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チョコレート狂騒曲編
クレープ
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成田さんと別れて、徒歩でサンシャインシティに到着。
いつものようにマックの120円ドリンクを買って席に着く。
しばらく待つと、真帆がやって来た。
「お疲れ」
真帆は、そう言うと正面の席に座った。
「今日は、何?」
僕は尋ねた。
「“春日局”さんが名古屋遠征に行くよ」
「うん。昨日、LINEで来てたよ」
「移動も一緒にすることにしたから」
「そうなんだ。移動は、新幹線だよね?」
「そうだよ」
良かった。さすがに歴史研みたいに全部在来線ということは無いだろう。
それに今の時期は、JR在来線が乗り放題になる“青春18きっぷ”は、たしか無いはずだ。
僕は、昨夜思いついた疑問について尋ねる。
「ところで、名古屋遠征は誰かからのオファーがあったの?」
「ううん。他の演者のツテで紹介してもらったの。だから、今回は旅費は完全に自腹」
「そうか、大変だね」
「だから、歴史研の人たちと合同で移動出来たら純ちゃんの分は折半できるんだけど…」
「あ…、そうだね…」
前回の福島行きは、O.M.G.と歴史研で僕の旅費は半分ずつの負担としたのだった。
真帆が、歴史研と合同で行きたがっているのは、それが理由か。
真帆は話を続ける。
「それで、歴史研はどう?」
「え? 一応、伊達先輩には遠征のことはメッセージで伝えたんだけど、返事がないな」
「そっか、やっぱり無理なのかな? 残念」
僕としては歴史研のメンバーがいない方が、心が安らぐ。
「なんだったら、今回は僕は行くのはやめとく? 僕の分の旅費が節約できるし」
「いや、来て。手伝いがいたほうが物販とか助かるよ」
「わかった。まあ、僕は、構わないよ」
バイト代が出るからな。
「でも、伊達さんたちとも会いたかったなー」
真帆は、ちょっと残念そうにするが、すぐに気を取り直したように明るく言う。
「物販、頑張って売り上げないとね」
「そうだね」
「あと、今週末はアキバでライブだから、よろしくね」
「OK」
少し世間話をした後、真帆が提案してきた。
「これから、ナンジャタウン行かない?」
真帆は僕を呼び出した後は、大体どこかに行こうと誘ってくるな。
まあ、暇だからいいんだけど。
「いいよ…」
という訳で、エスカレーターを登って、ナンジャタウンへ。
ここには、昨夏に毛利さんと行って以来の訪問。
入場料1000円。
いつも真帆におごってもらっているので、今日は僕が入場料を出してあげた。
O.M.G.の手伝いでもらうバイト代も使い道があまり無くて、溜まっていく一方のなので、たまには使わないと。
ナンジャタウンの中で餃子を食べた後、ベンチに座ってクレープを食べていると、良く知った声で呼びかけられた。
「お兄ちゃん!」
妹の美咲だった。
その隣には、妹の友達の前田さん。
ここで妹に会うのは、予想外でちょっと驚いた。
「お前ら、こんなとこで何してるんだよ?」
妹は少々怒った様子で答えた。
「ナンジャタウンでやることと言えば、遊んだり、食べたりするしかないでしょ?!」
その通り。
前田さんがニヤつきながら話しかけて来た。
「お兄さん、デートですかー?」
“違うよ”と言おうとしたら、先に真帆が言った。
「そうだよ」
僕は、真帆の言葉に再び驚いた。
「ええっ!?」
「なんで、お兄ちゃんが驚くのよ?」
妹が僕を睨みながら言う。
「そんなことより、お兄ちゃん、クレープ、おごってよ」
「なんでだよ?」
「罰だよ」
「なんの罪の罰なんだよ?」
「スケコマシの罪だよ」
「誰がスケコマシだよ?」
「お兄ちゃん以外いないでしょ? いいから、おごってよ」
真帆は、僕の隣で笑いながら妹との会話を聞いている。
妹をさっさと追い払いたいので、まあクレープでも食べさせておこうと思い、仕方なくおごることにする。
妹だけにおごるのは何なので、前田さんもおごる流れになってしまった。
まあ、財布の中身が、これまでになくブルジョワなので、何とかなった。
クレープを買ってやったのに、妹はぶつぶつ言ってる。
前田さんは、礼を言ってくれた。
ほどなくして、2人は去って行った。
真帆は、それを見送ってから僕に向いて言う。
「妹におごってあげるなんて、優しいね」
「別に。早く黙らせたかったから…。真帆ってきょうだいは、いないんだっけ?」
「うん、一人っ子」
「そうか。一人っ子が羨ましいよ」
「そんなことないよ。私は優しいお兄さんが欲しかったけど」
お互い無いものねだりということだな。
“隣の芝生は青い” だっけ?
