47 / 433
波乱の夏休み編
歴史研の秘密~その1
しおりを挟む
夏休み3日目。
昨日の午後、LINEで、本日午前10時に部室に来るように伊達先輩から指令が下っていた。
そういう訳で暑い中、登校して来た。
まあ、自分は家が近いから、まだ良いけど、他の皆はご苦労様だ。
集合時間よりちょっと早かったので、一番乗りだと思ったら、校舎の入り口で毛利さんに出会った。
「おはよう、早いのね」
「おはよう。暑さで早くに目が覚めたからね」
僕らは連れ立って歴史研の部室に向かう。
4階まで登るのは暑い。廊下や階段にも冷房を入れてくれないものだろうか?
そして、僕は勢い良く部室の扉を開けた。
すると、歴史研の部室に見慣れない男女の生徒が二人座っていた。
誰だ?
僕は思わず、扉の上に掲げてある教室の名前を確認した。
『理科準備室』
間違いない。歴史研究部の部室だ。
目の前の女子生徒の制服リボンの色が青。ということは3年生か。
ちなみに、2年生はリボンの色が赤、1年生は黄色だ。それで学年の違いがわかるのだ。
僕と毛利さんは部室に入り、恐る恐る挨拶をする。
「「おはようございます」」
歴史研の部室には似つかわしくない、爽やかな雰囲気を醸し出したちょっとイケメン風の男子生徒は、僕の方へ振り返り挨拶を返した。
「やあ、武田君」
僕の事を知っている?
ああ、そうか、エロマンガと生徒会長選挙での応援演説の件で、全校生徒が僕の名前を知っているのは当然のこととなっていた。
「えーと…、どちら様ですか?」
「3年の大友です。僕らも歴史研の部員なんだよ」
女子生徒の方も自己紹介をする。
「私は3年の南部といいます」
南部先輩は、ショートカットでボーイッシュな感じだ。
背も高くて、“スター・トレック”の登場人物ターシャ・ヤーを彷彿とさせる。なんか強そう。
とりあえず、改めて挨拶をしておこう。
「はじめまして、よろしくお願いします。3年生の部員が居るとは知りませんでした」
「うちの学校は、大抵、3年は受験勉強のため部活動は引退するんだよ。僕らは、一応、籍は残してあるけどね」
「そうなんですね」
まあ、わが校では大抵3年生は部を引退することは知ってたけど、歴史研に3年生が居たとは知らなかった。
などと話していると、伊達先輩、上杉先輩がほぼ同時にやって来て挨拶をした。
「「おはようございます」」
「おはよう。来たね」
大友先輩が挨拶する。そして、各自、椅子に座ったのを確認すると、話を切り出した。
「今日、みんなに来てもらったのは、OBたちにお礼状を書くためだよ」
「恒例ですね」
伊達先輩が答える。
「恒例?」
僕が尋ねると、すかさず伊達先輩が話を続けた。
「歴代部員のOBの方々が、100名城めぐりのために活動費を寄付してくれるのよ」
「ほほう」
「特に夏の時期は、たくさん回るし、お金がかかるだろうということで、OBからの寄付が多い時期なのよ。さらにボーナスも出た時期でもあるから」
なるほど、それでお城巡りをする潤沢な金があるという訳か。歴史研の活動費の謎がわかった。
そんな話をしていると、島津先生までやって来た。
「おはよう。ちょっと遅れたわ。ごめんなさい」
「おはようございます。いえ、時間ちょうどですよ」
大友先輩は答える。
僕らも先生に挨拶をした。
皆、椅子に座って話を続ける。
島津先生は、寄付が届くという、歴史研に代々伝わる貯金通帳を見せてくれた。
ここ数日で、1件数千円から3万程度までの振り込みが20件ばかり記帳してあった。
合計10数万円。
「武田君や毛利さんも将来、社会人になって稼ぐようになったら、1000円でもいいから後輩たちの為に寄付してあげてね」
伊達先輩はそう言う。
なるほど、これは良い仕組みだなあ。
歴史研は部員が多くないが、これまでも1学年に2、3人いたとして、10年でOB、OGは20~30人になるからな。彼ら、彼女らが数千円ずつでも資金提供してくれれば、それだけで合計数万円にはなる。
他の部もやればいいのに。
通帳の管理は島津先生が、お金はお城巡りの時など必要に応じて部長である伊達先輩に渡しているという。
「それで、今日は寄付してくれたOBたちに、お礼状を書くのだよ」
大友先輩が、はがきを数十枚取り出した。
「みんなで手分けすれば、1人あたり数枚書けばいいだけから、すぐ終わるよ」
という訳で、大友先輩はお礼状の例文を書いた紙を取り出して机の上に広げた。
大友先輩、用意周到だな。
僕らは例文を参考に、お礼状を書き上げ、宛名も間違いないように書き込んで、30分ばかりで終了となった。
「じゃあ、私が出しておくわ。他の仕事もあるから、これで」
島津先生は、はがきを取りまとめて立ち上がり、部室を去って行った。
残された僕ら6人は、大友、南部先輩が1、2年生の頃の話などで盛り上がった。
それにしても、伊達、上杉両先輩の後輩っぽいところを見るのも新鮮だな。
上杉先輩が、今日はおとなしいのが、ちょっとおかしかった。
1時間ばかり話をし、最後に来週のお城巡りの待ち合わせ時間の確認をする。
話し合いも一段落したら、大友先輩の提案でお昼ご飯を食べに池袋のファミレスあたりまで行こうということになった。
昨日の午後、LINEで、本日午前10時に部室に来るように伊達先輩から指令が下っていた。
そういう訳で暑い中、登校して来た。
まあ、自分は家が近いから、まだ良いけど、他の皆はご苦労様だ。
集合時間よりちょっと早かったので、一番乗りだと思ったら、校舎の入り口で毛利さんに出会った。
「おはよう、早いのね」
「おはよう。暑さで早くに目が覚めたからね」
僕らは連れ立って歴史研の部室に向かう。
4階まで登るのは暑い。廊下や階段にも冷房を入れてくれないものだろうか?
