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生徒会長選挙編
キミの妹がこんなに普通なはずがない
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あっという間に週末。
ついに今日の午後、伊達先輩と上杉先輩が自宅にやってくるのだ。
あまり気が乗らないが、出迎えのため地下鉄雑司ヶ谷駅の地上出口で待ち合わせする約束をしていた。
「おはよう」
声の方を向くと伊達先輩が居た。
今日は、白いブラウスに花柄の入った茶色いスカートで、先週の旅の時と違ってガーリーなコーデだ。今日の方が元々の伊達先輩の印象通りで良いな。
「おはようございます。地下鉄じゃあなかったんですね」
「歩いてきたわ」
そうか、そういえば伊達先輩は、この近くにある雑司ヶ谷高校までも徒歩で来ていたはずだ。25分~30分ぐらい時間がかかるはずだが。
数分後、地下鉄の出口から上杉先輩がやって来た。
「おはよう!」
上杉先輩は今日もテンション高めだ。その彼女の今日のコーデは、先週と同様にTシャツにデニムパンツというスタイル。Tシャツに何やら電子回路みたいな図がプリントされていたが、面倒なのでそれが何かは聞くのを止めておく。
早速、僕が先導して自宅へ向かう。
徒歩5分。到着。
「こちらです」
先輩二人は、一軒家の我が家を見上げた
「良い家ね」
伊達先輩が社交辞令を言う。伊達先輩の住んでいるあたりから察すると、彼女の家の方が、もっと良い家のはずだけど。
「ありがとうございます」
取り敢えず礼を言っておこう。
玄関を開けると、妹が奥のリビングからバタバタと足音を立てて出てきた。
僕の妹、武田美咲。
肩ぐらいまで伸ばした髪を二つ結びにしているところが、中学生らしさを強調していた。
妹は、先輩二人を見ると元気良くあいさつした。
「いらっしゃいませ!」
「「お邪魔します」」
先輩二人も、にこやかに返事をする。
妹はそれを聞くと、再びバタバタとリビングの方へ向かって走って行った。
「おかあさん! お兄ちゃんが女の人連れてきたよ! しかも2人!」
そんな大声で報告しなくてもいいだろう。思わず苦笑する。
「すいません。あんな感じで」
「元気で良いわね」
伊達先輩がフォローを入れてくれる。
僕と先輩2人は靴を脱いで、僕の部屋がある2階に上がる。
僕の部屋を見た先輩2人。ちょっと頑張って掃除したんだけど、どうだろう?
「殺風景ね」
「男子の部屋って感じ」
「まあ、自分の部屋だと思って、くつろいで下さい」
その言葉を待っていたように、上杉先輩は僕のベッドに飛び込んだ。
上杉先輩、『自分の部屋だと思って』は、社交辞令です。
上杉先輩はうつぶせになり、枕に顔を埋めて一言。
「武田君の匂いがする」
「ちょっと、ちょっと!」
何をやり出すんだ、この人は。
「あはは、冗談、冗談」
僕は座布団を取り出し、テーブルの周りに並べた。
伊達先輩は、そこに座ると、紙袋を取り出して言った。
「つまらないものだけど、私達から手土産の菓子折り」
「ありがとうございます」
そのやり取りが終わるのを待って、上杉先輩がベッドに片肘を付きながら言った。
「妹、呼んできてよ」
今日は、勉強会を笠に着た、妹のお披露目会。
「…、わかりました」
菓子折りを母親に渡すついでにリビングに降りて、妹を呼び出した。
妹は僕の部屋にやってきて、先輩二人に改めて挨拶する。
「こんにちは」
「妹の美咲です」
家族を紹介するのはちょっと、気恥ずかしい。
「可愛いわね」
伊達先輩がお世辞を言う。
「何年生?」
「中二です」
「血ィ、繋がってんの?」
おいおい、何を聞くんだ、上杉先輩。
「実の兄妹ですよ」
妹は笑いながら答えた。
続いて伊達先輩が畳みかける
「高校は、雑司ヶ谷高校にしなさいよ。そして、部活は歴史研究部に入ってね」
もし二年後、妹が雑司ヶ谷高校に入学しても、先輩二人はとっくに卒業してしまっているじゃあないか。
