上 下
135 / 362
眩暈する秋涼編

学校新聞

しおりを挟む
 翌朝、たまたま早めに目が覚めたので、ちょっと早めに登校する。
 登校してくる生徒はまだ少なめだ。

 げた箱から廊下に入ってすぐにある掲示板に学校新聞が張ってあるのに気がついた。
 それを見て、先日、歴史研の部室で学校新聞の話題が出たのを思い出した。
 そう言えば、月も替わったので新しい物が掲載されているはずだ。僕は少し見てみることにした。

 掲示板に近づいて新聞の内容を読んでみる。
 まずは、体育系部活の活動の成果が誇らしげに、大きく載っていた。

『ラグビー部、地区予選で連戦連勝』
『水泳部、男子400mメドレーリレーで準優勝』
『卓球部、1年A組・明智優衣、女子シングルスでベスト8』

 新聞の、下段の方には連載の部活の紹介記事。
 今回は、将棋部とコーラス部のことが書いてあった。
 片倉先輩が歴史研の取材をしたいというのは、ここの記事として掲載するためだろう。

 そして、学校行事について少し書いてあるのと、最後に小さく占いコーナーがあった。それをよく見ると占い研の松前先輩が提供した占星術が掲載されていた。

 しかし、思ったより真面目な記事ばかりだ。部長の片倉先輩の普段の言動を見ていると、もっとふざけた感じなのかと思ったが。
 まあ、学校の新聞だから先生の検閲もあるだろうし、こんな感じにまとまるのかな。

 しばらく新聞を読んでいると、僕の名前を呼ぶ声がした。

「おお! 武田君! おはよう!」

 この声は織田さんだ。いつも通りテンションは若干高め。
 僕は振り返って挨拶した。
「お、おはよう」

 織田さんは、僕の横に並ぶと学校新聞を覗き込んで言った。
「学校新聞、読んでるの?」

「うん」

「そう言えば、聞いた? 私たちの取材がしたいって」

「うん、聞いたよ。あの“白雪姫”の件だよね?」

「やっぱり、インパクトあったみたいね」

「いや、演技とは言え、あんな大勢の前でキスするとか、ありえないだろ」

「そう? 私は、ちょっとゾクゾクしたけど」

「えー?」
 織田さん、そういう性癖の人なの?

「まあ、これで、私たちは学校内でも有名人ね…。ああ、武田君はもともと有名人か」
 何故か織田さんは満足そうに言う。

 僕は、別に有名になりたくてなったわけじゃあない。それに、あれもこれも、どちらかと言えば悪目立ちなので、困っているというのが本音だが。

 そこへ、片倉部長がやって来た。
「おや、ご両人! ちょうどよかったよ」
 片倉部長は、いつもの様にちょっと小太りで良く日焼けしていた。

「「おはようございます」」
 僕と織田さんは挨拶をする。

「君たちを取材したいと思っているんだけど、いつが都合いいかな?」

「いつでもいいです」
 織田さんが即答した。

「僕もいつでも大丈夫です」
 面倒くさいが、さっさと終わらせたい。

「じゃあ、今日の放課後は?」

「「わかりました」」

「お手数だけど、新聞の部室まで来てくれないかな?」

「「了解です」」

「じゃあ、よろしく」
 片倉部長は、そう言うと嬉しそうに立ち去った。
 僕と織田さんも教室へ向かう。
しおりを挟む

処理中です...