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逡巡する初冬編

雪乃と自室で…

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 水曜日の放課後。

 今日、雪乃は演劇部が無く、代わりに数学を教えてほしいということで、また僕の家にやって来た。
 家には誰もおらず、2人っきりになる。
 以前にも、2人っきりの時は何度かあったので、さほど気に掛けなかった。
 僕らは僕の部屋に入ると、早速、いつもの様にローテーブルに勉強道具を広げる。

「どこがわからないの?」
 僕は尋ねた。

「この問題」
 雪乃は教科書のある問題を指さした。

「これだけ?」

「そう」

 良かった、前みたいに『全部』って言われたらどうしようかと思った。
 まあ、それでも、教えるけど。
 1問だけなら解説込みで30分も掛からないだろう。

 早速、勉強開始。
 僕は解説して、そして雪乃は簡単に問題を解いて終了した。
 思ったよりすぐ終わった。

 勉強道具を鞄にしまうと雪乃は尋ねた。
「ねえ、そう言えば、YouTubeにアップした“白雪姫”見た?」

「まだ、見てないや」
 忘れてた。というより、見たくなかったのだが。

「じゃあ、一緒に見よ」
 雪乃が提案する。

 スマホで見るよりPCで見た方が良いと考えて、僕のノートPCをローテーブルに置き、僕と雪乃は仲良く横に並んで、ベッドを背もたれにするように座り、“白雪姫”を鑑賞する。
 YouTubeのページで、“雑司が谷高校 白雪姫”で検索。
 該当の映像がヒットする。そして、その再生ボタンを押す。

 タイトルがちゃんと作ってあった。
「なんか、ちゃんとしてるね。サムネも作ってあったし」

「でしょ? 映研に頼んだから、結構ちゃんとした作りになってるよ」

 続けて見る。
 カメラを2つで撮影したようで、人物のアップになったり、場面よって切り替えたりちょっとしたショートムービーのように出来上がっていた。

 そして、あまり見たくない最後の白雪姫と王子様キスシーン。
 この時は、雪乃が仕組んで事前の打ち合わせなしに本当にキスしてしまったのだが、キスの後、僕が驚きで呆然としているのもしっかり映っていた。
 僕は思わず苦笑する。
 そして、映像はエンディングへ。

 映像を観終わってすぐに、雪乃が僕のほうを向いた。
「ねえ。王子様」

「え? えーと。何? 白雪姫」
 雪乃の寸劇に調子を合わせる。

「キスしよ」

「え?」
 ちょっと驚いたが、恋人(仮)同士だし良いか。

「うん」
 僕は雪乃に唇を重ねた。

 ?!

 僕は驚いて唇を離した。

「どうしたの?」
 雪乃が不思議そうに僕を見る。

「いや…、舌が」
 そうなのだ、雪乃の舌が僕の口の中に入ってきたので驚いたのだ。

「え? ディープキスしたことないの?」

「あ、あ、あるわけないだろ。そもそも、僕は雪乃としかキスしたことないんだ」

「え? え? ということは、白雪姫の時のがファーストキス?!」
 雪乃はとても驚いている様子。

「そうだよ」

「へー、そうなんだー。へー、純也の初めて奪っちゃったんだ」
 なんか雪乃、嬉しそうなんだけど。なんで?

