の用事だろう?
 バレンタインのチョコでもくれるのかな?

 僕は再び手紙をポケットに入れると教室に戻った。

 そして、日中の授業はすべて終わり放課後となった。
 歴史研の部室に呼び出されているが、まず先に、僕は指定されたプール横の水泳部の部室前に向かうことにする。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~

八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」  ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。  蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。  これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。  一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...