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眩暈する秋涼編

東池学園祭~その2

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 生徒会室の用事も終わったので、僕は毛利さんにLINEでそれを伝える。
 すぐに返事が来た。彼女は美術部の作品を見ているところ、ということなので、伊達先輩、松前先輩とは一旦別れ、僕は毛利さんのところへ向かうことにした。

 学園祭パンフレットを確認し、美術部は校舎3階の教室を使って絵などの作品をいくつも展示しているという。
 目的の教室に向かい、中に入る。そして、作品を見学する。

 教室の真ん中あたりに、針金で作られた何か良くわからない作品が机の上に展示してある。
 絵も良くわからない抽象画が多くて、理解不能だ。
 教室の中は空いていたので、毛利さんはすぐに見つけることができた。

「やあ」
 僕は声を掛けた。

 毛利さんは振り向いた。
「早かったのね」

「ああ、宇喜多会長もいろいろ忙しいみたいだから、早めに切り上げたよ」
 そう言って僕は毛利さんの前に展示されている絵を見た。
 やっぱり、良くわからない絵だった。

「毛利さん、絵に興味あるの?」

「うん、少し」

 僕も毛利さんに付き合って、残りの作品を見た後、教室を後にした。
「次、どこ行く?」
 僕は尋ねた。

「武田君は、行きたいところ無いの?」

「そうだなあ…」
 宇喜多会長に会うのが第1の目的で、それは早くも達成してしまったから何もない。
「そう言えば、茶道部が中庭で、の、の…、何だったかな?」

「茶道部……? じゃあ、野点《のだて》の事かな?」

「ああ、それそれ。ノダテ、それに行ってみたい」

 それにしてもノダテってなんだろう? あとでスマホでググってみるか。

「毛利さんは、行きたいところない?」

 毛利さんはパンフレットをパラパラとめくってみる。

「文芸部と、お化け屋敷かな」

 お化け屋敷?!
 雑司が谷高校の学園祭でも付き合わされたな。毛利さんはホラーが好きなのか?
 僕は苦手なので、できれば行きたくないのだが。
 ここは、他の出展を回って時間が足りなくなって、結局、行けなかったという風に何とか持っていきたい

「ちょっと、どこを回るか作戦会議しよう。まずは、適当にお茶でも飲めるところに入らない?」
 僕は提案した。

「うん」
 毛利さんは静かに頷いた。

 美術部の2つ隣の教室で、コーラス部がカフェをやっているので、そこに入る。
 そこでは、1時間に1度、部員が何曲か歌ってくれるという。
 今は、通常のカフェ営業なので、僕と毛利さんは部員に案内されて席に着く。
 そして、アイスコーヒーを注文する。

 ぼくらは、パンフレットをペラペラとめくって、どんな出展があるのか確認してみた。しかし、あまり興味を引くものがない。
 漫研があるようなので、そこで何か買っていくか、などと考えている。
 しかし、無理にでもどこか回らないと、お化け屋敷に付き合わされてしまう。
 長く時間がつぶせそうなのは、どこだろう…。
 無いな。困った。

 さらにパンフレットをめくる。
 少し後の時間に、体育館で演劇部が舞台『ロミオとジュリエット』をやっているみたいだ。
 今後、織田さんとも話す機会があるだろうから、話題のネタとして見に行っておくか。
 時間も、少し潰せるし。

 毛利さんは、他にもいくつか見たいところがあるそうなので、それも付き合うことにした。
 お化け屋敷を回避することは可能だろうか…?

 僕らはコーラス部の歌を聞いてから、次の出展へ向かう。

 教室を出る前に、茶道部の“ノダテ”をスマホでググってみた。
 “野点”とは『屋外で茶または抹茶をいれて楽しむ茶会のこと』だそうだ。

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