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生徒会長選挙編
可愛ければ狡猾でも好きになってくれますか?
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伊達先輩と豊洲の映画館で映画を見終わった。
もともと見たかったSF映画で、期待通りの面白さで満足だった。
なんたって、伊達先輩のおごりだし。
そして、喫茶店でお茶でもしようということで、映画館と同じ建物にあるカフェでも入ろうということになった。
そのカフェは海の見える洒落たカフェだった。
伊達先輩はケーキと紅茶、僕もケーキとジュースを注文する。
僕らはケーキを食べながら映画の感想とか世間話をして過ごした。
夢中で話をしていると、もう夕方となっていた。
「ちょっと、公園を散歩しない?」
伊達先輩が提案してきた。
「いいですよ」
僕はそう答えると、二人で映画館の建物前、海の見える公園を少し散策する。伊達先輩は岸壁の柵に腕をついて海の方を向いた。僕もそれに合わせて海を見つめた。
しばらく海を眺めていると、伊達先輩が話しかけて来た。
「武田君は将来の進路とか考えているの?」
「いえ、まだはっきりとは」
「そう。2年になったら、理系文系のクラス分けがあるけど、1年の2学期には担任から希望を聞かれると思うわよ」
「興味のあることとか、あまりないので、どうしようかな…」
「まあ、夏休み中に考えればいいわ」
夏休み中に簡単に決められるだろうか?
「伊達先輩は進学するんですよね?」
「ええ」
「やはり東大…、とか?」
伊達先輩の両親は東大卒、お姉さんは東大在学中だそうだ。
「私は東大には興味ないわ。前に言わなかった?」
そうだったような気がする。
「じゃあ、狙っている大学はあるんですか?」
「面影橋大学ね」
面影橋大学と言えば、私立のトップクラスだ。さすが頭の良い人は狙う大学も違う。
伊達先輩は続ける。
「ただ、学費は自分で出さないといけないのよ。1年浪人して、その間バイトで稼いで入学金を貯めようかなって思っているわ」
「先輩の家って、お金持ちですよね?」
伊達先輩は金持ちが多く住んでいる地域に住んでいるので、おそらく彼女の家も金持ちなはずだ、学費ぐらい楽勝で出そうだが。どういう事だろう?
そう言って伊達先輩はうつむいて言う。
「まあ、ちょっと家庭の事情でね」
そうなのか。
家庭の事情という事なら、これ以上深く追求しない方が良いと思って、
「大変そうですが、頑張って下さい」
そう言って、僕はこの話を打ち切った。
学費を自分で稼ぐとか、伊達先輩はやっぱりすごい。僕にはできそうにない。
しかし、自分も進路ぐらいはどうするか、ちゃんと考えた方が良いのかもしれない。
うーん、と唸って、目を閉じて少し考える。
しばらくそうしていると、突然、頬に柔らかく温かい感触がした。
僕は驚いて、目を開けて伊達先輩の方を向いた。伊達先輩が僕を見つめていた。
「え、え…、今…?」
頬にキスされた…、よな?
「生徒会長選挙で嫌な気分にさせたお詫びよ」
そして、伊達先輩は後ろを振り返って言った。
「そろそろ帰りましょうか」
「あ…、はい」
僕は頬とはいえキスされたことに、困惑していた。
一体、伊達先輩はどういうつもりなのか? 本当にお詫びという理由だけ? お詫びでキスするか?