「じゃあ、続き」
 そう言って雪乃は再びキスをしてきた。
 今度は舌が入って来ても驚かない。
 僕らは舌を絡める。そして、お互いにギュッと身体を抱き寄せた。

 次の瞬間、雪乃は僕の上に馬乗りになった。そして、彼女は着ていた制服のブレザーを脱ぎ捨てる。
 再び熱いキス。

 雪乃は自分のシャツのボタンを2つ外す。
 シャツの間からブラ(淡い紫色)が覗く。
 そして、僕のシャツのボタンにも手を掛けた。

「ちょ、ちょ、ちょ、待って」
 雪乃、どこまでやる気だ?
 一応、(仮)なんだから適度に抑えないと、という理性が僕にはまだ働いている。

「待・た・な・い」
 そう言って、雪乃は不敵な笑みを浮かべる。
 そして、僕のシャツのボタンを手際よく全部外してしまった。

「純也の硬くなってる」

「そ、それは…、仕方ないだろ」
 雪乃は自分の下腹部を、僕の硬くなったモノに押し付けるように体を寄せた。
 2人とも、興奮でどんどん息が荒くなってきている。

 雪乃は僕のズボンのベルトに手を掛けた。
 これ以上されると理性が、もう持たん…と思った時。

 コンコン。

 僕の部屋の扉をノックする音が。
 妹か? 帰って来ていたのに気がつかなかった。

 雪乃は慌てて僕から離れた。
 僕も急いでシャツのボタンを留めなおす。
 雪乃もシャツのボタンを留めたのを確認して、扉の向こうに声を掛けた。
「どうぞ!」

 扉を開けて入ってきたのは、妹の美咲。
「お兄ちゃん、飲み物出してないでしょ?」
 そう言って、お盆にジュースの入ったコップを2つ乗せ、部屋に入ってきた。そして、それをローテーブルに置いた。

「悪いな」
 一応、僕は礼を言う。
 僕の顔は紅潮していただろう。そして、まだ少し息が荒い。
 隣に座っている雪乃はうつむいたまま、肩を震わせている。
 え? 笑ってる?

「なんで、誰か来てるのわかったんだ?」
 僕は妹に尋ねた。

 妹はキョトンとして答えた。
「だって、靴があったから」

 そう言われれば、そうだな。

 コップを置いた妹は、脱ぎ捨てられた雪乃のブレザーと僕らの様子を交互に見て言った。
「ひょっとして、お取込み中だった?」

「そうだよ! お取込み中だよ! もう、行きな!」

「はいは~い。じゃあ、ごゆっくり~」
 妹がニヤつきながら、部屋を出て行った。

 妹が扉を閉めると、雪乃は声を上げて笑い出した。
「あはははは」

 なんで、笑ってるんだろう?

 雪乃は笑いをこらえながら言う。
「妹さん、きっと、扉の外で聞いてたよ」

「えっ?!」

「だって、私たち結構、声出してたじゃん? 『硬くなってるぅ』とか」

 雪乃よ、再現しなくてよい。
 しかし、確かにその可能性がある。

「だったら、入ってくるの遠慮すればいいのに…」
 いや、妹が入って来たから雪乃の暴走が止まったのか。
 助かった、と言うべきか…。
 それとも、余計なことを、と言うべきなのか…。
 
「妹さん、邪魔したかったんじゃない?」

「何で邪魔を…?」

「嫉妬してるんだよ、きっと」

「嫉妬?!」

「そうそう。『お兄ちゃんが、他の女に取られちゃう~』って」

「そんなバカな」

「後で聞いてみたら?」

 そんなことがあるんだろうか?

「でも、妹さんに聞かれてたって思うと、ちょっとゾクゾクするよね」

「えっ?!」
 僕はしないぞ。
 雪乃の性癖、大丈夫か?
 そのうち、妹が居ても構わずヤってしまいそうだな…。

 僕らは妹の持って来たジュースを飲む。
 おかげで、少し落ち着いてきた。

 その後は、妙な盛り上がりは無く、無事(?)織田さんは帰路についた。

 その後、僕はベッドに横たわって考える。
 あのまま、妹が入って来なかったら、最後までヤってしまったんだろうか?
 僕は雪乃に対して、まだ、恋愛感情がさほどないのだが…。

 そう言えば、ゴム持ってなかった。
 まさか、先月までは彼女(仮)が出来るなんて思ってもみなかったからな。
 雪乃、関係が進むペースが速い。そして、自分の理性に自信もない。
 ともかく、万が一の時のために、ゴム、買っておかなきゃ…。
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