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眩暈する秋涼編

織田さんは、押しが強い

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 新聞部の取材が終わり、僕と織田さんは新聞部部室を後にする。
 僕は今日はもう歴史研の部室には寄らずに、さっさと帰宅しようと考えていたところ、織田さんが話かけてきた。
「これから池袋に行って、お茶でもしない?」

 彼女の突然の提案に驚いた。
「え? まあ、いいけど」
 今日は予定もないし。まあ、僕は大抵予定は無いのだが。

 僕と織田さんは連れ立って地下鉄で雑司が谷駅から1駅の池袋までやって来た。
 そして、駅近のマックに入り、100円ジュースをすすりながら話をする。
 少し世間話をした後は、織田さんと話す話題が無くて、手持ち無沙汰でジュースを飲んでもいないのにストローをしばらくの間、くわえていた。しばらく沈黙。
 織田さんはスマホいじり。

「ねえ」
 織田さんが、スマホを置いて再び話し出した。
「歴史研の部長さんって生徒会長もやってるよね」

「うん。やってるね」

「そうかあ…」

「それが、どうかした?」

「私も来年、生徒会長に立候補しようと思ってるのよ」

「ああ…。そうなんだ」
 目立ちたがり屋の織田さんなら、さほど驚く事ではない。予想できたことだった。

「それで、武田君には副会長をやってもらえないかなぁ」

「ええっ?!」
 これは予想してなかった。驚いて店内で少々大声になってしまった。
「いや、それは…」

「ちょっと考えておいて」

 いや、考えても、やらない。
「以前、伊達先輩にも副会長をやらないかと誘われたんだけど、断ったんだよ」

「どうして断ったの?」

「生徒会に興味ないから」

「でも、応援演説はやったよね?」

「まあ、それぐらいは同じ部活のよしみでいいかなと思って。勉強も教えてもらってるし」

「私の時も応援演説、やってもらえないかな?」

 やっぱり、そう言う話になるか。
「それは…、ちょっと考えさせて」
 まあ、やらないけどな。

 織田さんは話を続ける
「それと、まず、現生徒会長とお近づきになりたくて」

「なんで?」

「会長は結構な得票で当選したでしょ? その会長の後継ということにしてもらえば、それなりの票が集まると思ったのよ」

「まあ、そうかもね」
 会長の得票のうち、男子からの得票の多くは僕に対しての面白半分の投票だったようだ、ということは言わないでおこう。

「だから、会長を紹介してくれないかな?」

「いいんだけど…。それより、生徒会の役員にでもなったらどう? 生徒会は人手不足のようだから、歓迎されると思うけど。それに後継として指名されたいのであれば、役員でもやって恩を売っとけばいいと思う」

「なるほど、それもありね。私、演劇部もあるし調整はしないといけないけど」

「その点は融通利くんじゃない? 伊達先輩は生徒会長やりながら歴史研の部長もやっているし。だから、掛け持ちもできると思う。多分」

「じゃあ、決まりね。明日、会長を紹介してよ」

「明日?!」

「早い方が良いでしょ?」

「まあ、そうだね…」
 急だ。そして、行動力と決断力がすごいな。
「ちょっと待って、伊達先輩の明日の予定をLINEで聞いてみるよ」

 僕はスマホを取り出してLINEで伊達先輩にメッセージを送る。
 そして、返事はすぐに帰って来た。
 明日、歴史研の部室で待っていると言う。僕はそれを織田さんに伝えた。

「じゃあ、明日、よろしくね」
 織田さんは答えた。

「え? 僕も行くの?」

「一緒に行ってよ、一人だと心細いじゃない」

 嘘つけ。
 でも…、まあ、いいか。暇だし。
「わかったよ、一緒に行こう」

「おお! ありがとう!」
 織田さんはそう言って僕の肩を叩いた。

「それにしても、もう来年の生徒会長選挙のことを考えるとか、気が早いね」

「早いうちから動いた方が、より有利になるでしょ?」

 確かにそうだ。
 そう言えば、彼女は学園祭のクラスの出し物を“白雪姫”にするために、早い時期から裏工作をしていたらしいのを思い出した。

 僕はジュースを啜りながら、織田さんの事をちょっと考えてみる。
 彼女は伊達先輩に似ているところがあるな。ちょっと強引で、裏工作が好き。自分の目的を達成するためには手段を選ばないところ、とか。
 しかし、そう言うタイプが生徒会長やりたがるのかなあ、などと考える。
 2人の違いと言えば、織田さんは、陽キャで、伊達先輩はやや陰キャ寄り、という点かな。

 その後、僕は織田さんに知っている範囲で、現在の生徒会の内情を少し話をしてから解散し帰宅した。
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