そして、僕は勢い良く部室の扉を開けた。
すると、歴史研の部室に見慣れない男女の生徒が二人座っていた。
誰だ?
僕は思わず、扉の上に掲げてある教室の名前を確認した。
『理科準備室』
間違いない。歴史研究部の部室だ。
目の前の女子生徒の制服リボンの色が青。ということは3年生か。
ちなみに、2年生はリボンの色が赤、1年生は黄色だ。それで学年の違いがわかるのだ。
僕と毛利さんは部室に入り、恐る恐る挨拶をする。
「「おはようございます」」
歴史研の部室には似つかわしくない、爽やかな雰囲気を醸し出したちょっとイケメン風の男子生徒は、僕の方へ振り返り挨拶を返した。
「やあ、武田君」
僕の事を知っている?
ああ、そうか、エロマンガと生徒会長選挙での応援演説の件で、全校生徒が僕の名前を知っているのは当然のこととなっていた。
「えーと…、どちら様ですか?」
「3年の大友です。僕らも歴史研の部員なんだよ」
女子生徒の方も自己紹介をする。
「私は3年の南部といいます」
南部先輩は、ショートカットでボーイッシュな感じだ。
背も高くて、“スター・トレック”の登場人物ターシャ・ヤーを彷彿とさせる。なんか強そう。
とりあえず、改めて挨拶をしておこう。
「はじめまして、よろしくお願いします。3年生の部員が居るとは知りませんでした」
「うちの学校は、大抵、3年は受験勉強のため部活動は引退するんだよ。僕らは、一応、籍は残してあるけどね」
「そうなんですね」
まあ、わが校では大抵3年生は部を引退することは知ってたけど、歴史研に3年生が居たとは知らなかった。
などと話していると、伊達先輩、上杉先輩がほぼ同時にやって来て挨拶をした。
「「おはようございます」」
「おはよう。来たね」
大友先輩が挨拶する。そして、各自、椅子に座ったのを確認すると、話を切り出した。
「今日、みんなに来てもらったのは、OBたちにお礼状を書くためだよ」
「恒例ですね」
伊達先輩が答える。
「恒例?」
僕が尋ねると、すかさず伊達先輩が話を続けた。
「歴代部員のOBの方々が、100名城めぐりのために活動費を寄付してくれるのよ」
「ほほう」
「特に夏の時期は、たくさん回るし、お金がかかるだろうということで、OBからの寄付が多い時期なのよ。さらにボーナスも出た時期でもあるから」
なるほど、それでお城巡りをする潤沢な金があるという訳か。歴史研の活動費の謎がわかった。
そんな話をしていると、島津先生までやって来た。
「おはよう。ちょっと遅れたわ。ごめんなさい」
「おはようございます。いえ、時間ちょうどですよ」
大友先輩は答える。
僕らも先生に挨拶をした。
皆、椅子に座って話を続ける。
島津先生は、寄付が届くという、歴史研に代々伝わる貯金通帳を見せてくれた。
ここ数日で、1件数千円から3万程度までの振り込みが20件ばかり記帳してあった。
合計10数万円。
「武田君や毛利さんも将来、社会人になって稼ぐようになったら、1000円でもいいから後輩たちの為に寄付してあげてね」
伊達先輩はそう言う。
なるほど、これは良い仕組みだなあ。
歴史研は部員が多くないが、これまでも1学年に2、3人いたとして、10年でOB、OGは20~30人になるからな。彼ら、彼女らが数千円ずつでも資金提供してくれれば、それだけで合計数万円にはなる。
他の部もやればいいのに。
通帳の管理は島津先生が、お金はお城巡りの時など必要に応じて部長である伊達先輩に渡しているという。
「それで、今日は寄付してくれたOBたちに、お礼状を書くのだよ」
大友先輩が、はがきを数十枚取り出した。
「みんなで手分けすれば、1人あたり数枚書けばいいだけから、すぐ終わるよ」
という訳で、大友先輩はお礼状の例文を書いた紙を取り出して机の上に広げた。
大友先輩、用意周到だな。
僕らは例文を参考に、お礼状を書き上げ、宛名も間違いないように書き込んで、30分ばかりで終了となった。
「じゃあ、私が出しておくわ。他の仕事もあるから、これで」
島津先生は、はがきを取りまとめて立ち上がり、部室を去って行った。
残された僕ら6人は、大友、南部先輩が1、2年生の頃の話などで盛り上がった。
それにしても、伊達、上杉両先輩の後輩っぽいところを見るのも新鮮だな。
上杉先輩が、今日はおとなしいのが、ちょっとおかしかった。
1時間ばかり話をし、最後に来週のお城巡りの待ち合わせ時間の確認をする。
話し合いも一段落したら、大友先輩の提案でお昼ご飯を食べに池袋のファミレスあたりまで行こうということになった。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/light_novel.png?id=7e51c3283133586a6f12)
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
如月さんは なびかない。~クラスで一番の美少女に、何故か告白された件~
八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」
ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。
蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。
これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。
一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)
チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。
主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。
ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。
しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。
その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。
「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」
これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる