94 / 444
混沌の学園祭編
“木”
しおりを挟む 学園祭のクラスの出し物で、“白雪姫”の配役、裏方の各担当もなんとか決まり、
ホームルームの時間は、ちょうど終わりとなった。
すぐ後の休憩時間になると、毛利さんが話しかけてきた。
「ねえ、私に票入れたの、武田君でしょ?」
「そうだよ」
「私に主役なんて無理だよ」
「あはは。まあ、選ばれることはないだろうと思って、面白半分で名前書いたよ」
「意地悪」
そう言って、毛利さんはプイと横を向いた。でも、まんざらではなさそうだった。
でも、僕に決められた“木”の役って一体、何? さすがに気になったので、織田さんにどういうものか聞くことにした。彼女とは全く話したことはなかったが、何とか勇気を振り絞る。
そして、僕は立ち上がり、織田さんの席に歩み寄って声を掛けた。
「織田さん」
僕は、何やら本を読んでいる織田さんに声を掛けた。読んでいるのは台本のようだ。
織田さんは顔を上げて笑顔で答える。
「おお、武田君。何?」
「“木”の役のことなんだけれど、あれどういうの?」
「ああ、あれね。舞台の上で立ってるだけでいいから」
「セリフも無いと聞いたけど?」
「無いよ」
「その役、必要ある?」
「必要よ! 木の幹に穴をあけて、そこから顔を出してもらうから」
「はあ?!」
「学校一の有名人の“エロマンガ伯爵”が、木から顔出しってのはバカ受け間違いなしだわ」
「えええ?! 舞台ってそんな笑いを取る感じで良いいの?」
「いいの、いいの。武田君のおかげで舞台前に話題になれば観客も増えるでしょ? 観客も最初は武田君を目当てで見に来ても、私の演技で魅了してみせるわ」
すごい自信だな。さすが自分から目立ちたくてクラスの出し物を演劇にしようと、根回しまでやったことはある。
「台本を渡しておくわ。明後日から、台本の読み合わせをするんだけど、参加してね」
「え? 自分、セリフ無いよね」
「一応、舞台の流れを知っておいてほしいから」
そう言うと、机の中から別の新しい台本を取り出して僕に手渡した。
僕はそれを受け取るが、セリフも無いので台本に目を通す気は全く無いけど。
読み合わせは、しょうがないなあ。まあ、暇だし、セリフも覚える必要も無くて、立ち会うだけならちょっと付き合うか。
「わかった、明後日の放課後ね」
そう言って僕は自分の席に戻った。
すると、隣から毛利さんが再び話しかけてきた
「それ、台本?」
「うん。なんか、読み合わせにも出てくれと言われたよ」
「ちょっと見せて」
僕は台本を手渡した。
「ふーん」
毛利さんは台本をペラペラとめくって目を通した。
「どう?」
台本を読む気のない僕は、毛利さんが代わりに読んでくれたので尋ねた。
「ディズニー映画の通りみたいね」
「ああ、そう」
ということなら、ギャグにアレンジしているとかは無いようだ。知らんけど。
“木”の役だから、どうアレンジされてようが、さほど関係ないだろう。
毛利さんは台本を僕に返した。
しかし、“学校一の有名人”とは、不名誉なあだ名はまだ広まったままか…。
ホームルームの時間は、ちょうど終わりとなった。
すぐ後の休憩時間になると、毛利さんが話しかけてきた。
「ねえ、私に票入れたの、武田君でしょ?」
「そうだよ」
「私に主役なんて無理だよ」
「あはは。まあ、選ばれることはないだろうと思って、面白半分で名前書いたよ」
「意地悪」
そう言って、毛利さんはプイと横を向いた。でも、まんざらではなさそうだった。
でも、僕に決められた“木”の役って一体、何? さすがに気になったので、織田さんにどういうものか聞くことにした。彼女とは全く話したことはなかったが、何とか勇気を振り絞る。
そして、僕は立ち上がり、織田さんの席に歩み寄って声を掛けた。
「織田さん」
僕は、何やら本を読んでいる織田さんに声を掛けた。読んでいるのは台本のようだ。
織田さんは顔を上げて笑顔で答える。
「おお、武田君。何?」
「“木”の役のことなんだけれど、あれどういうの?」
「ああ、あれね。舞台の上で立ってるだけでいいから」
「セリフも無いと聞いたけど?」
「無いよ」
「その役、必要ある?」
「必要よ! 木の幹に穴をあけて、そこから顔を出してもらうから」
「はあ?!」
「学校一の有名人の“エロマンガ伯爵”が、木から顔出しってのはバカ受け間違いなしだわ」
「えええ?! 舞台ってそんな笑いを取る感じで良いいの?」
「いいの、いいの。武田君のおかげで舞台前に話題になれば観客も増えるでしょ? 観客も最初は武田君を目当てで見に来ても、私の演技で魅了してみせるわ」
すごい自信だな。さすが自分から目立ちたくてクラスの出し物を演劇にしようと、根回しまでやったことはある。
「台本を渡しておくわ。明後日から、台本の読み合わせをするんだけど、参加してね」
「え? 自分、セリフ無いよね」
「一応、舞台の流れを知っておいてほしいから」
そう言うと、机の中から別の新しい台本を取り出して僕に手渡した。
僕はそれを受け取るが、セリフも無いので台本に目を通す気は全く無いけど。
読み合わせは、しょうがないなあ。まあ、暇だし、セリフも覚える必要も無くて、立ち会うだけならちょっと付き合うか。
「わかった、明後日の放課後ね」
そう言って僕は自分の席に戻った。
すると、隣から毛利さんが再び話しかけてきた
「それ、台本?」
「うん。なんか、読み合わせにも出てくれと言われたよ」
「ちょっと見せて」
僕は台本を手渡した。
「ふーん」
毛利さんは台本をペラペラとめくって目を通した。
「どう?」
台本を読む気のない僕は、毛利さんが代わりに読んでくれたので尋ねた。
「ディズニー映画の通りみたいね」
「ああ、そう」
ということなら、ギャグにアレンジしているとかは無いようだ。知らんけど。
“木”の役だから、どうアレンジされてようが、さほど関係ないだろう。
毛利さんは台本を僕に返した。
しかし、“学校一の有名人”とは、不名誉なあだ名はまだ広まったままか…。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~
八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」
ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。
蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。
これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。
一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

冴えない俺と美少女な彼女たちとの関係、複雑につき――― ~助けた小学生の姉たちはどうやらシスコンで、いつの間にかハーレム形成してました~
メディカルト
恋愛
「え……あの小学生のお姉さん……たち?」
俺、九十九恋は特筆して何か言えることもない普通の男子高校生だ。
学校からの帰り道、俺はスーパーの近くで泣く小学生の女の子を見つける。
その女の子は転んでしまったのか、怪我していた様子だったのですぐに応急処置を施したが、実は学校で有名な初風姉妹の末っ子とは知らずに―――。
少女への親切心がきっかけで始まる、コメディ系ハーレムストーリー。
……どうやら彼は鈍感なようです。
――――――――――――――――――――――――――――――
【作者より】
九十九恋の『恋』が、恋愛の『恋』と間違える可能性があるので、彼のことを指すときは『レン』と表記しています。
また、R15は保険です。
毎朝20時投稿!
【3月14日 更新再開 詳細は近況ボードで】

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる