雑司ヶ谷高校 歴史研究部!!

谷島修一

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迷走する新春編

ジンバブエドル

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 月曜日の放課後。

 久しぶりに毛利さんと連れ立って、校舎の4階、端の端、理科準備室の歴史研部室にやって来た。
 最近は幽霊部員だから、ここには、ほとんど来ていない。
 別に来たくはなかったのだが、今日は怪文書に関連することについて伊達先輩に質問したいことがあったから来たのだ。

 部室の扉を開けると伊達先輩と上杉先輩が、ポテチを肴にジュースを飲みながらスマホいじりをしている。

「あら、いらっしゃい」
「来たの?」

 伊達先輩と上杉先輩は、幽霊部員と化した僕を見て少々意外そうに挨拶してきた。

 とりあえず僕も挨拶をして早速、伊達先輩に質問する。
「こんにちは、伊達先輩。突然ですが、生徒会で生徒の住所を調べることはできますか?」

「生徒会では、生徒の住所は管理してないわ。そういったものの管理は学校よ。もし調べたいなら、自分たちで聞いて回るとかするしかないわ。教えてくれない人もいるだろうけど」

「やっぱり、そうですか…」

「どうかしたの?」

「例の“怪文書”で、どうやら北参道から通っている生徒が関わっているようなんです」

「怪文書って、学園祭の時に生徒会に届いてた、あれ?」

「そうです。なので、住所を調べられればと思ったのですが…。生徒会で把握してないとするなら、一人一人聞いて回るのも大変だな…」

「じゃあ」
 伊達先輩は、ひらめいて言う。
「新聞部に頼むのはどうかしら?」

「新聞部?」

「片倉君がやっているXで、情報提供を呼び掛けてもらうのよ。彼のアカウントを見てる生徒は多いだろうし。思っている情報は見つからないかもしれないけど、やらないよりはいいんじゃない?」

「なるほど! そうですね」
 その手があったか。
「じゃあ、早速、片倉先輩に頼んでみます。ありがとうございます」

 僕は礼を言って歴史研の部室を後に、新聞部の部室に向かった。
 そして、部室の扉をノックして開けた。
 中では数名の部員がパソコンに向かって編集作業をしている様子。

 奥から、新聞部部長の片倉先輩が話しかけて来た。
「やあ。武田君じゃないか? 君のほうから来るなんて珍しいね」

「え、ええ…。ちょっとお願いしたいことがあって…」

「まあ、座って」
 片倉先輩は、彼の座っている隣にパイプ椅子を出してきて、そこを指さして言った。
「なんだい? また、合コンのお誘いかい?」

「いえ、違います。実は、これなんですが…」
 僕はポケットの中から怪文書を取り出して、片倉先輩に見せた。

「これは?」

「生徒会に届いた怪文書です」

 片倉先輩を怪文書を受け取ると、じっくり読んでから口を開いた。

「これがどうかしたの?」

「この“F(人生、宇宙、すべての答え/3)”の部分が、“北参道”のことだと思うんです。それで、北参道から通っている生徒を調べたくて。でも、住所は学校管理で簡単には教えてくれないだろうし…。なので、新聞部のXで情報提供を呼び掛けてもらえないかと思いまして」

「ああ…、なるほどね…」
 片倉先輩は少し考えてから答えた。
「協力してもいいけど、何か見返りがないと」

「見返り…」
 そう言われても、何もないな。
 また合コンのセッティングでもするか…?

 片倉先輩は質問する。
「武田君は、どうして怪文書の謎解きをしているの?」

「ええと…、この報酬目当てです」

「“報酬は1.57M”…、これ?」

「ええ、157万だと思うんです」

「157万円?」

「はい」

「いや、157万ジンバブエドルかもしれないよ」

「ジンバブエドル?」
 聞いたことのない通貨だ。

「イグ・ノーベル賞の賞金で使われる通貨。それだと、ほとんど価値はないね」

「そうですか…」

「まあ、日本円かもしれないし。この文書だと単位が明確でないので、わからないけど…。じゃあ、この報酬の半分を新聞部に提供してくれるというなら手伝おう」

「半分…。わかりました、良いですよ」
 157万円としたら、78万5千円。それでも手に残るなら十分だ。
 ジンバブエドルだったら、笑い話になって、それはそれでいいだろう。

「よし。交渉成立だね」
 片倉先輩は膝を打った。
「早速、流すよ。この、怪文書の写真も一緒に流して良いかな?」

「構いません」

「この差出人の“P”の情報も入るかもしれないね」

 片倉先輩は怪文書の写真をスマホで撮影して、それと一緒に早速Xにポストした。
 僕もスマホで内容を確認する。

『【情報求ム】
 ・写真の怪文書の差出人【P】
 ・F(人生、宇宙、すべての答え/3)に通う者=【北参道から通う者】
 上記の情報を探してます。
 心当たりある物は新聞部片倉まで!!』

 これで、謎解きの解明が少しでも進めばいいな。
 僕は片倉先輩に礼を言って、新聞部を後にした。
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