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眩暈する秋涼編
立派な魔法使い
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週が明けて月曜日。
いつものように学校に登校する。
席に座って、1限目の準備をしていると、イケメン幼馴染の足利悠斗が近づいて話しかけてきた。
「純也、おはよう」
「やあ、おはよう」
僕は顔を上げて挨拶をする。
「なあ、純也、噂になってるよ」
「噂? 何の?」
「ほら、彼女だよ」
と言って悠斗は、教室の前のほうでおしゃべりをしている陽キャ女子たちのほうを向いた。
「ん?」
何のことかわからない。
「織田さんだよ」
よく見ると、陽キャ女子たちの中に織田さんが居た。
「織田さん?」
「そうだよ。純也と織田さんが付き合っているっていう噂だよ」
「えっ?!」
「だって、先週、毎日腕組んで帰ってたみたいじゃない。それに純也の家に入るところを見た人も居るという話も聞いたけど」
そうか。早くもそんな噂が立っているのか。
「まあ、僕の自宅で試験勉強してたからね。でも、付き合ってはいないよ」
「試験勉強って2人きりで? 家には誰かいたの?」
「誰もいないよ。うちの両親が共働きなのは知ってるだろ」
「そうだったね。それで、何もなかったのかい?」
「何で、“何か”があるんだよ」
「だって、あの彼女だよ」
そう言って、もう一度、織田さんのほうを向いた。
「男大好きな彼女が、純也と2人きりで何もないとは考えられないよ。純也、犯されたりしなかった?」
「犯されるって…、そんなことは無いよ」
「そうか…。でも、ともかく噂は広まっているからね。火消しが大変じゃないかな。ちょっと心配だよ」
「そうか、ちょっと迂闊だったかな…?」
「それより、こっちのほうは、どうなの?」
悠斗は、目で合図するように隣の席の毛利さんを見た。
「何も無いよ」
「例の“あれ”を目撃した事の確認はしたのかい?」
“あれ”とは、僕が書庫で毛利さんと伊達先輩がキスをしていたのを目撃した件だ。それが、僕の見間違いかどうか、毛利さんか伊達先輩本人に確認するということなのだが…。
「そんなこと、できないよ」
「こっちも、早く決着を付けた方が良いんじゃない?」
2人は隠しているが、毛利さんと伊達先輩は付き合っているのは間違いないと、僕は思っている。
しかし、雑司が谷高校や東池女子校での学園祭のお化け屋敷で、毛利さんは僕に手を繋いできたり、抱き着いてきたりした。
正直、毛利さんがどういうつもりなのか分からなくて、戸惑っている。
単にお化け屋敷が怖かったのかもしれないが、普段、そういうことを簡単にしそうにない人だから、余計にこちらも勘違いしそうになることもある。
しかし、その都度、書庫での伊達先輩とのことを思い出してこちらは冷静になっているという状態だ。
書庫での出来事が無ければ、僕は今頃、毛利さんと付き合っていたかもしれないのだが、今は僕の彼女への気持ちはかなり冷めている。
「でも、純也がまだドーテーで安心したよ」
悠斗が笑いながら言った。
「なんで、安心するんだよ」
「立派な魔法使いになれ」
「それは断る」
「じゃ」
悠斗は立ち去った。
やれやれ。
また妙な噂が広まっているのか。
僕は、織田さんには恋愛感情は全くない。
しかし、付き合っているという噂が広まっても、特に悪いことは無いか…?