しかし、まだ純真な妹は、突っ込むことはしなかった。
「はい! 家から近いから、雑司ヶ谷高校にしようと思っています!」
「これで、歴史研究部も安泰だねぇ」
上杉先輩が手を打って喜んだ。
しかし、妹は歴史研究部に入るとは、一言も言ってないけど。
今日は、心の中で先輩二人に突っ込んでいるが、それでもなんか疲れる…。
妹は、先輩二人と世間話をしばらくしてから立ち去った。
「じゃあ、勉強しましょうか?」
「あ、はい」
今日教えてほしい科目の教科書を取り出す。
上杉先輩はベッドに寝そべったまま、スマホをいじっている。やはり勉強はしないか。まあ、こちらの邪魔をしなければいいんだけど。
しばらくして、母親がお茶菓子を持ってやって来た。
そして、先輩二人と会話したが、予想に反して普通の会話だった。
その後、三時間ばかり勉強をして、今日のところはここまでとした。
「ありがとうございました。伊達先輩、教え方、うまいですよね」
「そうかしら」
「期末テストも自信が出てきました」
しばらく伊達先輩と世間話をしていた。
上杉先輩は、おとなしいと思ったら、僕のベッドの上でいつの間にか寝ていた。本当に自由な人だ。
そろそろ、お暇しようということで、伊達先輩は上杉先輩を起こす。
地下鉄の駅の入り口まで二人を見送る。
「じゃあ、学校で!」
上杉先輩は眠っていたので、気力、体力が温存されている。今日最初に会った時の元気さで別れの挨拶をしてきた。
「さようなら」
伊達先輩はいつもの様に上品に頭を下げた。
僕も別れの頭を下げて挨拶をした。
「ではまた、学校で」
自宅に戻り、勉強と先輩達への脳内ツッコミの疲れもあったので、今度は僕がベッドに飛び込んだ。うつぶせになって枕に顔を埋める。
上杉先輩の匂いがする…。
ついに今日の午後、伊達先輩と上杉先輩が自宅にやってくるのだ。
あまり気が乗らないが、出迎えのため地下鉄雑司ヶ谷駅の地上出口で待ち合わせする約束をしていた。
「おはよう」
声の方を向くと伊達先輩が居た。
今日は、白いブラウスに花柄の入った茶色いスカートで、先週の旅の時と違ってガーリーなコーデだ。今日の方が元々の伊達先輩の印象通りで良いな。
「おはようございます。地下鉄じゃあなかったんですね」
「歩いてきたわ」
そうか、そういえば伊達先輩は、この近くにある雑司ヶ谷高校までも徒歩で来ていたはずだ。25分~30分ぐらい時間がかかるはずだが。
数分後、地下鉄の出口から上杉先輩がやって来た。
「おはよう!」
上杉先輩は今日もテンション高めだ。その彼女の今日のコーデは、先週と同様にTシャツにデニムパンツというスタイル。Tシャツに何やら電子回路みたいな図がプリントされていたが、面倒なのでそれが何かは聞くのを止めておく。
早速、僕が先導して自宅へ向かう。
徒歩5分。到着。
「こちらです」
先輩二人は、一軒家の我が家を見上げた
「良い家ね」
伊達先輩が社交辞令を言う。伊達先輩の住んでいるあたりから察すると、彼女の家の方が、もっと良い家のはずだけど。
「ありがとうございます」
取り敢えず礼を言っておこう。
玄関を開けると、妹が奥のリビングからバタバタと足音を立てて出てきた。
僕の妹、武田美咲。
肩ぐらいまで伸ばした髪を二つ結びにしているところが、中学生らしさを強調していた。
妹は、先輩二人を見ると元気良くあいさつした。
「いらっしゃいませ!」
「「お邪魔します」」
先輩二人も、にこやかに返事をする。
妹はそれを聞くと、再びバタバタとリビングの方へ向かって走って行った。
「おかあさん! お兄ちゃんが女の人連れてきたよ! しかも2人!」
そんな大声で報告しなくてもいいだろう。思わず苦笑する。
「すいません。あんな感じで」
「元気で良いわね」
伊達先輩がフォローを入れてくれる。
僕と先輩2人は靴を脱いで、僕の部屋がある2階に上がる。
僕の部屋を見た先輩2人。ちょっと頑張って掃除したんだけど、どうだろう?