ナンジャタウンに入場して1時間半ほど経ち、夕方も遅くなってきたので解散して帰宅した。
夜は、自室でくつろぐ。
そして、ベッドに転がりながらスマホをイジっている。
DMで片倉部長に将棋部の成田さんが“北参道駅に通う者”かもしれないと伝えておいた。
いつものようにマックの120円ドリンクを買って席に着く。
しばらく待つと、真帆がやって来た。
「お疲れ」
真帆は、そう言うと正面の席に座った。
「今日は、何?」
僕は尋ねた。
「“春日局”さんが名古屋遠征に行くよ」
「うん。昨日、LINEで来てたよ」
「移動も一緒にすることにしたから」
「そうなんだ。移動は、新幹線だよね?」
「そうだよ」
良かった。さすがに歴史研みたいに全部在来線ということは無いだろう。
それに今の時期は、JR在来線が乗り放題になる“青春18きっぷ”は、たしか無いはずだ。
僕は、昨夜思いついた疑問について尋ねる。
「ところで、名古屋遠征は誰かからのオファーがあったの?」
「ううん。他の演者のツテで紹介してもらったの。だから、今回は旅費は完全に自腹」
「そうか、大変だね」
「だから、歴史研の人たちと合同で移動出来たら純ちゃんの分は折半できるんだけど…」
「あ…、そうだね…」
前回の福島行きは、O.M.G.と歴史研で僕の旅費は半分ずつの負担としたのだった。
真帆が、歴史研と合同で行きたがっているのは、それが理由か。
真帆は話を続ける。
「それで、歴史研はどう?」
「え? 一応、伊達先輩には遠征のことはメッセージで伝えたんだけど、返事がないな」
「そっか、やっぱり無理なのかな? 残念」
僕としては歴史研のメンバーがいない方が、心が安らぐ。
「なんだったら、今回は僕は行くのはやめとく? 僕の分の旅費が節約できるし」
「いや、来て。手伝いがいたほうが物販とか助かるよ」
「わかった。まあ、僕は、構わないよ」
バイト代が出るからな。
「でも、伊達さんたちとも会いたかったなー」
真帆は、ちょっと残念そうにするが、すぐに気を取り直したように明るく言う。
「物販、頑張って売り上げないとね」
「そうだね」
「あと、今週末はアキバでライブだから、よろしくね」
「OK」
少し世間話をした後、真帆が提案してきた。
「これから、ナンジャタウン行かない?」
真帆は僕を呼び出した後は、大体どこかに行こうと誘ってくるな。
まあ、暇だからいいんだけど。
「いいよ…」
という訳で、エスカレーターを登って、ナンジャタウンへ。
ここには、昨夏に毛利さんと行って以来の訪問。
入場料1000円。
いつも真帆におごってもらっているので、今日は僕が入場料を出してあげた。
O.M.G.の手伝いでもらうバイト代も使い道があまり無くて、溜まっていく一方のなので、たまには使わないと。
ナンジャタウンの中で餃子を食べた後、ベンチに座ってクレープを食べていると、良く知った声で呼びかけられた。
「お兄ちゃん!」
妹の美咲だった。
その隣には、妹の友達の前田さん。
ここで妹に会うのは、予想外でちょっと驚いた。
「お前ら、こんなとこで何してるんだよ?」
妹は少々怒った様子で答えた。
「ナンジャタウンでやることと言えば、遊んだり、食べたりするしかないでしょ?!」
その通り。
前田さんがニヤつきながら話しかけて来た。
「お兄さん、デートですかー?」
“違うよ”と言おうとしたら、先に真帆が言った。
「そうだよ」
僕は、真帆の言葉に再び驚いた。
「ええっ!?」
「なんで、お兄ちゃんが驚くのよ?」
妹が僕を睨みながら言う。
「そんなことより、お兄ちゃん、クレープ、おごってよ」
「なんでだよ?」
「罰だよ」
「なんの罪の罰なんだよ?」
「スケコマシの罪だよ」
「誰がスケコマシだよ?」
「お兄ちゃん以外いないでしょ? いいから、おごってよ」
真帆は、僕の隣で笑いながら妹との会話を聞いている。
妹をさっさと追い払いたいので、まあクレープでも食べさせておこうと思い、仕方なくおごることにする。
妹だけにおごるのは何なので、前田さんもおごる流れになってしまった。
まあ、財布の中身が、これまでになくブルジョワなので、何とかなった。
クレープを買ってやったのに、妹はぶつぶつ言ってる。
前田さんは、礼を言ってくれた。
ほどなくして、2人は去って行った。
真帆は、それを見送ってから僕に向いて言う。
「妹におごってあげるなんて、優しいね」
「別に。早く黙らせたかったから…。真帆ってきょうだいは、いないんだっけ?」
「うん、一人っ子」
「そうか。一人っ子が羨ましいよ」
「そんなことないよ。私は優しいお兄さんが欲しかったけど」
お互い無いものねだりということだな。
“隣の芝生は青い” だっけ?
ナンジャタウンに入場して1時間半ほど経ち、夕方も遅くなってきたので解散して帰宅した。
夜は、自室でくつろぐ。
そして、ベッドに転がりながらスマホをイジっている。
DMで片倉部長に将棋部の成田さんが“北参道駅に通う者”かもしれないと伝えておいた。
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