織田さんは、あれでもクラス・カーストのトップだからな。彼女は敵も多いみたいだけど。
僕もカースト上位の仲間と思われれば、なにかと学校生活も楽になるかもしれない。
というわけで、噂については、しばらくは様子見することにした。
そうこうしていると、チャイムが鳴りホームルームが始まった。
ホームルームでは、織田さんから学園祭でやった舞台“白雪姫”を撮影した動画の編集作業が終わり、YouTubeにアップされたと報告があり、そのURLも伝えられた。
僕はあまり興味が無いので、たぶん見ることは無いだろう。
そして、その日は織田さんと話をすることなく、1日が過ぎた。
いつものように学校に登校する。
席に座って、1限目の準備をしていると、イケメン幼馴染の足利悠斗が近づいて話しかけてきた。
「純也、おはよう」
「やあ、おはよう」
僕は顔を上げて挨拶をする。
「なあ、純也、噂になってるよ」
「噂? 何の?」
「ほら、彼女だよ」
と言って悠斗は、教室の前のほうでおしゃべりをしている陽キャ女子たちのほうを向いた。
「ん?」
何のことかわからない。
「織田さんだよ」
よく見ると、陽キャ女子たちの中に織田さんが居た。
「織田さん?」
「そうだよ。純也と織田さんが付き合っているっていう噂だよ」
「えっ?!」
「だって、先週、毎日腕組んで帰ってたみたいじゃない。それに純也の家に入るところを見た人も居るという話も聞いたけど」
そうか。早くもそんな噂が立っているのか。
「まあ、僕の自宅で試験勉強してたからね。でも、付き合ってはいないよ」
「試験勉強って2人きりで? 家には誰かいたの?」
「誰もいないよ。うちの両親が共働きなのは知ってるだろ」
「そうだったね。それで、何もなかったのかい?」
「何で、“何か”があるんだよ」
「だって、あの彼女だよ」
そう言って、もう一度、織田さんのほうを向いた。
「男大好きな彼女が、純也と2人きりで何もないとは考えられないよ。純也、犯されたりしなかった?」
「犯されるって…、そんなことは無いよ」
「そうか…。でも、ともかく噂は広まっているからね。火消しが大変じゃないかな。ちょっと心配だよ」
「そうか、ちょっと迂闊だったかな…?」
「それより、こっちのほうは、どうなの?」
悠斗は、目で合図するように隣の席の毛利さんを見た。
「何も無いよ」
「例の“あれ”を目撃した事の確認はしたのかい?」
“あれ”とは、僕が書庫で毛利さんと伊達先輩がキスをしていたのを目撃した件だ。それが、僕の見間違いかどうか、毛利さんか伊達先輩本人に確認するということなのだが…。
「そんなこと、できないよ」
「こっちも、早く決着を付けた方が良いんじゃない?」
2人は隠しているが、毛利さんと伊達先輩は付き合っているのは間違いないと、僕は思っている。
しかし、雑司が谷高校や東池女子校での学園祭のお化け屋敷で、毛利さんは僕に手を繋いできたり、抱き着いてきたりした。
正直、毛利さんがどういうつもりなのか分からなくて、戸惑っている。
単にお化け屋敷が怖かったのかもしれないが、普段、そういうことを簡単にしそうにない人だから、余計にこちらも勘違いしそうになることもある。
しかし、その都度、書庫での伊達先輩とのことを思い出してこちらは冷静になっているという状態だ。
書庫での出来事が無ければ、僕は今頃、毛利さんと付き合っていたかもしれないのだが、今は僕の彼女への気持ちはかなり冷めている。
「でも、純也がまだドーテーで安心したよ」
悠斗が笑いながら言った。
「なんで、安心するんだよ」
「立派な魔法使いになれ」
「それは断る」
「じゃ」
悠斗は立ち去った。
やれやれ。
また妙な噂が広まっているのか。
僕は、織田さんには恋愛感情は全くない。
しかし、付き合っているという噂が広まっても、特に悪いことは無いか…?
織田さんは、あれでもクラス・カーストのトップだからな。彼女は敵も多いみたいだけど。
僕もカースト上位の仲間と思われれば、なにかと学校生活も楽になるかもしれない。
というわけで、噂については、しばらくは様子見することにした。
そうこうしていると、チャイムが鳴りホームルームが始まった。
ホームルームでは、織田さんから学園祭でやった舞台“白雪姫”を撮影した動画の編集作業が終わり、YouTubeにアップされたと報告があり、そのURLも伝えられた。
僕はあまり興味が無いので、たぶん見ることは無いだろう。
そして、その日は織田さんと話をすることなく、1日が過ぎた。
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