帰りの地下鉄の中では、僕は悶々とした時間を過ごした。
地下鉄は護国寺駅に到着、伊達先輩とは改札で別れの挨拶をした。
僕は自宅に戻り、自室のベッドに体を投げ出す。
そして、伊達先輩はどういうつもりだったのか、しばらく考える。
いや、キスぐらいで動揺してはいけない。
伊達先輩は狡猾だ、僕の事を籠絡してまた利用しようという事なのかもしれない。
きっとそうだ。彼女相手に油断は禁物だ。
危うく騙されるところだった。
僕は深いため息をついた。
もともと見たかったSF映画で、期待通りの面白さで満足だった。
なんたって、伊達先輩のおごりだし。
そして、喫茶店でお茶でもしようということで、映画館と同じ建物にあるカフェでも入ろうということになった。
そのカフェは海の見える洒落たカフェだった。
伊達先輩はケーキと紅茶、僕もケーキとジュースを注文する。
僕らはケーキを食べながら映画の感想とか世間話をして過ごした。
夢中で話をしていると、もう夕方となっていた。
「ちょっと、公園を散歩しない?」
伊達先輩が提案してきた。
「いいですよ」
僕はそう答えると、二人で映画館の建物前、海の見える公園を少し散策する。伊達先輩は岸壁の柵に腕をついて海の方を向いた。僕もそれに合わせて海を見つめた。
しばらく海を眺めていると、伊達先輩が話しかけて来た。
「武田君は将来の進路とか考えているの?」
「いえ、まだはっきりとは」
「そう。2年になったら、理系文系のクラス分けがあるけど、1年の2学期には担任から希望を聞かれると思うわよ」
「興味のあることとか、あまりないので、どうしようかな…」
「まあ、夏休み中に考えればいいわ」
夏休み中に簡単に決められるだろうか?
「伊達先輩は進学するんですよね?」
「ええ」
「やはり東大…、とか?」
伊達先輩の両親は東大卒、お姉さんは東大在学中だそうだ。
「私は東大には興味ないわ。前に言わなかった?」
そうだったような気がする。
「じゃあ、狙っている大学はあるんですか?」
「面影橋大学ね」
面影橋大学と言えば、私立のトップクラスだ。さすが頭の良い人は狙う大学も違う。
伊達先輩は続ける。
「ただ、学費は自分で出さないといけないのよ。1年浪人して、その間バイトで稼いで入学金を貯めようかなって思っているわ」
「先輩の家って、お金持ちですよね?」
伊達先輩は金持ちが多く住んでいる地域に住んでいるので、おそらく彼女の家も金持ちなはずだ、学費ぐらい楽勝で出そうだが。どういう事だろう?
そう言って伊達先輩はうつむいて言う。
「まあ、ちょっと家庭の事情でね」
そうなのか。
家庭の事情という事なら、これ以上深く追求しない方が良いと思って、
「大変そうですが、頑張って下さい」
そう言って、僕はこの話を打ち切った。
学費を自分で稼ぐとか、伊達先輩はやっぱりすごい。僕にはできそうにない。
しかし、自分も進路ぐらいはどうするか、ちゃんと考えた方が良いのかもしれない。
うーん、と唸って、目を閉じて少し考える。
しばらくそうしていると、突然、頬に柔らかく温かい感触がした。
僕は驚いて、目を開けて伊達先輩の方を向いた。伊達先輩が僕を見つめていた。
「え、え…、今…?」
頬にキスされた…、よな?
「生徒会長選挙で嫌な気分にさせたお詫びよ」
そして、伊達先輩は後ろを振り返って言った。
「そろそろ帰りましょうか」
「あ…、はい」
僕は頬とはいえキスされたことに、困惑していた。
一体、伊達先輩はどういうつもりなのか? 本当にお詫びという理由だけ? お詫びでキスするか?
帰りの地下鉄の中では、僕は悶々とした時間を過ごした。
地下鉄は護国寺駅に到着、伊達先輩とは改札で別れの挨拶をした。
僕は自宅に戻り、自室のベッドに体を投げ出す。
そして、伊達先輩はどういうつもりだったのか、しばらく考える。
いや、キスぐらいで動揺してはいけない。
伊達先輩は狡猾だ、僕の事を籠絡してまた利用しようという事なのかもしれない。
きっとそうだ。彼女相手に油断は禁物だ。
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僕は深いため息をついた。
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