「殺風景ね」
「男子の部屋って感じ」
「まあ、自分の部屋だと思って、くつろいで下さい」
その言葉を待っていたように、上杉先輩は僕のベッドに飛び込んだ。
上杉先輩、『自分の部屋だと思って』は、社交辞令です。
上杉先輩はうつぶせになり、枕に顔を埋めて一言。
「武田君の匂いがする」
「ちょっと、ちょっと!」
何をやり出すんだ、この人は。
「あはは、冗談、冗談」
僕は座布団を取り出し、テーブルの周りに並べた。
伊達先輩は、そこに座ると、紙袋を取り出して言った。
「つまらないものだけど、私達から手土産の菓子折り」
「ありがとうございます」
そのやり取りが終わるのを待って、上杉先輩がベッドに片肘を付きながら言った。
「妹、呼んできてよ」
今日は、勉強会を笠に着た、妹のお披露目会。
「…、わかりました」
菓子折りを母親に渡すついでにリビングに降りて、妹を呼び出した。
妹は僕の部屋にやってきて、先輩二人に改めて挨拶する。
「こんにちは」
「妹の美咲です」
家族を紹介するのはちょっと、気恥ずかしい。
「可愛いわね」
伊達先輩がお世辞を言う。
「何年生?」
「中二です」
「血ィ、繋がってんの?」
おいおい、何を聞くんだ、上杉先輩。
「実の兄妹ですよ」
妹は笑いながら答えた。
続いて伊達先輩が畳みかける
「高校は、雑司ヶ谷高校にしなさいよ。そして、部活は歴史研究部に入ってね」
もし二年後、妹が雑司ヶ谷高校に入学しても、先輩二人はとっくに卒業してしまっているじゃあないか。
しかし、まだ純真な妹は、突っ込むことはしなかった。
「はい! 家から近いから、雑司ヶ谷高校にしようと思っています!」
「これで、歴史研究部も安泰だねぇ」
上杉先輩が手を打って喜んだ。
しかし、妹は歴史研究部に入るとは、一言も言ってないけど。
今日は、心の中で先輩二人に突っ込んでいるが、それでもなんか疲れる…。
妹は、先輩二人と世間話をしばらくしてから立ち去った。
「じゃあ、勉強しましょうか?」
「あ、はい」
今日教えてほしい科目の教科書を取り出す。
上杉先輩はベッドに寝そべったまま、スマホをいじっている。やはり勉強はしないか。まあ、こちらの邪魔をしなければいいんだけど。
しばらくして、母親がお茶菓子を持ってやって来た。
そして、先輩二人と会話したが、予想に反して普通の会話だった。
その後、三時間ばかり勉強をして、今日のところはここまでとした。
「ありがとうございました。伊達先輩、教え方、うまいですよね」
「そうかしら」
「期末テストも自信が出てきました」
しばらく伊達先輩と世間話をしていた。
上杉先輩は、おとなしいと思ったら、僕のベッドの上でいつの間にか寝ていた。本当に自由な人だ。
そろそろ、お暇しようということで、伊達先輩は上杉先輩を起こす。
地下鉄の駅の入り口まで二人を見送る。
「じゃあ、学校で!」
上杉先輩は眠っていたので、気力、体力が温存されている。今日最初に会った時の元気さで別れの挨拶をしてきた。
「さようなら」
伊達先輩はいつもの様に上品に頭を下げた。
僕も別れの頭を下げて挨拶をした。
「ではまた、学校で」
自宅に戻り、勉強と先輩達への脳内ツッコミの疲れもあったので、今度は僕がベッドに飛び込んだ。うつぶせになって枕に顔を埋める。
上杉先輩の匂いがする…。
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